朝ドラ5本から情報資源のリサイクルを考える
このところテレビ界はNHKの朝ドラに席巻されているのではないか。何しろ週に5本も放映されているのだ。
なになに、「虎に翼」が月~金で5本だって? そうじゃない、5種類の朝ドラがあるというのだ。
「虎に翼」の説明はいらないとして、朝7時15分からNHKBSで「オードリー」をやっているのも知っているだろう。映画全盛期から没落期が舞台だが、朝起きてテレビをつけると、たいていBSに合わせているのでたまに見てしまう。
昼の12時半からは総合で「ちゅらさん」の再放送。土曜日まで入れて週6回だ。沖縄の空気感がいい。国仲涼子もいい。我が家も買ったゴーヤーマンはどこにあるか探さねばならん。
これで終わらない。月曜日の7時からは、BS12で「ゲゲゲの女房」だ。2時間で6本やっちゃう。水木しげるとその奥さんの、どん底の貧乏から引っ張りだこの人気漫画家へ。貸本漫画から週刊マンガ誌へ。テレビアニメの放映開始時代でもある。そうした漫画発展史をなぞられる。
まだまだ。火曜日の夕方6時からBS11で「なつぞら」。これはアニメ創成期を舞台にしている……というが、実は前半は戦災孤児から北海道開拓の話。北海道の大自然がいつもバックに、酪農、高校演劇、農協運動、農民画家。終戦直後ならではの社会の熱さがある。いよいよ舞台は後半で漫画映画界へと移り、宮崎駿に相当する人物も出てくる。なんにせよ新たな世界を切り開く話は胸に染みる。
これで5種類5本。もちろん全部見ているわけではないが、不思議とちょうどテレビをつける時間に放映している。
ここで朝ドラの評論をするつもりはないが、民間のBS放送局が、NHKのコンテンツを重宝にしていることに注目した。自身でドラマ製作するのは無理だろう。金の面でもノウハウの面でも。だが、すでに評価の定まったコンテンツを買い取れば、一定の視聴率が見込めて有利である。
同じことはNHK自体も新番組を製作するより、再放送の方が視聴率を稼げるという判断ではないか。
もちろん再放送だけでなく、韓流ドラマや中国(大陸も台湾もあるようだ)ドラマの多用にも言える。以前は主流だったアメリカのドラマはあまり見かけなくなった。BSというメディアはたくさん開局したものの、放映するコンテンツ不足なのである。ついでに資金不足でもある。
まあ、いい加減な番組を作るよりよいかもしれない。これを情報資源のリサイクルと捉えている。
情報資源(コンテンツ)は、もっとリサイクルできないかと思っている。私の場合なら、新聞や雑誌に書いた記事は、短期間でメディアから消えていき、通常は振り返られることがない。しかし、自信作とか、すごく手間をかけた取材をした場合は、読み捨てられるのは残念だ。
幸いドラマなどは、再放映時に手を加えることはできないが、文字情報の記事は、できる。つまりリメイク記事である。
単純に同じことを書くのではなく、時代に合わせて視点を変える、事例を新しくする、文章構成も考え直す……そうすると別の記事になるのではないか。やり方次第で、元記事とは似ても似つかぬ別の記事に仕立てることも可能であり、テーマが同じ新作と変わらない。楽ちんだという面も否定はしないが(^^;)。
私は、文字であろうと映像であろうと、情報の伝達能力は極めて低いと感じていて、どんな名文であっても時間が経てば覚えているのは1~2割ぐらいだろう。その1~2割に根幹テーマが入っていればよいのだが、たまに外れて受け手(読者、視聴者)が覚えているのは、好み部分だけにもなる。
だから繰り返し、あの手この手で書き直し情報をリサイクルして繰り返し伝えることもアリだろう。私も改訂版のほか、新作版も多く出している。
『「森を守れ」が森を殺す!』と『「森を守れ」は森を殺す』(文庫版)と『日本人が知っておきたい森の新常識』
『里山再生』と『いま里山が必要な理由』
『ゴルフ場は自然がいっぱい』と『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』
『森と近代日本を動かした男』と『山林王』
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