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2024/04/02

司法を支配するもの

NHK朝ドラ『虎に翼』が始まった。日本で最初に弁護士、そして裁判官になった女性が主人公である。

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主役を務める伊藤沙莉はわりと好きだから、しばらく見てみようと思っているが……多分だが、こうした司法関係のドラマ(刑事もの、弁護士もの、検察もの、裁判もの……)の根底には、法の支配(法治主義)に関する信頼があるのだなあ、と思う。被害者、被差別者、あるいは加害者に対しても法律は平等に裁くという、一定の納得感がなければ成立しない。

先日訪れた東京では、元検事に会った。そこで聞いた裁判の実際。

たとえば原告や被告が陳述している際、裁判官がペンを動かしている光景を目にすることがある。当然、何かメモを取っているように見えるのだが……何も書いていないそうである。
また書類をめくっているときもあるが、これは陳述書などではなく、単に期日表を眺めているだけ。次の公判、いつにしようかな……と思っているそうである。

そもそも陳述内容は文面にして提出されるので、メモをとる必要がない。何かしているように見せるためペンや書類をいじるだけ。

 

ドラマのような原告・被告の検事や弁護士が丁々発止に質問、追及を発することもまずない。片方が陳述したら、その反論は文書にして出す。それも2カ月後ぐらい。

「裁判はセレモニーだから。開かなくても双方の文書を読んで判決を考えるだけ」。

法の元の平等とか、法の支配というのは建前である。いや、たしかに法の支配はあるのだが、その前段としての警察や検察、そして裁判所は人によって運営されているわけであり、どの案件を捜査するか、立件するか、判決を下すかは、担当者の胸先三寸なのだ。

自分の嫌な案件は、取り上げない。面倒な案件、苦手な案件もそう。いくら被害者だって、その態度が気に食わないと取り上げない。判決も不利に傾く。さらに思想信条も加わることもある。自由主義者、リベラルなどは嫌われる。労働組合内部で起きた窃盗事件を警察に届け出ても、警察は動かなかったケースも他所で聞いた。

そこに人間関係も関わる。上司が嫌う案件はなるべくやらない。とくに警察や検察は、組織で動くから上司が方針を決めたら、そのとおりに動く。あいつを犯人にしろ、と言われたら、そのまま突っ走る。反対もそう。判事の場合は個々に独立しているように見えるが、やはり上司が嫌う判決を出せば出世できないし、転勤させられる。上司に睨まれて定年まで数年ごとに全国を彷徨させられるかと思えば気が滅入るだろう。そこに忖度が生まれる。

 

そこでは「法の支配」の前の「人の支配」がある。法律なんて、司法関係の人間の解釈で、なんとでも動かせる。それが進むと「法による支配」になる。人が法律を好きなように運用して支配する社会になりかねない。恣意的な法律の運用で冤罪を起こす心配もあるが、それ以上に裁かないケースの方が圧倒的に多く、またそれは問題にならないだろう。

この元検事に盗伐問題の現状について聞いてみた。すると、先に土地の境界線を確定しているかどうかなどを読んで、無駄と思ったら扱わないそうだ。いや、地籍調査も済んだ山なんだよ、というと、「面倒くさいのはやらないな」。

私が『盗伐 林業現場からの警鐘』を執筆してもっとも勉強になったのは、こうした司法の仕組みであった。絶望の裁判所、絶望の警察がそこに横たわっていた。

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