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森と林業の本

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2023/11/14

エリートツリーのうさん臭さ

このところ、Yahoo!ニュース編集部から、「この記事にコメント付けませんか」という依頼がよく舞い込む。

クマ出没に山火事に林業に……とまあ、私ならなんかコメントするんじゃないかと思われたのだろう。私自身も、一からYahoo!ニュース記事を書き下ろすより簡単だし、短文でスパッと切れるのでわりと向いているかと、自分でネタを見つけてはコメントを書くことが増えた。

が、今回はあえてYahoo!ニュースのネタをブログで取り上げたい。なぜって? 気の迷いさ(´_`)。

成長早く花粉半減…住宅メーカー・ゼネコンなど熱視線「エリートツリー」を知っていますか

成長が速く剛性が高い一方で花粉量は少ない樹木―。この「エリートツリー」に企業が熱い視線を投げかけている。

エリートツリーは成長性とCO2吸収量が一般樹木の1・5倍、花粉の量が半分以下という優れものだ。成長が速いため、雑草を除去する「下刈り」の回数を減らせるほか、木材利用に適した状態となる「伐期」は約50年から30年程度へと短縮が見込める。労働力の軽減をはじめ、コスト低減や投資回収短縮が期待できる。

これは日刊工業新聞の転載のよう。

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某地で見たエリートツリーの苗。

しかし、わからん。生長が早い木をエリートツリーと呼ぶのはよしとしよう。そんな特性のある品種づくりである。が、それが「剛性が高い」とはなんぞや。「花粉量は少ない」とはどんな理由?

もともと生長の早い木は、年輪幅が広がるから嫌われてきた。九州のスギを「バームクーヘンみたい」と呼んで馬鹿にしたものだ。古くからの林業地では、密植や枝打ちという技法を、生長速度の制御に使って年輪を詰ませた。その方が美しい木目ができて、強度も高まるからである。事実、年輪が詰まっている吉野杉は、ヤング率などほかの地方のスギよりはるかに高い。そして価格も跳ね上がった。

木目の美しさは感性によるもので、幅広でも美しくなる場合もあるだろうから置いとくとして、剛性が強まるというのはどういうことだろう。表面だけ硬くなるのか? それとも広葉樹のように木目が幅広ほど硬い性質が乗り移るのか。

さらに花粉の量はどうして制御する? 生長の早い品種と花粉の少ない品種を掛け合わせるのだろうか。それとも生長が早いと、栄養が回らず花粉が減るのか?

謎だらけだ。どこかうさん臭い。早く伸びる分だけ、しわ寄せがどこかにあるはずだ。30年で生長が止まるかもしれない。

結局、質をよくして高く売るより量を売りたい林業向きということではなかろうか。

 

 

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コメント

エリートツリーというのは第二世代精鋭中の総称です。第一世代精鋭樹は各地の山から成長の良さや花粉の少なさ、材質などから選ばれたものです。それら第一世代を交配させて、さらに成長や材質などの基準から選抜されたものが第二世代精鋭樹=エリートツリーです。一応同じ立地なら並み大抵の苗木よりは成長が良いことは認められています。ただ品種によって性質は異なるので、記事のような夢のような品種は無いはずです。

連投すみません。この手の話でややこしなくるのが特定母樹です。エリートツリーは第一世代精鋭樹の中から選りすぐって成長や材質の良いものを選びます。特定母樹は従来の品種よりも成長がよく花粉が少ないものを選んでいます。よく混同されますが基準が違います。しかし、エリートツリーは当然成長が良いものが多く、花粉が少なければエリートツリーかつ特定母樹というのもあったりします…ややこしいです。ちなみ小花粉品種は特定母樹よりも花粉量の基準が厳しいです。さっきのコメントでも書きましたが成長も良い材質も良い花粉も極少という品種は確かなかったはずです…

下記資料の20pによると、スギの場合成長が早くて年輪幅が広くても剛性が劣ることはないそうです。
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/houkokusho/attach/pdf/kontena-7.pdf

コツコツと選抜して、よい形質の苗を選んで品種として固定しようとしているのはわかりますが……そんないいトコ取りが可能なのかなあ、というのが素朴な感想です。
とくに樹木は、農作物のような優良形質を固定させた品種づくりは難しいと思います。すると挿し木苗になるのでしょうが……。

生長速度と剛性は影響ないことはわかりました。でも、身の回りの年輪幅の大きい材木は、やはり柔らかいですけどね(^^;)。

これは解釈が難しいのですが、チャンチンモドキやコウヨウザンでは年輪幅が広くなると強度が低くなっています。
先に紹介したスギの場合は品種間の比較ですので、同一品種ではやはり年輪幅が広くなると強度は低くなるのではないかと思います。

ttps://www.kagoshima-it.go.jp/kit2021/pdf/kenkyu_report/k_report_2018_10.pdf

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