森林組合が解散した理由
こんなニュースを目にした。事情を説明している5月の記事も一緒に紹介しておこう。
継続困難、解散を決定 清算人決め残余財産処分へ 瀬戸内町森林組合
瀬戸内と言っても、中国-四国に囲まれた瀬戸内海ではなくて、奄美大島にある瀬戸内町なのだが……それはともかく、森林組合(組合員270人)が解散決議をしたのである。
その理由として、22年度決算が1323万円の赤字となったからなのだが、またもや不祥事か? と思ったら、ちょっとヤバい理由だった。
そもそも組合の主要事業は、複層林改良事業という名の間伐らしいが、それを担当する職員が退職したのである。22年度に予定していた間伐が145ヘクタールだったのに約21ヘクタールしか実施できず、大幅な収益減となったという。その間伐事業を担っていた職員は、昨年10月末に4カ月で退職したという。えっ、一人だけ? 145ヘクタールも担当していたの? ほかに間伐できる人間がいなかったの? と疑問符だらけ。
ハローワークなどへの求人募集でも応募がなくて採用の目途が立たない。事業継続には少なくとも二人必要で、間伐や測量など現場仕事と、県や町への補助申請などの事務手続きができる職員が必要とのこと。ところが現場仕事で山を歩くのは、体力的にきついうえに、ハブの危険性もあるというのだからなり手がいない。そりゃ、ハブはイヤだなあ。
そこで組合の存続が難しいとされて、組合を解散決議するとは。
そもそも奄美諸島は、ほとんどが天然林、照葉樹林であるはずで、林業も製紙チップの生産だったように記憶している。以前、大面積皆伐が行われて問題にもなっていた。今回の(できなかった)間伐事業とは、どんな森で行うのか。照葉樹林でも間伐? 人工林も多少はある(14%くらい)が、そこの部分だろうか。植えているのはリュウキュウマツだろう。
そもそも複層林改良事業そのものがなくてもいいものだったようにも思える。解散しても困らないから解散するのかも。
ただし、間伐に限らず伐採手がいないと、防災作業や災害発生時の処理などの人材もいないということになる……。世界自然遺産にもなったのに、管理ができなくなる可能性もあるだろう。
人手不足で森林組合の事業ができないという事例は、今後全国で起きるのではないか。中の貴重な就職口であるから事務員は確保できるかもしれないが、現場の肉体労働はなり手がいなくなる。作業班を編成できなくなると、多くの森林組合はアウトである。代わりとなる民間事業体があればよいが。いずれにしろ賃上げ・待遇の見直しは、こうした現場にも必須になるだろう。
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