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森と林業の本

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2024/05/21

フランスでも盗伐が増加する事情

昨日紹介した『広葉樹の国フランス』であるが、本書を読んで気になる点を。

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現在、盗伐件数は日仏ともに増加傾向にある。」「日仏ともに、盗伐への対処はこれからが正念場だろう。」とある記述だ。

フランスでも?  拙著『盗伐 林業現場からの警鐘』で取り上げたヨーロッパの盗伐は、主に旧東欧諸国が舞台だった。ドイツやフィンランドでも起きていること、東欧諸国の盗伐材をロンダリングして扱うのが西欧(オーストリアなど)だと触れてはいるが、フランスは情報がなかった。

やはりというか、どこの国でも盗伐は起きているのだ。なおフランスの盗伐は、海外州で起きている可能性もある。そしてEUTRやEUDRといったEUの違法伐採禁止規則とは別に、木材合法性証明システム(SVLK)を発効しているそうだ。こちらは知らなかった。

ちなみに『広葉樹の国フランス』の著者は、門脇仁氏。彼は、昨年『樹盗-森は誰のものか』を翻訳している。アメリカの盗伐事情のルポだ。そして私が書評を書いたのだが、それが『盗伐 林業現場からの警鐘』執筆の動機の一つにもなっている。これらの本は連鎖しているのだ。

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ちなみに私が書いた『樹盗』書評。後半は、日本でも盗伐が相次いでいることに触れているが、アメリカの「森を愛する盗伐者」とは次元の違う醜さを臭わせている。

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もはや盗伐は世界的問題として拡散している。それも発展途上国だけではないのだ。

その理由を探るのは難しいが、私はラートカウの『木材と文明』がヒントになりそうに思う。本書は、ヨーロッパを中心に文明が進むとともに木材需要が膨らみ乱伐を招いたこと、保護策が広がってきた歴史的状況を描いているが、最終的にヨーロッパの森林が復活しつつあることや、再び木材は環境的にも優しいマテリアルとして注目を浴びていることに触れていた。

まさに日本と似た事情なのだが、需要が膨らめば、違法に伐採する圧力も増すわけだ。だから、細心の注意と監視網を築かないといけないのに、抜け穴だらけのまま「木材を使おう!」と騒いでいると盗伐が増えるのである。脱炭素、生物多様性を唱えて、その最たるものとしての森林や木材に注目が集まると、森林が破壊される皮肉も感じてほしい。

 

追記・サイドバーに各書を追加しました。

 

 

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