「木造疲れ」と腐る建築
日経TECHの記事に「盛り上がる発注者と「木造疲れ」の設計・施工者、広がるギャップなぜ?」があった。
ようするにディベロッパーなと建造発注者は木造建築に期待を膨らませているが、設計・施工側の業者は、木造疲れが見られるとのこと。なぜ?という点は、記事を読んでいただきたいが、意外とあっさりと理由を想定してすませている。いやあ、私はそうじゃないと思うけどなあ。木造は何かと厄介なのだよ(⌒ー⌒)。設計や施工業者からすると、建てたくないのが本音ではないか。
ま、本音を推測することよりも気になっているのは、木造とは何かという根本的な考え方だ。
このところ伝統的建造物を見る機会が増えている。奈良はとくに多いのであるが、そこで現代の木造に関して違和感を持った。
今は、木造建築をめざす勢いの中で、「木造でも建ちますよ」から「木造でも耐久性がある、耐震性、耐火性、耐腐朽性がある」ことを求めているし、それを証明しようとしている。能登半島地震でも、古い木造は壊滅した……なんて指摘をして耐震建築を謳う。
だけどねえ。私は木造建築なんて長持ちしなくていいと思っているのだ。木は腐って、燃えて、価値がある。表面も変化するから木肌に表情が生まれる。明るい木肌が年月をかけて焦げ茶とかシルバーに移り変わるのを楽しめないか……だいたい長持ちしたら、木が売れないんじゃない?
経済とは、ものが入れ代わることで更新していくことで成り立つ。一度作ったものがまったく変化せず、傷まず使い続けられたら、経済は縮小するだろう。
『腐る経済』という本もあった(『
が、これは、マルクスの資本論を繙き解きながら、添加物で腐らないようなパンはおかしいというところから、パンは腐るから経済が回ることに気付く。そして自ら「タルマーリー」という店を開いて天然酵母にこだわったパンづくりとビールづくりを進めていく。現在は鳥取県智頭町に店を構える。私も幾度か訪れているが、昨秋にパンとビールを買いました。まあ、タルマーリーは有名だから知る人も多いだろう。この本もベストセラーだ(なぜか韓国で)。もちろん、木造建築は腐って短寿命でいいというのではない。修繕を繰り返すのだ。腐った部材は交換して行くことで長持ちさせる。火事と地震は困るけど、壊れることを前提に建てる。
奈良県の宇陀の重伝建の一つで見かけた民家。壁を古いクスリの看板(もともと薬屋だったらしい)で修復している。それが味を出している。
家の前に水路があってよく水が流れているから湿気も高いだろう。木造の土台も腐るのが早いのではないか……と思うのだが、江戸時代から100年200年も建ち続けている。腐ることを前提にした家づくりもアリだと感じた。
まあ地震で倒れて死者を出したら困るという意見ももっともなのだが、耐震構造にしても、一度二度と揺れると、芯の部分で折れるかもしれない。すると倒れはしなかったが、建て直さないと住み続けるのは難しくなる。ならば、簡単に建て直せる構造もあるかもしれない。あるいは構造材は鉄骨・コンクリートで耐久性を持たせて、内装外装を木材で行う考え方もできる。
ちなみに、こちらはタルマーリーの新しいパン工場。
古民家改造である。
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