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森と林業の本

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2023/10/29

「世界の森林破壊は止まらない」報告

ロイターの配信記事によると、

世界の森林破壊阻止、30年までの目標達成に大きな遅れ=報告書 

COP26では世界140カ国余りが、2030年までに森林破壊・荒廃を止め、反転させると宣言した。

しかし今回公表された「森林宣言評価報告書」によると、昨年は世界で約6万6000平方キロメートルの森林が破壊され、破壊は前年比で4%増えた。2030年の目標達成に向けた進展が21%遅れているという。 

若干わかりにくいのだが、森林破壊の面積は増えている。どんな森林が何の目的で破壊されているのかわからない。破壊された森林は、その後どう使われたのか、今どんな状態なのかもわからない。一応推定すると、伐採ではなく破壊という言葉であり、破壊されているのは天然林なのだろう。

近頃思うのは、林業はくまなく世界の森林を破壊しているのではないか、ということ。東南アジアや中国、シベリア、中南米、アフリカは言うに及ばずこれまで厳密な管理が行われているとされてきた欧米でも、過剰伐採に盗伐など違法伐採が耐えていないことがわかってきた。

まず北欧のフィンランドやスウェーデン。ポーランドにルーマニア、ブルガリア、そしてウクライナ。林業先進地とされるドイツでさえ、盗伐はなくなっていないし、合法的に見えても過剰な伐採量であるという指摘もある。

そしてアメリカやカナダ。こちらも調べていると恐るべき森林破壊が進行中だ。そもそも国の統計がデタラメだったり辻褄合わせ的な統計もある。それによる伐採計画は、ほとんど不可能な内容なので「神がかりの林業」と揶揄されている。皆伐地は「仮の牧草地」であり、自然豊かなんだそうだ。保護区の面積も水増し。森林認証制度も偽造がまかり通っている。

そして日本も、そろそろボロが見えてきた。

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林業で採算を合わせようとすれば、一定期間内に収穫量を増やさないと製材工場や合板工場、製紙やバイオマス発電所などの設備の稼働率が落ちて赤字になる。しかし遠距離からの輸送はコスト高で割に合わない。結果的に過伐する。おかげで地元の森林は減少し、いよいよ設備が動かず稼働率が落ちるから、より大きな設備にして低コスト化しようとするが、それはより多くの原材料を必要とする……。

論理的に現代林業は持続的ではないのでは……。もちろんコストと利益のバランスを計算して「神がかり的」に黒字を可能だとしても、結局人の欲望はそれで収まらないから伐りすぎてしまう。常に拡大をめざす性があるので、バランスを崩すように動く。

ようは林業は、常に森林破壊を伴い、限界が来たら林業を打ち止め、再生を待つ間は徹底した禁伐にする。その繰り返しではないか。いや、それだってできるだろうか。人類にそんな叡知はあるか。

私にいわせれば、上記の写真も森林破壊なのだが、これはれっきとした林業なんだろうなあ。

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森林学・モノローグ」カテゴリの記事

コメント

写真すごいですね。コラ画像に見えます。

日本でも古代からの森林利用の形態は常にそれでしたね > 「林業は、常に森林破壊を伴い、限界が来たら林業を打ち止め、再生を待つ間は徹底した禁伐にする。その繰り返しではないか」 。奈良・平安時代の”古代の略奪”、戦国~江戸の近世の略奪”と森を使い潰しては緊急的な保全と植林。明治初期には江戸時代の保護政策のお陰で回復しかけた森林はまた荒れ、そして戦時中にまた破壊。いまは拡大造林の名残と林業停滞してたお陰で、おそらくここ200年で一番森が豊かな時代。さて、この先どうなるのでしょうね

私は、森林生態をほとんど乱さない林業のあり方はあると思っています。むしろ豊かにする施業法も。

ただ、人はそれを実行しない。めんどくさいし、あまり儲からないし。結果的に伐りすぎて破壊し、焦って保護するけど、回復してきたらまた伐りすぎる。
その繰り返しを今もやっています。今は林野庁の破壊期。

恒続林(考え方)、林分施行法、照査法など生態系に考慮した林業も過去にすでに登場しているんですけどね。たしかに面倒くさいし効率は良くない。私は皆伐再造林を全否定する気はないですが、いまのままでは破壊期が終わった後にどうなっているか…いまの全国的な皆伐再造林一辺倒の政策をやめて林業の方式にも多様性が出てくるといいのですが。

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