会計検査院の暴く獣害防護柵の効果
アーバン・ベアという言葉が使われるようになった。野生のクマが都市部に出てくる状況を示している。こうなるよ、私は拙著『獣害列島』で述べている。たかだか3年前だが、予言の書になった。
クマだけでなく、多くの野生動物が人間社会に越境している。実は、本日も幹線道路を走っていてシカと出くわした。奈良公園ではないよ。五条市大塔町だけど。
再造林地には、主にシカによる食害を防ぐため、国の補助を受けて造林地に整備された防護柵が築かれる。そのうち623カ所を会計検査院が調査したそうだ。すると3分の1に当たる213カ所で破損などにしており、シカが入り込める状態だった。つまり効果がなかった。
これって凄くない? シカ防護柵の3分の1は役立たずだったのだ。
調査したのは、2017~21年度に19道県で整備された623カ所・計約400キロもの防護柵。国の補助金約3億8500万円が使われたそうだが、その結果、17道県の213カ所・計約140キロが破れていた。それはシカが網を破ったほかに、倒木などによる破損もあるそうだが、いずれにしろシカが入り込める。そして116カ所は食害に遇って一部の木は枯死していたしていそうだ。
そしてあぶり出されたのは、防護柵の点検と補修をほとんどしていなかったことだ。点検を行っていたのは、68事業主体のうち一つだけ。ほかは、まったく点検をしないでいたか、下刈りを刈るなどの定期作業にやる程度だった。
こんな防護柵の効果を、会計検査院が調べてくれるとは。ちゃんと費用対効果を考えて、次の補助金に活かしてほしいが、多分、無駄だろうな。同じように同じ柵が作られていく。
ちなみに柵が破れていなかった自治体はどこか。それが福井と奈良だったのである。いやあ、びっくり(笑)。写真も奈良の造林地。なぜ破られていないのか? 偶然?それとも必然?
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事業費はシカ柵の設置までですから、維持管理は所有者の責任でしょう。そんな真面目な所有者は皆無なので、維持管理点検事業として別に組むべきですね。
投稿: 両 | 2023/10/31 17:51
横からすみません。一応何年か前から造林補助金の中で付帯施設等整備の施設改良ということで補修が可能になりました(一回限りのようですが)。特に多いのが皆伐したがために隣の森林からの倒木です。何度も発生するし結構頻繁なので追いつかないんですよね…樹高の高さは緩衝帯を取って植えないとか、その区間だけは単木ネットにするとか回避する方法もあると思うのですが、補助金の計算が面倒になるし、植えなければその分の補助金貰えないので誰もそんなことはしないのですが…
投稿: 0 | 2023/10/31 19:04
県によって違うようですが、補修にも補助金が出る時代になったんですね。。。
倒木は意外なほど多いですね。それが柵を壊すことも折り込まないと、役に立ちません。
やはり単木のツリーシェルターの方が確実のように思います。
投稿: 田中淳夫 | 2023/11/02 21:09