聖教新聞書評『山林王』
昨年末だが、聖教新聞に『山林王』の書評が載った。
2023年を通して印象に残った本(3冊のうちの1冊)、という位置づけ。
選んだのはジャーナリストの浅野純次氏とあるが、寡聞にして知らなかったので検索してみたら、なんと東洋経済新報社の社長だった人である。そのほかにも肩書は多いが、2018年からは全国出版協会理事長、2019年12月より石橋湛山研究学会副会長……ということである。ビジネス界に詳しいようだから、土倉庄三郎も経済人として捉えたのかもしれない。
実際、庄三郎はビジネスマインドの持ち主だった。日清戦争を収支で言えば失敗とさえ論じている。賠償金の話ではなく、日本、清国ともに多くの兵士が亡くなり、施設を壊したことを損害と計算しているのである。
私も含めて庄三郎を「財を散じた人」と見る面が強く、林業で儲けた金をどのように使ったか、と論じてきた。しかし、その前に、林業でいかに儲けたかという点を調べてみるべきかもしれない。単に明治時代は木材価格が跳ね上がったのだよ、で片づけずに、その時々にいかに立ち回ったか、商品生産に100年かかる林業において、生産と需要をいかに橋渡ししたか。山林の売買を行ったか。さらに言えば、土倉家の林業で働く人への待遇も発掘したら、経営者としての素顔に触れられるだろう。
誰か、やらない?
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