林業界のエコーチェンバー
このところ、広い意味での森林・林業関係者に会う機会が多くあった。
マジの林業現場、木材加工現場の人から林野行政を担う役人、林業を学ぶ学生、森林ボランティア、木育関係者……と、なかなか多彩。
そこで、ふと気付いたのは、彼らに「森林は大切だ」「林業は大切だ」「山仕事は面白い」「木に触っているだけで楽しい」といった意見が非常に当たり前のように語られていること。そして「もっと森や木の素晴らしさを伝えなくては!」という意欲が満ちていること。
まあ、全否定はしませんけど、「それって個人の感想ですよね」(^o^)。
ちょうど、日本の若者世代を森に呼び込みたい、森と人をつなぐビジネスを起業したい!という女子学生から質問が来た。そこでオンラインで顔を合わせたのだが、授業と研究の一貫で世間の人にオンライン・アンケートを取ったそうだ。そしてその結果に愕然としていた。
森に興味はない。林業なんて知らない……という声が圧倒的だったのである。当然、どうしたら森がよくなるか、という質問にだって目立った意見は出てこなかったそうだ。
さもありなん。そうでしょそうでしょ、というのが私の感想だが、彼女は誰もが「森は大切だと思っている」のが当たり前と想定してビジネスモデルをつくろうとしていたらしい。根底から崩れる(> <;)。
これは彼女の例だけでなく、森林林業に関わっている人全般に、似たような思い込みがあるように感じる。なぜ、そうした勘違いが起きるのか。それは、いっば業界内でエコーチェンバーを引き起こしているのではないか。周りの人は、みんな森が好きだし、林業は重要な産業と思っていることが反響して、世間全部がそうだと信じてしまう。
世の中、甘くない。自身に関係のないことは興味のないのである。
「森に人を呼び込むにはどうしたらよいか」と聞かれたので、私は「森の良さを伝えても、森に興味がないのだから無駄だよ」と答えた。森への興味関係なく、森に行くことで何らかのメリットがある状態を設けなくてはならない。結果として森に入れば、そこで森の良さに気付く、かもしれないというスタンスで臨むべきだろう。
そう言えば、夏ごろに大学で森林政策を研究したいという高校生からの聞き取りも受けたのだが、彼から合格したという知らせが届いた。法学部である。そこで盗伐など林業界の問題点や、地球環境に利する制度・政策を学びたいということだ。そうか、森に興味があるから森の研究をするのではなく、法学から入る。あるいは経済でも文学でも数学でもいい。そうした広い視点で森や林業を見つめる方がいいかもね。
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