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森と林業の本

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2023/10/16

無駄な豊作の生態学

庭のミカンとカキが豊作。どれも一枝分を収穫しただけで、とんでもない量になったので、近所におすそ分けしたりしているが、それぜ食べきれないほど。

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粒が小さいのは、花がたくさん咲きすぎたからか。それは夏の高温と関係があるのかどうかわからない。が、非常に甘いので満足のいく収穫であった。が、そこで考える。なぜ、こんなにたくさん実をつけるのか。昨年は、ミカンはそこそこ豊作であったが、カキはまったくの不作であった。たしか、一つ二つしか実は成らなかった記憶がある。

思えば無駄なのである。たくさん実をつけても、子孫を残すことに通じるのはわずかだ。それは、たとえば魚の卵でも同じで、1匹の生む卵の数は、少なくても数千、多いものは1億個以上を産卵する。が、生き残るのは1匹から2、3匹。

残りは無駄だ。いや、生き残るためには必要だというが、稔らせるために使うエネルギーを考えると、相当な浪費になる。農作と不作・凶作のリズムは何か理由があるのだろうか。

植物生理学的に説明はされているが、そうではなく進化論的に農作と凶作を繰り返す論理が知りたい。進化の過程で、AIではないがディープラーニングして、適正な量の実の成り方を身につけないのか。適度に周辺の動物を潤わせながら、自分の子孫も残しやすい最適解を求めたらよいのに。毎年、適度量を成らせたら、実を熟させるエネルギーを無駄にしなくて済むのではないか?

今年は全国的にブナ類の果実は凶作らしく(とくに東北)、それによって冬眠前の食料が得られないクマが里へ出没することが警告されている。里の農作物、そして人間の持つ食べ物を狙うとされるのだ。これも、その前の豊作時にクマの数が増えたから凶作時に飢えるクマも出る。

そこで考えた。あえて攪乱をもたらそうとしているのではないか。豊作で増えたクマを凶作で多く殺す。その翌年にまた豊作になったら、クマは減っていて実を食べ残すから、多くの実が発芽できる……。植物のすごい生存戦略ではないか。

さらに考え方によっては、無駄になった果実や卵も、それがほかの生物の栄養になったり土を肥やすことで生態系を循環させる。生態系も無駄があるから循環することができるのかもしれない。循環させるための無駄をあえて植物は作り出すのも進化の末の結論?

よし、無駄に数の多いミカンとカキは、かじっては捨てて庭の土の栄養としよう。

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コメント

良いところに目を付けましたね。マスティング(豊凶)の研究者の間ではその考えは捕食者飽食仮説と呼ばれています。特にブナはブナヒメシンクイというスペシャリスト(ブナの花のみを特異的に食害する害虫)がいます。ブナが豊作の翌年はブナヒメシンクイが大発生して、たとえブナの実が2年連続で多くても、食害に遭い健全な種という意味では凶作になります。それを避けるために意図的に豊凶を作っているというのが捕食者飽食仮説です。資源的理由ももちろんあるのでしょうけど(これは資源制約説といわれる)、極端な豊凶を示す種はこの説が有力視されています。

すでに研究されていましたか。マスティングというのですか。単に多くの実(花)をつける豊作と、それが食害に合わず食べられる数は別と考えると、植物-虫-動物の複雑な関係になりますね。
動植物の進化とは、お互いが利益を得る適度なところに落ち着くのではなく、常に騙し騙され?あるいは戦闘態勢で相手を出し抜く場なのかもしれません。
すると「囚人のジレンマ」の理論にもつながり……あああ、どんどん複雑になる(笑)。

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