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森と林業と動物の本

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2024/04/23

自然共生サイトを見に行く

自然共生サイトを知っているだろうか。

本ブログでは折々に紹介しているが、ようするにネイチャーポジティブ戦略の一環で、国際公約の30by30(陸海の各々30%を生物多様性の高い地域として2030年までに指定する)ために設けられたものだ。従来の法的な裏付けのある保護区では10~20%しか指定していないから、民間の土地なども法律抜きで指定していこうという作戦だ。

すでに昨年度に185カ所指定したというのだが、奈良県では1カ所、王寺町の「陽楽の森」一カ所。ここは谷林業が持つ市街地内の里山である。周りは住宅地などに囲まれている約10ヘクタールぐらいの土地で、雑木林になっている。そこを見に行ってきた。

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どんな条件をクリアしたら認定を受けるのか聞いたのだが、意外と曖昧で、とくに生物多様性があることを示す調査が必要なわけではないらしい。むしろ位置や地形、区域、所有者……などを示す書類が必要になる。また自然を管理する活動なども重要としている。

「陽楽の森」は、さまざまなイベントを開いたり、市民の憩いの場として機能していることから選ばれたらしい。見ての通り、ツリーハウスもつくったし、今度はここにカフェなどをオープンする計画も進んでいる。

一応、条件を調べてみた。

「自然共生サイト」認定の令和5年度後期申請受付開始について

ここに各項目の添付資料がある。いくつか抜き出すと……。

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2_20240423204101

こうやって見ると、やっぱりてんこ盛りの書類が必要になる(^_^) 。

それに、現時点では認定されたからと言って、何か特典があるわけではない。せいぜい、認定を受けたことを利用して寄付を集めることだろう。ただし、近く環境省は、固定資産税の減免などの特典を賦与する予定だ。まあ、山林などの税金は安いから、金額的にはたいしたことはないだろうが、それでも一つの目安になる。林業家、山主が、木材以外に「生物多様性という商品」を持つことを示すことは重要だ。

これを進めれば、自然を破壊する開発行為に対して、穴埋めとなる自然を提供する形の「生物多様性クレジット」に発展させられるかもしれない。すでにイングランドでは、開発したら、そこの自然の10%増の自然を別の場所に作らなくてはならないというネットゲイン政策が発動されている。これが日本にも広がるかもしれない。

特典のない今の間に認定を取得することは、先駆者としての地位が得られるだろう。

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