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森と林業と田舎の本

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2024/04/16

森を金に換える「生物多様性クレジット」

放置林が増えている理由は、1にも2にも森から利益を得られないからだろう。だから所有者は、森を管理する意欲を失う。

ここで利益を得るというのは、日本ではほとんど「木材生産」しか頭にない。木材価格が下がり、需要も落ちているし、木材として使うには数十年も育てなくてはならない。だから、期待できないのは仕方ないだろう。

そこで新たな森の活用法を見つけなくてはならないのだが……一部にキャンプ場などもあるが、最近注目されているのが、Jクレジット(カーボンクレジット)。つまり二酸化炭素の排出権取引であり、森が吸収する二酸化炭素を商品とする考え方。日本では低調だが、上手くすれば金になる。考え方としては、かなり広まった。

私は、もう一つの考え方として、生物多様性を金に換えるシステムが広まらないかと思っている。

その一つが、環境省が売り出し中の「自然共生サイト」。30by30、つまり陸海の30%を2030年までに保全するという国際公約を達成するために、生物が多様な民間の土地を認定する政策だ。

基本的に一斉林で行う林業地には関係ないように思えるが、そうでもない。ある程度大きな面積の森林所有者の場合、すべてをスギやヒノキの人工林に変えているわけではなく、一部、たとえば1~2割は天然林であることが多い。河畔や尾根筋などに広葉樹を残した森がある。そこを自然共生サイトに指定してもらえないだろうか。

今のところは、指定されてもイメージ向上にしかならないが、近く環境省は税制を変えて固定資産税や相続税などで優遇措置を設ける予定だ。そうなると、面積によってはそこそこの金が浮く。

Photo_20240416151701環境省サイトより

あるいは林業を続ける気持ちのない山主が、そのまま放置するのではなく、その山で自然再生活動をすると、その活動を認定する制度がつくられた。これは2025年度から施行されるが、そうすると認定証を発行されて、企業などから寄付を受けられる。再生が上手くいって、生物多様性をキープできるようになれば、それを自然共生サイトに認定される可能性が高まる。

こうした自然を守る活動と、その結果生まれた自然豊かな土地をクレジットにして、どこかの開発計画(自然破壊行為)と相殺する。その代わり開発計画者は、自然保全者に金を払う。これがクレジットだ。

これが「生物多様性クレジット」である。

Photo_20240416151702福島県サイトより

国は3月末に「ネイチャーポジティブ経済移行戦略」を発表した。生物多様性を増やす(ネイチャーポジティブ)ことを経済活動につなげる戦略だ。企業や金融機関、消費者の行動を変えて自然を保全する経済に移行するビジョンと道筋を示した。環境省の言葉によると「自然への対応が、企業の株価向上や株価純資産倍率(PBR)改善につながる」。

すでに世界的には「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)」の枠組みがある。ようするに自然への対応を情報開示し、ESG投資を呼び込む発想だ。これで株価向上も狙うのだ。

木材生産だけではなく、二酸化炭素吸収と生物多様性創生の2本柱で森から金を稼げたら、これも新たな林業、環境林業にならないかね。

 

 

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コメント

自然共生サイト認定地は企業のCSR活動とかNPOの里山再生とかがほとんどのような感じですが、林業地の認定サイトもあるみたいです
全部で百何十件もあるので全部はわからないですが、大台町のトヨタ自動車、徳島県の自伐型協会の方の個人山林、日田市の田島山業とかは林業地のようです

自然共生には、わりと林業家の土地が認定されていますよ。その場所がどんな植生なのかまでは記されていないのですが、里山か、天然林か、湿地なのか、それなりの自然があるのでしょう。
田島山業は、私が勧めたからかな。

既存制度(Jクレジットなど)と生物多様性クレジットの二重計上問題もありますが、それ以前に、定量的・客観的に生物多様性への貢献度を評価する手法が明確に出来るかどうか、まだまだ時間が掛かりそうですね。

他にもあるんですね、認定サイト情報を見ても林業家の山林なのかなかなか判別がつかないのですが、環境省の事業なんだからそんな情報まで載らないのも当たり前でしょうか

気になるのはもう一方で話題の盗伐ですね
知らない間に誰かに樹を伐られて森を失っても共生サイトの認定は剥奪されちゃうんでしょうか

自然共生サイト産の木材が消費者に選ばれるようになったり、そのために産地表示や産地追跡が厳格化されたり、希望のある方向に作用すると良いですね

認定基準は気になるところですが、あまり手続を厳しくすると希望者が出ない。Jクレジットもそうですね。(今頃緩めていますが。)
一方で法的な保全ではないので、所有者が心変わりしたら認定を外せます。盗伐などにあって自然破壊されれば外れる可能性もありますが、そもそも生物多様性の高い森(雑木林、混交林)はあまり盗伐対象にはなりにくいはず。
細かな規定や運用は、今後に待たないといけませんが、新たな林業の潮流をつくってほしいところです。

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