「vesta」の養蜂と蜂蜜の特集記事
「vesta」という雑誌(季刊誌)があった。その春号の特集が「ミツバチとハチミツの食文化」。
思わず取り寄せてみた。
これは面白い! 失礼ながら雑誌の特集記事の範疇を超えて“読みやすい研究紀要”レベルではないか。
まだ全部読んだわけではないが、興味深いテーマと記述が多数ある。とくに驚いたのは、日本の養蜂とニホンミツバチの起源に関する新説。
なんと、ニホンミツバチは、430年前(安土桃山時代?)に朝鮮半島から渡来した種の可能性があるらしい。逆に言えば日本の在来種ではなかった! なんだ、外来種か(笑)。 歴史もそんなに古くないことになる。
しかし、日本書紀に百済人が三輪山で養蜂に挑戦したが失敗したという記述もあり、その後も各時代に蜂蜜を味わった記録もあるではないか。また平城宮跡からの木簡にも蜜の記述がある。養蜂は奈良が起源だ( ̄^ ̄)、と私は主張していたのに。
ところが、当時の蜜とは甘味料を指していた可能性があってハチミツとは限らないらしい。しかも輸入ハチミツが少なくなかったから、日本で採取していたとは限らないらしい。輸入していたのだ。鑑真も大量のハチミツを運んでいた記録もあるらしい。国内で多少の採取はしたとしても、量は少ないし、マルハナバチの蜜の多能性もあるとか。
そもそもニホンミツバチも、トウヨウミツバチの亜種で朝鮮半島の種と区別はほぼつかないのだから、固有種のように語るのは無理だ。
もう一つ気になるのは、ドイツの養蜂の歴史。実はヨーロッパはの林業の歴史を調べているとハチミツの採取が出てきて、養蜂とハチミツ採取も林業であり林産物に含まれると感じていた。どうやらフォレスターが養蜂を行う権利があった時代もあるらしい。日本でも、林業家が養蜂を行ってもいいのではないか。広葉樹林業と抱き合わせで収入源にできる。
さらに「偽ハチミツを探せ!」記事も面白い。私も、ハチミツには偽物が多いことを感じていたが、単純に産地や花蜜の種類を偽るものから、そもそもハチミツではなくて砂糖液を混ぜたものもあるとういう。最近では輸入物をニホンミツバチの蜜と偽って、2倍以上の価格で売るケースもある。ニホンミツバチの蜜と聞いたら希少で、美味しいと思う人がいるらしい。
セイヨウミツバチとニホンミツバチの蜜の差とは、一種類の花から蜜を集めるか、多数の花の蜜を混ぜてしまうかの差。シングルモルトとブレンディッドウイスキーの差みたいなもんだと思えば、セイヨウミツバチのシングルモルトの方が高くあるべきではないか(笑)。
そして、やはりミツバチのポリネーター(花粉媒介者)としての生物多様性への寄与も重要だろう。私は、植物進化にポリネーターの登場が関わるのではないかと想像している。
ともあれ、養蜂ジャーナリスト見習いとしては、興味深い特集であった。これ読んで、付け刃知識でエラそうにミツバチについて語ろうかな。
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私も以前ふるさと納税で九州の国産蜂蜜をいただいたことがありますが、砂糖の味がする蜂蜜でした。そこはふるさと納税で多くの実積があるようでしたが、後に利用者のコメントを読むと、同様の感想が出ていました。
考えてみれば多くの注文に対応するには、一つの養蜂園ではまかないきれませんよね。
その後和歌山のみかん密をいただいていますが、こちらはすぐに凍ってしまい、溶かすのが大変です。(^o^ゞ
投稿: lago | 2024/04/23 23:29
国産蜂蜜なんて、供給量の数%しかありませんから、大量注文に応えるには輸入物である確率が限りなく高いですね。
そして中国産の場合は、砂糖や果糖ブドウ糖、水飴などを混ぜられていることが多い。そもそも自分で養蜂をやっていない養蜂園もありますから。
私も、地元の養蜂園から購入しますが、こちらは巣箱のある場所まで知っているので信頼しています。(私も採取を手伝ったことがあります。)
投稿: 田中淳夫 | 2024/04/24 09:14