林齢による水害の正と負
九州大学から出た論文。毎年のように発生する水害だが、降雨量と森林の成熟度(林齢)による関係が研究された。
森林の成熟によって土砂災害は変化する 気候変動下における効果的な土砂災害対策,森林資源の管理手法の開発に期待
先に結論から言えば
土砂災害を引き起こした降雨および発生流木量を比較しました。その結果,成熟した森林は若い森林と比較して,より規模の大きい豪雨に対して防災機能を発揮できることを明らかにしました。しかし,成熟した森林では,若い森林と比較して土砂災害時の流木量が大きくなることが明らかになりました。
林齢が高まれば、土砂流出・表層崩壊を防ぎやすくなるが、崩れたときには流木量が増える。林齢が若い森だと崩れやすいが流木はそんなに出ない。想定どおりで当たり前といえば当たり前のようにも感じるが、それを証明したことに価値があるのだろう。
防災という点からは、なるべく崩れないことを望み、大木の多い森、つまり林齢の高い森を残す方がよい。しかし、いつかは崩れるという前提なら、さっさと伐った方が川下の安全のためになる。 さて、どちらを選ぶ?
いや、そもそも成熟した木と若い木が混ざっていればいいんじゃない、という解答も有り得る。樹種が違えば高さも変わるし。複層林とか混交林も防災のための森林になり得る。ただ、逆の可能性も感じる。
成熟した森には大木が多いはずで、その重量は増す。平地の場合は、それが地面を安定させるかもしれないが、山の斜面に生えていると、重量のベクトルが谷方向になり崩壊圧力になるのでなかろうか。大木は風が当たりモーメントも増すはずだ。これは影響あるのか、無視できるほどなのか。
それと林齢という基準は人工林だけだ。雑木林も皆伐した後に再生途上の若い森と、成熟し天然林へ向かう森とでは、木の高さ・太さが変わるだろうが、樹種によるバラツキも出る。
水害には、矛盾というか、一見条件が同じでも、微妙な差によって正反対の結果が出ることが多くて難しい。
これは作業道上部の窪地が崩れたところだが、流木というか倒伏木が多いねえ。
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