日本の山にユーカリは育つか?
ちょっと不思議な記事を見つけた。神戸新聞なのだが。
兵庫県佐用町の森林でユーカリの植林が行われた。町有地1000平方メートルに、5月に3種類のユーカリの苗木250本、9月に別の2種73本を植えたという。早生樹で、バイオマス燃料や用材として使えるから、林業振興と放置林の解消が目的とか。
街だけでなく大学や民間企業との共同実験だというから、思いつきではなさそうだが、今更ユーカリ? いろいろな樹種を実験するのはかまわないが……。
かつてユーカリは、熱帯雨林地域で早生樹として持て囃された。一方で植えられると、樹皮からのアレロパシーで鳥も昆虫も棲めない、水を猛烈に吸収して川を涸らす悪魔の木だと騒がれたこともある。(『沈黙の森・ユーカリ』)
私は、その際に専門家を取材して、悪魔の木とはひどすぎるし、濡れ衣でもあると主張した(『「森を守れ」が森を殺す!』所有)。実際、そんな害毒はなかったのである。虫もよくいたらしい。川も涸れない。周辺に草も生える。
ただし、少なくても日本では外来種であるし、用途も怪しい。また早生樹にはコウヨウザンやセンダンなどいろいろ提案されている中で、ユーカリは外されている。
どうもユーカリをシカは食べないと思ったらしい。たしかに葉には油脂分を含み有毒成分もあるのだが……結果は、パクパクと食べられましたとさ(^_^) 。シカはたくましいのだよ。アセビもシダも食べるのだから、ユーカリぐらい平気だろう。寒さに強い品種もあるが、日本の気候に合うだろうか。
成長が早いというのもどうか。センダンも場所によっては上手く育たない。最初こそ急速に伸びるが、頭打ちになる。コウヨウザンも同じような傾向があって、江戸時代から植えられているのに広まらなかった。
もしかして経験があるのかと思って調べると、兵庫県相生市の小学校にユーカリの大木があったらしい。120年生で幹周りが420センチという大木だ。大正初めに木材商の木材置き場にあったものを、相生小学校の校庭に移植されたのだという。それが10年ほど前に突然倒れてしまったらしいが、少なくても兵庫県で100年以上は育った事例があったのだ。山間と海沿いの違いはあるが。
しかし、記念樹や庭木、コアラの餌供給用に植えるならよいが、日本の山にユーカリの森をつくるのは似合わないと思うよ。それとも、将来は佐用町の山にコアラの野生化計画があったりして。
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