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森と林業の本

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2024年4月

2024/04/30

伊吹山の森林限界

なんと、伊吹山に登ってきた。滋賀県北部の標高1377メートルの山である。

台湾からの客人が登るというので着いていこうとしたら、登山道の崩壊があり、麓から登るのはダメ。残るルートはドライブウェイ終点からしかないというので、私の車で行ったのであった。ドライブウェイの終点の駐車場の標高は、なんと1260メートルあって、そこから登ると標高差は100メートル程度(笑)なのであった。30分ほどで到着したが、いやあ、きつい山でしたよ(^^;)。

ただ、驚いたのは、たかだか1200~1300メートルの山頂付近には、木がないことである。森林限界を超えていたのだ。そして季節によってはお花畑になるのであった。

この高さ、亜高山帯でさえない。日本の本州で森林限界を超えるのは3000メートル以上だろう。北海道でも2000メートルは必要ではないか?
それなのに、1000メートル付近から木が消えていくのである。

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おかげで、岩山を登る気分で、琵琶湖を見下ろせたのだ。

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お花畑の片鱗も見られた。種名は確認していない。

伊吹山と言えば、歴史的には日本武尊などが登場し、織田信長がポルトガル人の持ち込んだ薬草を栽培させたとか、そして今もヨーロッパ原産の草が生えているとか(異説あり)、いろいろ伝説がある山なのだが、生物的にも面白い。

なぜ低山で森林限界ができるかと言えば、日本海側と太平洋側の両方から風が吹きつける位置的な条件で、水分が少なく、しかも石灰岩質の地質のため、樹木が育ちにくいからだと思う。

そう言えば、伊豆諸島の神津島に行った際も、森林限界を見た。なんと標高300メートル程度の山であった。こちらは、火山性の地質と、やはり周囲からの海風が強くて樹木が育たないからだろう。

20220916-123801神津島

おもろい現象である。

ちなみに伊吹山、山頂に立ったとたんにガスに覆われた。雲の中に入ったみたいで、何も見えなくなった(泣)。雨も降ったのであった。

2024/04/29

リンゴの木復活

庭の任後の木に葉が繁った。花もたくさん咲いたが、もう散った。

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何を驚いている?と思われるかもしれないが、昨年この木は夏にカミキリムシにやられたのだ。

今の木の幹をよく見てほしい。

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このとおり、幹に幼虫が入り、川はめくれ内部を食い荒らされた。

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これが昨年の秋の様子。

それも幹のいたるところだ。せっせと退治しようとしたが追いつかず……。

だから、今年はほとんど諦めていて、いっそ早めに切り倒して別の木を植え直そうかと思っていたのである。実は次の木の選定までしていた。
結果的に放置したのだが、すると、春になると葉の芽が付きだして、あれよあれよと茂り、なんと白い花まで咲いた。復活!したのである。

本当にリンゴの木は元気になったのか。実はつけるのか。(そもそも、4月の始めの時期に花が咲くのも早すぎないか? なんか季節を間違っているような気がする。まあ、これは気候のせいだろうが。)

ともあれ、有り難いことではあるが、リンゴの木の復活が本物か見極めたい。

2024/04/28

木材マニア向けの平城宮跡

私の散歩コース、平城宮跡。まあ、ダダッ広くて、大草原?が広がっていることも気持ちいいのだが、実はアウトドア的な活動だけでなく、インドア的楽しみ方がある。意外と気付かれていないが、各所に展示館があり、かなり見応えがある。もちろん遺跡中心に歴史的な展示が多いのだが、それとは別に見どころは、木造建築物および木質出土品。

どの展示館にも、過去の木造建築物、復原された木造建造物があって、その模型も並ぶのだ。模型といっても、高さ3~4メートルもあったり、実物大(笑)模型もある。また発掘された木質出土品や復原のための木材なども展示されているから、木材マニア向き。小さなものは木簡から、直径2メートル級の丸太まで。その大工仕事の技も見られる。

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Photo_20240428163502当時の宮内省の役所(実物大)

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6_20240428164301大極殿などの建築材

17_20240428164301スギの丸太くり抜き井戸(本物)

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いったいいくつあるか、地図から拾ってみた。奈良文化財研究所平城宮跡資料館、遺構展示館、推定宮内省、大極殿、第一次大極殿院 復原事業情報館、東院庭園、朱雀門、平城宮いざない館、平城宮みつき館、復原遣唐使船、天平みはらし館……なんたって、文化庁に国土交通省、奈良県などが入り乱れていろいろ建てたから(笑)。しかも点在しているから、各地を順番に歩いて訪ねると、よい運動になる。

 

2024/04/27

道より未知。探検遺伝子の進化論

気がつけば連休。また生駒山に登った。ルートは、いかに人がいない道を選ぶか。このところ生駒山は登山客があふれている。

私は山登りもしくは森歩きでは、できるだけ他人に会いたくない。もし人が前方に見えたら、さっと道から外れる癖がある。そこで、人が滅多に通らない旧道を選んで登り、すぐに下りコースへ。

よい具合に誰とも会わずに進める。わずかに山頂のだだっ広い駐車場で遠くに人影を見た程度。ただ、このまま言えば宝山寺の裏手に出て、また人が多いだろうな……と想像できた。そこに現れたのが、このテープ。

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ん? テープが巻いてあるということは、こちらに道があるということか。

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瞬時にその暗がりのルートを選んでしまった。たしかに道らしい。今まで知らなかったぞ。たしかにところどころに木にテープがあり、ルートを示している。もっとも道と行っても単に茂みの薄いところを進むだけのようなものだが。

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あら。倒木があるということは、長く通る人はいなかったのだろう。もはや道は消えてしまったのかもしれない。

こうなると、もうテープを当てにはしない。自分で通りやすそうなルートを見つけて下る。通りやすい……と言っても、気がつけばブッシュに。木々をかき分けて進むのと同じだ。かなり急な傾斜を滑るように下る。

ワクワクしてきた。知らない風景の中を歩くことに。知った道より未知の道を選ぶのは、我が性だ。私の人生の選択ルールである。

人の遺伝子の中に、DRD4-7Rという遺伝子があり、それがあると新奇性のあるものに触れるとドーパミンを受容するという。つまり知らないものに触れると快感を生じる。快感を感じたくて未知のものに触れたくなる。

だから、この遺伝子を「冒険遺伝子」などと呼ばれる。未知を探して移動を好むから「旅人の遺伝子」ともいう。私は危険を伴った肉体的にきつい冒険は苦手なので、「探検遺伝子」と呼びたい。もしかしたら、探し切れずに迷い遭難するかもしれないから、「遭難遺伝子」かもしれない。

人類の何%かは、この遺伝子を持つ。まあ、あまり強すぎると遭難して消えていく(^^;)ので、ほどほどに冒険し、探検し、生還した人だけが、人類を進歩させたのだろう。

進化論によると、遺伝子の偶然の偏差によってバラエティのある形質が生まれ、その中でたまたま生き残ったものが進化したとされる。人類は、単に肉体的な形質だけではなく、心理的なバラエティとして、この冒険遺伝子があるのかもしれない。それが行動のバラエティを生み出し、進化させる。だからこれも自然選択だ。

ま、私もその末席に座っているということですな。

そうそう、最後はぐだぐだになりつつも、なんとか道の痕跡のあるところに出て、真っ当に帰って来れました。

 

 

2024/04/26

タケノコ掘り第2幕!

またタナカ山林にタケノコを堀りに行ってきた。前回の屈辱は果たせるか……。

やはり森の各所にイノシシが掘った穴が開いている。タケノコはかなり取られてしまったか。。。

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このようなタケノコの食べ滓がある。悔しい。かなり贅沢な食べ方をしている。

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沢には捨てられたタケノコが。全部食べずに根元を齧って捨てたらしい。ムカつく。

しかし、タケノコは次々に出ているようなので、まだイノシシに見つかっていないものもあるのではないか?

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あった! まだ地面に顔を出したばかりの様子。イノシシに見つかる前に掘るのだ、と近づく。

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あれ? よく見るとタケノコの根元を齧られていた。掘らずに齧ったのだ。ムカつく!ムカッ、ムカッ

人間様は、柔らかいタケノコの穂先を喜ぶが、イノシシは根元のしっかりした地下茎部分が好きなようだ。しかし、そこだけ齧るなんて贅沢というかモッタイナイ精神がない。

諦めかけたが、その後小さなものを中心に、まだイノシシが齧っていないタケノコを発見。4本ゲットしましたとさ。掘りたては、アクもないから茹でずにサッと炒めるだけで美味しくいただきました(^_^) 。あとはタケノコご飯にタケノコの若竹煮。

 

2024/04/25

Y!ニュース「伐採量を2倍にしたら炭素固定量が3倍になる?…」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「伐採量を2倍にしたら炭素固定量がは3倍になる?最新研究から見た林業と気候変動対策」を書きました。

この元となる東京大学の森林は、たくさん伐ってたくさん植えたら、たくさん炭素を蓄えるの記事は、目にした人もいるのではないか。言ってることは「木を伐って、どんどん使おう」という林野庁のスローガン?と同じなのだが、東大の研究論文となると迫力が増す。

しかし、私がこれを読んだときに某誌の原稿を書いていて、そこでは「木造建築を建てれば建てるほど森林は劣化し気候変動が高まる」というものであった。つまり、林野庁の政策は間違っている、という主張である。

だから、冒頭の「目を剥いた」のは私。そこで論文を読んで、数値や理論を確認したわけだが、ようするに伐採した木はしっかり建築などに使って長持ちさせ、その跡地に再造林100%にする、という前提なのであった。現実は違う。

そこで論文筆頭の熊谷教授にメールを送ったのである。

すると論文には木材利用の歩留りなども計算に入れているし、端材・おが屑の利用まで含めているということだった。(英語論文の方に書かれてある。読むのは大変。。。。)

私も、ちょうどJクレジットを取得した林業家に取材に行って、その内幕を聞いてきた。Jクレジットの炭素固定量の計算方法は、なかなかの曲者であった。

その後、幾度かメールのやり取りをしたうえで、書いたのがこの記事だ。

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果たして林業は、脱炭素の切り札になるか。それともグリーンウォッシュ?…という話なのである。

2024/04/24

農水省の書店、宮崎県の書店

農水省の書店を覗いた人から写真が送られてきた。

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なんと、2カ所で平積みされているようだ。片方は8冊積まれているから、結構な冊数がある。書店子によると「ま~売れてますね」とのこと。一方で「林野庁に反発しているからね(笑)」という声もあったそうである。

私としては、まずは書店の店頭に並ぶことが最重要なので、有り難いことなのである。

ところが、宮崎県の書店では、まったく一冊も見かけないという報告が届いている。尋ねると「注文したら取り寄せます」という返事が返ってきたという。宮崎市で有力な蔦屋書店、田中書店、明林堂書店……いずれもないという。これ、異常事態である。仮にも今月発売の新刊で、宮崎県も登場する本が売られていないのだ。
ちなみに配本は、取次が自動的に仕分けて送るから届いているはずなのに、それを店頭に並べずに送り返した可能性がある。

書店が、誰に忖度したのか、地元に関係のある本を仕入れないとは。都合の悪い本は置かないというのは書店倫理にも引っかかるのではないか。これこそ、田舎の論理?

ぜひ、宮崎県在住、もしくは宮崎県に行かれる方がいたら、書店を覗いて「『盗伐 林業現場からの警鐘』という本はありませんか」と尋ねてもらいたい。客のそうした声がもっとも圧力になる。

もしあっても無理に買わなくてもよい。内容を確認するふりをして立ち読みしてください。(きっと買いたくなるから)
もし購入していただければ、ご連絡ください。宮崎県のどの書店にあったか教えてもらえると有り難い。
なければ、「なぜないのか」と、問い詰めてほしい。それが億劫なら、「じゃあ、Amazonで買おうっと」と捨てぜりふを吐いて、店を出たらよい(⌒ー⌒)。それがリアル書店には効く。

今後、広告も打つ予定だが、それでも並ばなかったら……宮崎県の書店の闇が浮かび上がる、かも。

2024/04/23

自然共生サイトを見に行く

自然共生サイトを知っているだろうか。

本ブログでは折々に紹介しているが、ようするにネイチャーポジティブ戦略の一環で、国際公約の30by30(陸海の各々30%を生物多様性の高い地域として2030年までに指定する)ために設けられたものだ。従来の法的な裏付けのある保護区では10~20%しか指定していないから、民間の土地なども法律抜きで指定していこうという作戦だ。

すでに昨年度に185カ所指定したというのだが、奈良県では1カ所、王寺町の「陽楽の森」一カ所。ここは谷林業が持つ市街地内の里山である。周りは住宅地などに囲まれている約10ヘクタールぐらいの土地で、雑木林になっている。そこを見に行ってきた。

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どんな条件をクリアしたら認定を受けるのか聞いたのだが、意外と曖昧で、とくに生物多様性があることを示す調査が必要なわけではないらしい。むしろ位置や地形、区域、所有者……などを示す書類が必要になる。また自然を管理する活動なども重要としている。

「陽楽の森」は、さまざまなイベントを開いたり、市民の憩いの場として機能していることから選ばれたらしい。見ての通り、ツリーハウスもつくったし、今度はここにカフェなどをオープンする計画も進んでいる。

一応、条件を調べてみた。

「自然共生サイト」認定の令和5年度後期申請受付開始について

ここに各項目の添付資料がある。いくつか抜き出すと……。

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こうやって見ると、やっぱりてんこ盛りの書類が必要になる(^_^) 。

それに、現時点では認定されたからと言って、何か特典があるわけではない。せいぜい、認定を受けたことを利用して寄付を集めることだろう。ただし、近く環境省は、固定資産税の減免などの特典を賦与する予定だ。まあ、山林などの税金は安いから、金額的にはたいしたことはないだろうが、それでも一つの目安になる。林業家、山主が、木材以外に「生物多様性という商品」を持つことを示すことは重要だ。

これを進めれば、自然を破壊する開発行為に対して、穴埋めとなる自然を提供する形の「生物多様性クレジット」に発展させられるかもしれない。すでにイングランドでは、開発したら、そこの自然の10%増の自然を別の場所に作らなくてはならないというネットゲイン政策が発動されている。これが日本にも広がるかもしれない。

特典のない今の間に認定を取得することは、先駆者としての地位が得られるだろう。

2024/04/22

排水溝の中の生態系

長く課題としつつ放置していた問題。それが排水溝の掃除だ。

我が家の前にある排水溝。雨の多いシーズンだし、そろそろ掃除するかな、と思いつつ放置を続けた。面倒くさい……という当たり前?想像どおりの理由だけではない。排水溝の中に多くの草が生えて、ちょっとした生態系ができているから。苔が分厚く繁って、その上にさまざまな草。一部に木本性の植物も見られる。

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苔はスナゴケかハイゴケか。そこにマルバマンネングサが広がり、ハコベやらタンポポやらいっぱい。シンテッポウユリも育っている。壁面にはノキシノブが繁る。そして昆虫?がうようよいる。苔をめくるとミミズもいた。排水溝にしゃがみ込むと、ブンブン耳元で飛び交う小さな虫。

実は、ネコの通り道でもある。我が家に出入りしているネコが、排水溝のトンネルを抜け道にしているところも目撃した。小さなパイプをくぐるみたい。このネコも生態系に入れるか。

掃除するということは、これらの草や苔を取り除くということだ。それに抵抗があって……。が、周辺の家の前の排水溝を見ると、なかなかきれいにしているではないか。。。いつまでも放置してはマズいか。だいたい大雨であふれたら困るだろう。

ちょっと坂道なので水の流れは速くてあふれるというより、落葉や草が流されて詰まる可能性の方が高いかもしれない。

ともあれ、溝すくいをする。

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タンポポもある。

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ウコギっぽい樹木の稚樹。可哀相に思ったが、むしろこういうのが水流を邪魔するわけなので、引き抜く。コンクリートの隙間に根を伸ばしていた。

かくして排水溝の生態系を破壊したのであった (@_@)。

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2024/04/21

「vesta」の養蜂と蜂蜜の特集記事

vesta」という雑誌(季刊誌)があった。その春号の特集が「ミツバチとハチミツの食文化」。

思わず取り寄せてみた。

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これは面白い! 失礼ながら雑誌の特集記事の範疇を超えて“読みやすい研究紀要”レベルではないか。

まだ全部読んだわけではないが、興味深いテーマと記述が多数ある。とくに驚いたのは、日本の養蜂とニホンミツバチの起源に関する新説。

なんと、ニホンミツバチは、430年前(安土桃山時代?)に朝鮮半島から渡来した種の可能性があるらしい。逆に言えば日本の在来種ではなかった! なんだ、外来種か(笑)。 歴史もそんなに古くないことになる。

しかし、日本書紀に百済人が三輪山で養蜂に挑戦したが失敗したという記述もあり、その後も各時代に蜂蜜を味わった記録もあるではないか。また平城宮跡からの木簡にも蜜の記述がある。養蜂は奈良が起源だ( ̄^ ̄)、と私は主張していたのに。

ところが、当時の蜜とは甘味料を指していた可能性があってハチミツとは限らないらしい。しかも輸入ハチミツが少なくなかったから、日本で採取していたとは限らないらしい。輸入していたのだ。鑑真も大量のハチミツを運んでいた記録もあるらしい。国内で多少の採取はしたとしても、量は少ないし、マルハナバチの蜜の多能性もあるとか。
そもそもニホンミツバチも、トウヨウミツバチの亜種で朝鮮半島の種と区別はほぼつかないのだから、固有種のように語るのは無理だ。

3_20240421165301我が家の庭に飛ぶミツバチ

もう一つ気になるのは、ドイツの養蜂の歴史。実はヨーロッパはの林業の歴史を調べているとハチミツの採取が出てきて、養蜂とハチミツ採取も林業であり林産物に含まれると感じていた。どうやらフォレスターが養蜂を行う権利があった時代もあるらしい。日本でも、林業家が養蜂を行ってもいいのではないか。広葉樹林業と抱き合わせで収入源にできる。

さらに「偽ハチミツを探せ!」記事も面白い。私も、ハチミツには偽物が多いことを感じていたが、単純に産地や花蜜の種類を偽るものから、そもそもハチミツではなくて砂糖液を混ぜたものもあるとういう。最近では輸入物をニホンミツバチの蜜と偽って、2倍以上の価格で売るケースもある。ニホンミツバチの蜜と聞いたら希少で、美味しいと思う人がいるらしい。

セイヨウミツバチとニホンミツバチの蜜の差とは、一種類の花から蜜を集めるか、多数の花の蜜を混ぜてしまうかの差。シングルモルトとブレンディッドウイスキーの差みたいなもんだと思えば、セイヨウミツバチのシングルモルトの方が高くあるべきではないか(笑)。

そして、やはりミツバチのポリネーター(花粉媒介者)としての生物多様性への寄与も重要だろう。私は、植物進化にポリネーターの登場が関わるのではないかと想像している。

ともあれ、養蜂ジャーナリスト見習いとしては、興味深い特集であった。これ読んで、付け刃知識でエラそうにミツバチについて語ろうかな。

 

2024/04/20

土倉庄三郎講演会

18日、奈良の京終さろんで「山林王・土倉翁の足跡」の講演を行ったことは先に告知していた。

無事終了した。吉野林業と土倉庄三郎のCSRを中心とした内容となる。1時間30分のつもりが、1時間15分と言われて、思い切り端折りながら早口で詰め込んだのだが、結局は1時間35分くらい話したという……。多分、通常は2時間以上かける内容であった。でもギチギチに話したから聞き取れたかどうか(^^;)。

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会場はこんな感じ。もうお寺の本堂そのまま(^_^) 。30人くらいしか入れないのだが、

またツイキャスで同時中継をする予定が、担当者の都合でできなかったため、急遽ビデオに収録し、後に申し込まれた人が見られるようにしたそうである。多分、そちらの方がパワーポイントの資料もよく見えてわかりやすいと思う。

再来年は豊臣秀長を主人公にした大河ドラマになることで奈良はちょっと盛り上がっているのだが、秀長が100万石の大和郡山藩城主になり大和を納めたのは晩年の一時期だけである。やはり、めざせ、大河ドラマに土倉翁!!!だろう。

 

これで土倉翁については一服……かと思ったが、そうではなかった。また依頼があったのである。今度は鳥取県の智頭町で開いている「智頭の山人塾」。こちらもオンラインだが、7月から始まる次回講座の2回目、8月22日に土倉翁と吉野林業について話す。19時より。

主に林業系の話題を扱う講座なのだが、そこに山林王の話を入れる。ちょっと先だが、どうなるか。乞う、ご期待。

 

ちなみに近鉄奈良駅前の啓林堂書店で異変。新刊の『盗伐 林業現場からの警鐘』がどこを探してもなくて、『山林王』も1冊しかなかった(泣)のだが、『鹿と日本人』が平積みになっていた。

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以前、奈良のシカの本の棚はあるのに、拙著がないと嘆いたのだが、いきなりの復活である。『鹿と日本人』は、タイトル周りには何も書いていないが、半分くらいが奈良のシカの話なのだ。これからナラシカブームが来るに違いない。

2024/04/19

今年のタケノコ事情

Yahoo!ニュースから「タケノコ大豊作 異例の安さ…100g38円も!? 好天続き…1本4kg超“おばけサイズ”も」(テレ朝ニュース)という記事にコメントを付けないかという提案があった。正直、のどかな季節もの記事にコメントなんて必要あるの?と思ったのだが、たまたま私もタケノコの記事を書こうとしていたので(^^;)、コメントを付けた。

私も、先日タナカ山林にタケノコを堀りに行ったのだ。例年は連休前なのだが、今年は早くから温かいので出ている可能性が高いと睨んでいた。

が、想像どおりであった。

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見事にイノシシに先を越された。タケノコそのものは出ている様子だが、全部掘られていた。1本だけ、タケノコの頭が出ているものがあったので喜んで近づくと、裏側がかじられていた。イノシシはかなり贅沢な食べ方をする。一齧りして捨てているものが多い。ムカつく。

ニュースでは豊作自慢をしているが、そのうちイノシシが増えてタケノコどころじゃなくなるぜ、と恨みと予言のつもりでコメントを書いたのであった。ちなみにクマもタケノコが好物。

また日を空けて、イノシシがタケノコに飽きた頃に堀りに行くか。なんだか、イノシシの残したものを拾うみたいで悔しいけど。

2024/04/18

モクレポ31号に能登半島地震報告と

林野庁のモクレポ31号(4月版)が出た。

モクレポ~林産物に関するマンスリーレポート~

今月号は、読みごたえがある。というか私の関心事が多く登場する。

まずは能登半島地震の林業関係被害が掲載されている。この地震被害報道は、漁業や観光業、伝統工芸に収入し、林業がほぼスルーされてきた。私が微力ながらいくつか発表した程度だ。それがまとめられている。

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また「森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針」も出ている。
とくに気になるのは、森林を生物多様性にする問題で、林業についても触れていること。日本の林業は、一斉林ばかりで生物多様性とは一線を画しているが、ここでは林業地であっても生物多様性を高めることについて紹介している。

森林の生物多様性を高めるための林業経営の指針
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/tayousei/attach/pdf/top-4.pdf
森林の生物多様性を高めるための林業経営事例集
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/tayousei/attach/pdf/top-3.pdf
生物多様性保全に資する森林管理のあり方に関する検討会
https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/tayousei/kentoukai.html

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このQRコード読み取れるかな(ただしpdfである。パソコンで開いた方が読みやすい)。。。とくに「林業経営の指針」は面白い。事例集は……イマイチ(笑)。

ほかにも統計など、細かく見ていくといろいろ読み取れるのだが、それは皆さんの興味に任せよう。

 

 

2024/04/17

切株の上の生態系~マムシグサ

不定期に行っている「切株の上の生態系」シリーズ。

ようは伐られた木の断面の上に、新たな動植物の世界ができている妙を見つけては記録しているのだが、久々に紹介する。

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十津川村のスギ林の中で見つけた。かなり古い切株で、間伐された様子だ。全体が朽ちて苔むしているが、その上に伸びていたのはマムシグサであった。その特徴的な姿が、なんだかアートぽい。

ほかにも、いろいろな草と苔が育っているようだ。実は、ここはもうすぐ皆伐される予定なのだが、果たしてこの切株はどうなるか。残しておいてほしいが、施業の邪魔か。周りには広葉樹も多いので、上手くすれは混交林にもなりそうだけどなあ。

ちなみに本日は、オンラインのパブコメセミナーに出演して、盗伐問題について語る。そこで出た最後の質問。それは、どうしたら盗伐が起きないようにできるか、であった。それには森林環境税は使えないのか、と聞かれた。

これぞ、我が意を得たり。盗伐を防ぐのに今すぐできることはある。それは伐採届の内容をきっちり確認して、施業前後に現地を訪れること。確実にどんな施業をするのか役所の担当者が目で見て指導すれば、たいていの業者は悪さができなくなる。伐採後も確認し、再造林後も確認する。これぞ、最大の盗伐防止策なのだ。

しかし、市町村にはそんな人材がいないし,専門職を置く金もない……と言われるが、そんなことはない。その見本を、この十津川村で見た。

ここには森林の専門家として奈良県フォレスターが派遣されているのだ。この現場も、その伐採届の確認仕事であった。そして奈良県フォレスターの養成と派遣を賄っているのが森林環境譲与税なのである。

セミナーでは、「奈良県ではねえ~」と自慢するのは止めておいたが、すでにやっているのである。そこで見つけた切株の上のマムシグサに、私は「奈良県では(大規模な)盗伐は起きない」と確信したのであった。(この事例は、『盗伐 林業現場からの警鐘』にも書いている。)

2024/04/16

森を金に換える「生物多様性クレジット」

放置林が増えている理由は、1にも2にも森から利益を得られないからだろう。だから所有者は、森を管理する意欲を失う。

ここで利益を得るというのは、日本ではほとんど「木材生産」しか頭にない。木材価格が下がり、需要も落ちているし、木材として使うには数十年も育てなくてはならない。だから、期待できないのは仕方ないだろう。

そこで新たな森の活用法を見つけなくてはならないのだが……一部にキャンプ場などもあるが、最近注目されているのが、Jクレジット(カーボンクレジット)。つまり二酸化炭素の排出権取引であり、森が吸収する二酸化炭素を商品とする考え方。日本では低調だが、上手くすれば金になる。考え方としては、かなり広まった。

私は、もう一つの考え方として、生物多様性を金に換えるシステムが広まらないかと思っている。

その一つが、環境省が売り出し中の「自然共生サイト」。30by30、つまり陸海の30%を2030年までに保全するという国際公約を達成するために、生物が多様な民間の土地を認定する政策だ。

基本的に一斉林で行う林業地には関係ないように思えるが、そうでもない。ある程度大きな面積の森林所有者の場合、すべてをスギやヒノキの人工林に変えているわけではなく、一部、たとえば1~2割は天然林であることが多い。河畔や尾根筋などに広葉樹を残した森がある。そこを自然共生サイトに指定してもらえないだろうか。

今のところは、指定されてもイメージ向上にしかならないが、近く環境省は税制を変えて固定資産税や相続税などで優遇措置を設ける予定だ。そうなると、面積によってはそこそこの金が浮く。

Photo_20240416151701環境省サイトより

あるいは林業を続ける気持ちのない山主が、そのまま放置するのではなく、その山で自然再生活動をすると、その活動を認定する制度がつくられた。これは2025年度から施行されるが、そうすると認定証を発行されて、企業などから寄付を受けられる。再生が上手くいって、生物多様性をキープできるようになれば、それを自然共生サイトに認定される可能性が高まる。

こうした自然を守る活動と、その結果生まれた自然豊かな土地をクレジットにして、どこかの開発計画(自然破壊行為)と相殺する。その代わり開発計画者は、自然保全者に金を払う。これがクレジットだ。

これが「生物多様性クレジット」である。

Photo_20240416151702福島県サイトより

国は3月末に「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を発表した。生物多様性を増やす(ネイチャーポジティブ)ことを経済活動につなげる戦略だ。企業や金融機関、消費者の行動を変えて自然を保全する経済に移行するビジョンと道筋を示した。環境省の言葉によると「自然への対応が、企業の株価向上や株価純資産倍率(PBR)改善につながる」。

すでに世界的には「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の枠組みがある。ようするに自然への対応を情報開示し、ESG投資を呼び込む発想だ。これで株価向上も狙うのだ。

木材生産だけではなく、二酸化炭素吸収と生物多様性創生の2本柱で森から金を稼げたら、これも新たな林業、環境林業にならないかね。

 

 

2024/04/15

『盗伐』記事2本を読めばわかること

ジュンク堂書店奈良店に行った。

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ん? 新刊なのに『盗伐 林業現場からの警鐘』は1冊だけか? ちょちょ……ちょっと。

がっくりしかけたが、よく見るとこの棚。拙著が並んでおる。『盗伐』のほかに『山林王』『絶望の林業』『虚構の森』そして監訳『フィンランド 虚像の森』。周辺の本も見覚えのあるものが多く、なんだか我が家の書棚に見えてきた(笑)。

さて、『盗伐 林業現場からの警鐘』出版に合わせて、この派生記事が次々と出ている。

まずは、日刊SPA!

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こちらは友人であるノンフィクションライター諸岡宏樹氏。売り込んだわけではなく、記事にしてくれた。彼は事件ものを得意としているのだが、それだけに記事も盗伐案件を具体的に紹介して、この事件の特異性を描いてくれた。

一方、同時期に私自身が執筆したWedge on line

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思えば、盗伐現場を訪れたのは、Wedgeの取材が最初だった。それが2019年なのだから、5年経って書籍にしたことになる。当初は、時事的な事件なので書籍にするつもりはなかったのだが、いつまで経っても当局は動かない・盗伐も止まらないことが、私を後押しした形になる。

私の記事の書き方は、日本の事件から世界の情勢へと広げていくスタンス。ある意味、書籍版と同じなのだが、この2本を比べてみると……やっぱり具体的な事件の中身をグイグイ押していく方が、迫力あるな(^^;)。ただ、私自身はそうしたやり方が苦手というか、書けない。やはり私は事件記者に向いていない……。

ともあれ、両方を読めば、『盗伐 林業現場からの警鐘』の全体像がわかる。あ、だから本は読まないでもよいというわけではない(^^;)。ぜひ、手に取ってほしい。奥行きが違う。事例は実名のものが6件だが、匿名の事例をいくつも散らばめている。また「盗伐学」としての分析も含む。そして世界情勢は、かなり大がかりであることもわかるだろう。

 

 

2024/04/14

平城宮跡の草原を覆う花

平城宮跡を歩いてきた。春うらら……のはずが暑い(-_-;)。。。

秋にはススキと思わせるオギも刈り取られて、広大な草原が見晴らしよく広がる。

そこで発見した。足元の花はなんだ?

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小さいが、点々と咲いていて、下手に歩くと踏みつぶすではないか。ここまで小さいのに一面に咲き誇るのは……。

一瞬、スミレかと思ったが、花の形が全然違う。ラン科? いや違う。うーん、草花は苦手なのだよ。

検索して、ようやく見つけた。サギゴケだ。ムラサキサキゴケではないかな? ゴマノハグサ科だそう。全然知らない科だが、キンギョソウに近いと思ったのが正解であった。

強いから踏んでもよいとのこと。グランドカバーによいね。

この花が、平城宮跡いっぱいに広がったら、どんな景観になるか。

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2024/04/13

2つのオンラインセミナー出演告知

来週は、何かとセミナーに参加する。

17日はオンラインの「パブコメセミナー: 改正クリーンウッド法、細則はどう変わるのか?」にゲスト出演。
タイトルからわかる通り、改正クリーンウッド法のパプリックコメントが募集中なので、それに合わせてこの法律と、パブコメの書き方教室(笑)である。そして、私は『盗伐 林業現場からの警鐘』の中でもこの法律を取り上げていることから呼ばれて後半に少ししゃべることに。

【開催概要】

・日時:2024年4月17日(水)14:00~15:30(開場:オンラインは5分前)
・開催方法:オンライン(zoom会議室)
・参加費:無料

【プログラム】(敬称略、内容は予告なく変更することがあります)

1.改正クリーンウッド法の省令・施行規則・基本方針(案)の課題とパブコメ案の事例/FoE Japan 三柴淳一
2.知ってる?林業現場で起きる違法行為の数々/田中淳夫氏(森林ジャーナリスト)
3.質疑応答

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平日昼間だけど、木材に関わる仕事をしている人なら、聞いておいて損はない。(マジメに)木材を扱おうと思っているなら、重要な話題であるはずだ。私の話題提供は、やはり盗伐を始めとする林業界の闇になる(⌒ー⌒)。

参加には、リンク先から申込してほしい。

【お申込み】

以下のフォームよりお申込み下さい。
https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZwkcOyhpz0sGdF6D7RMi6siUa-ftq-h_v77

 

18日は、第126回京終さろん「山林王 土倉庄三郎」19時より(2時間ぐらい)。

”京終さろん”は、奈良の歴史や伝統産業・芸能文化を学ぶグループ活動。こちらは、奈良市のお寺・璉珹寺(西紀寺町45)の本堂で開かれているのだが、ここに入れるのは30人くらいかな。でも、ツイキャスで配信している。(有料1000円)
チケット購入は、リンク先から入ってほしい。視聴期限は、2024年5月2日(木) 23:59 まである。

私も、久々に土倉庄三郎について話せるので、気合を入れている(^_^) 。吉野林業から土倉家の盛衰までをたっぷり語りたい。

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乞う、ご参加。

2024/04/12

「傍聴席を埋める」ことの意義

本日の朝ドラ「虎に翼」は、序盤の白眉と言えるだろう。

明治民法の下では勝ち目のない裁判と思われた、離婚係争中の事物の返還訴訟。そこに女子法学生が大挙して傍聴に行くと、裁判官は悩んだ末に、判決で被告の「権利の濫用」を持ち出して返還させた……。

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もちろん公的には、「傍聴席に誰が座ろうと、人数がどれだけいようと、それで判決が変わるわけがない」。しかし、裁判官の心証に影響を与える場合もあることは公然と語られる。

実は、私も聞いている。行政裁判の傍聴をしたのだが、その前に原告側の弁護士は、「傍聴席を満員に!」と訴えていた。常に傍聴する人がいることで、裁判官もその裁判内容が注目を集めていることを意識させるという作戦なのだ。意識すれば、“気軽な”判決は出せない。それは微妙に法律の解釈に影響を与える。裁判官も人の子、世間の評判を気にする。

私は法学の素人だが、「法律とは自分なりに解釈するもの」「法廷に正解というものはない」とは聞きかじっている。一般人が思っているような「正義かどうか」を示したり「違法と合法の線引き」をしてくれるものではない。それは人が「解釈」し「運用」するものであり、それゆえ人の感性・感情に左右されがちなものでもある。
そして、警察も裁判も、注目されないゆえに法律の表面をなぞるだけの決定・判決を出す「形式主義」が横行していることを思い知った。

なさけないことに、奈良県の知事は弁護士でもあるが、この形式主義が大好きらしい。今も防災基地用として購入した奈良県の土地をメガソーラーにする用途変更を「違法ではない」と自慢げだ。土地売買の際の契約書には「疑義のある場合は協議する」とあるが、そんなものに効力はないと得意気にテレビで語る。これは「法の支配」ではなく「法による支配」ではないか。

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そのことを強く意識したのは、『盗伐 林業現場からの警鐘』を執筆するために(付け刃的に)司法の現場に触れたときであった。世の中の裁判や、警察の捜査は、こうした次元で行われているのだ。それが意図的な盗伐であることは誰が見ても間違いないのに、法的には「証明できない」から誤伐扱いする。だから盗伐は横行する。

森林だ、林業だと言っても、実はそうした人の感情で世の中を俯瞰すべきなのかもしれない。

 

2024/04/11

山村で消える店、新たに誕生した店

先日、十津川村まで日帰りした。

かつては車を飛ばして片道4時間はかかる“秘境”だったのだが、紀伊半島大水害後、道が川の上をまっすぐに引かれて、トンネルもたくさん掘られて、なんだか高速道路のようになった。おかげで今では3時間を切る程度で役場まで到達できる。

ただ、4時間かけて通った時代は、まだバブルの名残もあって、沿線に多くの店や資料館などか観光施設があった。村おこしが盛んだったのだ。歴史や産直物などを扱い、また名物料理を売り物にしていた。

それが今の時代、軒並み閉店している。斬新なデザインだったり奇抜な?テーマで村おこし施設を建てたものの、利用者が伸び悩み維持費が高くつくようになったのだろう。山村で農産物もそんなにつくれないのに店を開いても、村外の品ばかり並ぶようになる。すると客も買わなくなる……そんな展開が読める。

昔ながらの店は命脈を保つのは難しい。もちろん道を真っ直ぐに引き直すと、店のあった沿線は旧道となり、寄られなくなる点もあるだろう。何より、人口減に加え、観光の流行もどんどん変わるのだ。

地域起こしの難しさは、ここにある。とくに観光に頼った策は、移り行く流行と戦い、適応しなくてはならない。

そんなときに見つけた店。

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蕎麦処 風庵。古民家風ではあるが、新しいそば屋だった。

なかなか本格的な蕎麦とてんぷらの香りが鼻を刺激する。店内からの景色もいい。

店や施設が消えるばかりではなくて、新たにできたのは有り難い。途中に寄れる店が少なくなったのだ。実際、流行っている。

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季節の定食。シメジご飯と野菜天ぷらほか一品。そして蕎麦そのものを味わうかけそば。当日は、少し肌寒かったのでかけそばにしたが、ざるでも食べてみたい。

おいしゅうございました。軽く昼食をいただくというにはもったいない本格派の店であった。観光ではなく、お仕事の途中の食事としては、多少、お高くついたが(^^;)。

2024/04/10

書店初確認!『盗伐 林業現場からの警鐘』

盗伐 林業現場からの警鐘』発行から約1週間が経ったのだが、実は、まだ書店で実物を確認していなかった。

なかなか書店に行けない……というか、身近に書店が減ってしまったこともある。

昨日、十津川村まで出かけたのだが、その帰りに休憩を兼ねてイオンモール橿原に寄った。ここで食事をしようと思ったのだが、もう一つはやはりこのモールに書店があること。ここに入っていたのは、喜久屋書店である。一応全国チェーンのはず。

そこで探してみると……ありました(^_^) 。

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ん? あるのだけど……扉を見せてくれているのだけど……背表紙も2冊並んでいるのだけど……ちょっと奥に引っ込んでいる(^^;)。なんだか暗がりに潜んでいるイメージ。『絶望の林業』と並べているのは、なかなか書店士、内容をわかっていると感心したのだが。

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うーん、惜しい。前に出せないか……と思いつつも、さすがに勝手に棚をいじってては怒られるだろうなあ。もう少し冊数があれば前へ飛び出すのだが。しかし背表紙2冊を移すわけにもいかないし。

ちなみに、別の平積みコーナー。

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こちらには『山林王』が山積みでしたよ! やはり土倉庄三郎は奈良で売れている! 奈良では売れている……。

なお、『盗伐 林業現場からの警鐘』は、楽天市場の「林業・水産業ランキング」で週間3位であった。

2024/04/09

桜はいずこ

裏山の道とも言えない森の中を歩いているとき。

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この地面の白い斑点にお気づきか。

そう花びら。桜の花びらだ。周りに桜樹は目に入らないが、たしかに桜の花が咲いて、それが散りかけている。

よくよく見れば、この写真にふわふわ待っているゆ雪ならぬ花びらが写っている……はずなのだけど、見つかるかな。

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今年はソメイヨシノとヤマザクラが同時に咲くような天候だが、生駒山中には、意外なほどヤマザクラがあるようだ。花の色だけ目立つ。

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そして、森の中に入ると桜樹は見えなくなるけれど、こうして花が散る際に痕跡を見せてくれる。

 

 

 

 

2024/04/08

庭の雑草の正体

さすが春である。庭に雑草が繁りだした。ただ可愛い花を咲かせるものも多い。

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みなさん、名前はわかるだろうか。

まずヒメオドリコソウ。次にムスカリ。そしてハナニラ。これらの共通点は……そう、全部外来種であること。順にヨーロッパ原産に南西アジア原産、アルゼンチン原産だ。そして園芸品種化していることだろう。こんなの植えた記憶はないのに、勝手に生えてきた。ほかにもスミレの類も咲いているが、スミレはどれが在来種でどれが外来種か区別がつかない。なおハナニラは、食用の花ニラとは別種。こちらは毒がある。美しいだけでなく、非常に繁殖力がある。

よく見ると、庭から出て街路樹の根元とか、ちょっとした石垣などにも咲いている。また季節は違うのでまだ花は咲いていないが、あきらかな外来種も目立つ。

もはや根付いたと言えるので、駆除は無理だろう。園芸品種も折り込み済みの生態系が出来上がっていくのだろうな。

2024/04/07

G空間情報のオープンデータ化!

あまり目立たないが、今年度より森林情報のオープンデータ化が全国規模で始まる。

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林野庁は2024年度から、都道府県が持つ森林資源や地形情報のオープンデータ化を支援事業を始める。民間企業が技術開発や森林投資に前向きになることを狙っているようだ。情報提供のプラットフォームの整備も検討しているとか。

具体的には、自治体などが行う航空レーザー計測による森林情報(森林の標高や傾斜、樹種など)を国や自治体、企業などが所有する地理空間情報を提供している「G空間情報センター」に掲載する。こういう組織があったのだね。Gとあると、ついゴキブリ?いやゴジラだ!と反応してしまうのは、頭がおじさん化しているのだろう。。。。

実は,昨年10月から森林データが比較的整備されている栃木、兵庫、高知の情報をモデル的にG空間情報センターに公開していたそうだ。すると企業や個人が閲覧している傾向が強く、地域別では東京都や大阪府からのアクセスが多かったという。つまり利用したい人・機関はわりといるのだ。

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イメージ的には、こんなことができるようになる。森林情報だけでなく、さまざまなデータも組み込みそうだから、面白そうだ。まあ、私が何か使えるかと言われれば困るのたが。

 

2024/04/06

新カフェとフキ群落発見!

久しぶりに身体を動かそうと山歩き。例によって脱線もあったのだが、とにかく宝山寺参道にたどり着く。

参道の少し脇に入ったところで見つけたのが、小さなチラシのような看板にあった「ケヤキの森Cafe」。さらによく読むと「4月6日オープン」とな。つまり本日開店というわけだ。ならば行かねばなるまい。道から地道の階段を少し下って、城山旅館の裏というべきか。

そこに隠れるようにカフェはあったのだ。迎えてくれたマスターによると、本日開店で私が客第一号(笑)。もう午後3時を回っていて、閉店間近ではないか。そりゃ、宣伝不足だって。
「私一人で始めたので、客がたくさん来たら応対できないと思って」とは。もったいない。

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室内もあるが、ほぼテラス席。奈良盆地を見渡せる立地だ。何より驚いたのが、そこにあった巨大なモクレン。見事な花が満開だったのだ。

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これはすごい。外からはほとんど見えないのが惜しい。これを名物にしたらよいのに、と思ったが、花はいつまで咲くだろう。なにしろオープンは土曜日と祝日だけというのだ……。ということは、実質、次の土曜日しかチャンスがないのかもしれない。

ほかにもしだれ桜なども咲いて、なかなか花一杯であった。ただケヤキはまだ葉が出ていない。こちらは5月前に新緑が美しいだろう。そのときは、ケヤキの木の下で、ピアノコンサートを行うのだそう。

私は、もう一つ見つけた。

テラスの下にフキが繁っていたのだ。「フキノトウ、取ってもいいですよ」と言うので探す。さすがにこの季節、伸びすぎが数本見つけた程度に終わったが、「庭に植えたいからフキを少し掘らせてください」と頼んでみた。そしてスコップと袋まで借りて、フキの根株を堀りとる。

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これを庭に植えて、庭にフキを繁らせる。そしてフキノトウを自給するのだ。(^_^) ウフフ

そういやメニューはドリンク類が並ぶが、フード類も開発中みたい。予約すると、バーベキューもできる。城山旅館のジビエ料理も出せるとか。

その他にも参道には新しい店がいっぱい。知らないうちに増えている。これは価値あるかも。

 

2024/04/05

『盗伐 林業現場からの警鐘』の売行き

Amazonを見ると、4月4日時点で「環境問題」カテゴリー15位だった。4月2日にAmazonで販売開始、書店でも同時期に並んだと考えると、これぐらいが実質最初の売行き評価だろう。

『盗伐 林業現場からの警鐘』

まあまあのスタートだろうか。ただし、かなり激しく上下するので、あまり順位は当てにならない。数時間単位で乱高下するみたい。15位は昼頃で、午後5時に見たら11位だった。

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この環境問題カテゴリーというのが厄介。なかには地震や気候予報士のテキストまで含まれているのだから。正直、環境分野ではないと思う。農林水産業とか、社会、犯罪に分類してくれないか。

ちなみに『絶望の林業』はノンフィクション部門だったし、ほかにも文学評論とか人文思想、環境保護といろいろで、私の本が含まれるカテゴリーはいつも違う。『フィンランド 虚像の森』はエコロジー。環境とエコロジーをどのように分けているのか。比べない方がいいか。

 

2024/04/04

合法木材に関する法令のパプコメ募集中

こういうパプコメ募集があった。

合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律第三章に規定する木材関連事業者による合法性の確認等の実施等に関する省令案等についての意見・情報の募集について

これってようするにクリーンウッド法改正に関するものだね。

締切りが4月24日23時59分だというから、あまり日数はないが、しっかり意見を書き込むのもよいかもしれない。

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ただ、私の気分が萎えるのは、「違法」という言葉がなかなか見つからないこと。違法伐採、違法木材とは書いていない。あくまで合法性確認木材なのである。かろうじて基本方針の改正案のところに「木材関連事業者は、違法伐採に係る木材等を利用しないようにするため」とある程度。

私の見落としかもしれないが、慎重に「違法」という言葉を避けたように感じてしまう。

「違法」だとすると、当然ながらケシカランこととなり取り締まらなくてはならないが、「合法」の促進と言えば、ある種のキャペーンみたいなものになる。掛け声だけみたいだ。しかし、「合法」を促進しなければならないというのは、現在「違法」なものが出回っていることではないのかね?

そして国産材を対象にしているように感じさせる部分もあまり見つからない。なんとなく輸入材だけに思わせているように読めてしまう。

そもそもパブコメを募集しても、それをいかに反映させるのかもピンと来ない。これもセレモニーなのだろう。

2024/04/03

環境負荷低減の農産物ラベル

今年3月から、このような試みがスタートしていたらしい。

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こんなラベルが張られている農産物が23品目あって、評価を受けて合格したらこのような3段階のラベルを張るというもの。いわゆる「環境負荷低減の取組の見える化」である。23品目とは、トマト、キュウリ、ミニトマト、なす、ほうれんそう、白ねぎ、たまねぎ、はくさい、ばれいしょ、かんしょ、キャベツ、レタス、だいこん、にんじん、アスパラガス、りんご、みかん、ぶどう、日本なし、もも、いちご、茶

どのような項目を評価するかについては、以下のサイトに評価表示ガイドラインが載っているから見てくれ。結構な分量だが、なかなか面白い。

環境負荷低減の取組の「見える化」の本格運用がスタートします!

化学肥料や農薬などの使用量データを基に、地域特性を踏まえ、 温室効果ガスの削減量を算定。コメについては温室効果ガスに加え、「生物多様性保全」の指標も表示できる。もちろん、難問は一杯会って、こちらを立てればあちらが立たず、の状態でもある。温室効果ガスを減らせば、生物多様性が減るケースも出てくるからだ。

しかし、だねえ。本当に気候変動や生物多様性に関わる環境負荷を行うなら、まずは森林。そして産物としては木材だろうに。農薬はともかく林業機械に始まり、地域に対する伐採本数や林床の扱い方、そして木材加工のあり方まで、山ほどガイドラインは必要だろう。

農家の方が意識高い系かどうかはともかく、とりあえず農業は始めたのだから、次は林業、水産業だと思うな。でも……そんな人材がいるかと思うと……はあ~。林業家や製材業者では、誰もラベルを求めない光景が目に浮かぶ。

2024/04/02

司法を支配するもの

NHK朝ドラ『虎に翼』が始まった。日本で最初に弁護士、そして裁判官になった女性が主人公である。

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主役を務める伊藤沙莉はわりと好きだから、しばらく見てみようと思っているが……多分だが、こうした司法関係のドラマ(刑事もの、弁護士もの、検察もの、裁判もの……)の根底には、法の支配(法治主義)に関する信頼があるのだなあ、と思う。被害者、被差別者、あるいは加害者に対しても法律は平等に裁くという、一定の納得感がなければ成立しない。

先日訪れた東京では、元検事に会った。そこで聞いた裁判の実際。

たとえば原告や被告が陳述している際、裁判官がペンを動かしている光景を目にすることがある。当然、何かメモを取っているように見えるのだが……何も書いていないそうである。
また書類をめくっているときもあるが、これは陳述書などではなく、単に期日表を眺めているだけ。次の公判、いつにしようかな……と思っているそうである。

そもそも陳述内容は文面にして提出されるので、メモをとる必要がない。何かしているように見せるためペンや書類をいじるだけ。

 

ドラマのような原告・被告の検事や弁護士が丁々発止に質問、追及を発することもまずない。片方が陳述したら、その反論は文書にして出す。それも2カ月後ぐらい。

「裁判はセレモニーだから。開かなくても双方の文書を読んで判決を考えるだけ」。

法の元の平等とか、法の支配というのは建前である。いや、たしかに法の支配はあるのだが、その前段としての警察や検察、そして裁判所は人によって運営されているわけであり、どの案件を捜査するか、立件するか、判決を下すかは、担当者の胸先三寸なのだ。

自分の嫌な案件は、取り上げない。面倒な案件、苦手な案件もそう。いくら被害者だって、その態度が気に食わないと取り上げない。判決も不利に傾く。さらに思想信条も加わることもある。自由主義者、リベラルなどは嫌われる。労働組合内部で起きた窃盗事件を警察に届け出ても、警察は動かなかったケースも他所で聞いた。

そこに人間関係も関わる。上司が嫌う案件はなるべくやらない。とくに警察や検察は、組織で動くから上司が方針を決めたら、そのとおりに動く。あいつを犯人にしろ、と言われたら、そのまま突っ走る。反対もそう。判事の場合は個々に独立しているように見えるが、やはり上司が嫌う判決を出せば出世できないし、転勤させられる。上司に睨まれて定年まで数年ごとに全国を彷徨させられるかと思えば気が滅入るだろう。そこに忖度が生まれる。

 

そこでは「法の支配」の前の「人の支配」がある。法律なんて、司法関係の人間の解釈で、なんとでも動かせる。それが進むと「法による支配」になる。人が法律を好きなように運用して支配する社会になりかねない。恣意的な法律の運用で冤罪を起こす心配もあるが、それ以上に裁かないケースの方が圧倒的に多く、またそれは問題にならないだろう。

この元検事に盗伐問題の現状について聞いてみた。すると、先に土地の境界線を確定しているかどうかなどを読んで、無駄と思ったら扱わないそうだ。いや、地籍調査も済んだ山なんだよ、というと、「面倒くさいのはやらないな」。

私が『盗伐 林業現場からの警鐘』を執筆してもっとも勉強になったのは、こうした司法の仕組みであった。絶望の裁判所、絶望の警察がそこに横たわっていた。

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2024/04/01

フォレストジャーナル記事2本の秘密

フォレストジャーナル19号が発刊された。

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ネットで読みたい人は、こちらから。もちろん紙版もある(無料)から、ほしい人は申し込んで欲しい。

そこに今回は、2本も記事を書いた。連載の「希望の林業」だけでなく、能登半島地震と林業についても記す。

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林業カードゲームの紹介などマニアックなことを取り上げたが、注目してほしいのは、筆者、つまり私の紹介欄だ。

「希望の林業」では、こんな形で。

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どうだ。さっそく『盗伐 林業現場からの警鐘』の紹介である(^_^) 。そして能登半島記事には。

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『山林王』を残した。なかなかの配慮である(笑)。ちなみに右肩にある「もりラバー林業女子@石川」とは、本文記事とのつながりであって、私とは関係ない。あ、取材はしたか。

フォレストジャーナルはフリーペーパーで、林業関係の広告で成り立っているが、しっかり盗伐記事を書かせてくれる。地震被害のようなジャーナリスティックな記事も扱う。その点が、ほかの(有料の)林業雑誌と違う。なかなか懐が広いのである。

 

 

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