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森と林業の本

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2024年6月

2024/06/30

生駒市の崩落現場

こんなことで生駒市が全国ニュースになるとは思わなかったのだが……先日の雨で生駒市内に山崩れが発生した。死傷者は出ていないが、住宅6棟の一部損壊のほか、近鉄電車のトンネル入り口に土砂が崩れ落ちたことから運転見合せが続いている。また周辺住民も含めて避難している。

地元民としては、やはり現場を見たい。土質や地形、そして植生などを確認したいと思った。

ちなみに崩れたのは、生駒山ではない。奈良盆地との間にある矢田丘陵である。高さはしれており、そんなに急傾斜でもないのだが……その点でも関心がある。

しかし、周辺は警備員が立っているうえに、通常の道路側からは見えない裏側である。そこで裏山に登ったが、木が繁りすぎ。かろうじて見えたのが、このブルーシートであった。

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そこで、いっそのこと対面の生駒山から見てみることにした。ここで望遠レンズが活躍する。

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一般人としては、ここまで。報道の腕章でもすれば近づけるだろうが、そこまではしない。

写真でわかるのは、崩れた場所はトンネルの真上とも言える場所ということ。私の知っている限りだが、こうしたトンネル開口部の真上は盛土であることが多い。トンネル工事後に開口部を成形するからだろう。その土砂が流れ出たと見た。

盛土は弱い、とステロタイプなことはいうつもりはない(盛土の方が強い場合もある)が、要注意箇所である。ちなみに植生は照葉樹の雑木林で、地質は風化した砂礫質の花崗岩。生駒山はもともと崩れやすい地質なのだ。

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生駒市ハザードマップも確認したが、ほぼ白紙で、危険個所とはされなかったのだろう。小さな赤部分はあるが、ここから大きく周辺を崩壊させたのだと思われる。

ようするに、誰も、どこが崩れるかなどわからんのだ。ちなみに我が家のあるところも山の中腹なのだが、地盤は硬い岩盤だし、周辺の地形から崩れても土砂の量はしれていて我が家までは届かないと見ている。もっとも深層崩壊でも起きたらアウトだろう。家ごととうより住宅地そのものが崩れかねない。

昔はよく崩れたのだ。それも裾野部分が。中腹より裾野が危険と感じる。我が家へ登る道が幾度か土砂に埋もれた。そんなときは登山靴を履いて山を下るのである。崩れた個所をかき分けて町に出る。

ちょうど、こんな案内が届いた。

間違いだらけの水害対策

動画はダイジェスト版だけ無料で見られるが、これはダイジェストというよりプロローグだろう。肝心の部分は伏せている。むしろ文字部分に概要が載っているから、一読をお勧めする。

(一部) われわれの水害に対する考え方を根本的に変えなければならないと谷氏は言う。まずは自然を相手にしている以上、水害を完全に根絶することはできないという事実を受け止め、少しでも被害を減らすために何を選択するかを河川管理者だけでなく流域の住民も含めて話し合うことが必要だと谷氏は言う。

2024/06/29

高粱酒にハマる

最近、高粱酒にハマっている。いわゆる中国の白酒の一種だ。

台湾から帰る際、空港で残っていた台湾元の現金でちょうど買えるものは何か探し、この「玉山高粱酒」を発見したのである。

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ただし、これはアルコール度数58度である。さすがに強烈すぎる。それでも恐る恐る、最初は、ストレートで味見してみた。

すると、意外や優しいのど越し。甘く、ちょっと癖のあるフルーティーな香り。これは美味い。

これまで私はジンを好んできたが、ジンもジュニパーベリーの香りが好きだったからだ。ちょっとほろ苦くもさわやかな香り(ただし、最近のクラフトジンは、なんとか特徴づけようとジュニパーベリーを減らして別のボタニカルを増やしたものが多くてちょっと残念)。だが、高粱酒の香りもいい。しかも、ジンのような焼きつき感がなくて、度数の割に、すっと喉を通る。

もちろん58度をストレートで飲み続けては、その後に世間が回り始める(笑)ので、すぐにチェイサー、水を飲む。あるいは最近は炭酸で割り、コウリャンソーダにしてしまっている。

ともあれ、今の私は、しばらくジンより高粱酒のブームが来ている。この酒をチビリチビリと飲んで、玉山の夢を見るのだよ。富士山より高い山に、最初に登ったのは誰か。阿里山の巨木林を超えて見た景色はいかなるものか。

日本人には、ジンや白酒も、その独特の香りを苦手として好まない人が多い。どうも、安物の酒のイメージを持っているのではないか。しかし、どちらも高級なものはシングルモルトのウイスキーやワインより高い。そして背景にストーリーとヒストリーがあり、今後流行るような気がする。

このところ、森林総研が木材から酒を造ったと発表して売り出し中だ。スギ材からはスギらしい、シラカバ材からはシラカバらしい酒ができます、というわけのわからん説明をしているが、木材をセルロースまで分解してブドウ糖にしてから発酵させるらしい。あまりストーリーとしては面白くない。実際、美味いという声を聞いたことがない。酒造メーカーもその製造法を採用するかどうか。

場末の木材研究者が、酒を買う金がないので、目の前のスギからアルコールを作り出そうと密かに研究を始めて、深夜、雷を引きこんで、森から集めたさまざまな木材を継ぎ接ぎした丸太に電気を通して密造酒を生み出した……とかいうストーリーをでっち上げたらフランケンシュタインのモンスターぽくて、ウケたかもしれないのに。

酒は、味よりもストーリーだ。ロマンで飲むものだよ。ヾ(- -;)

 

2024/06/28

雨の日は庭を眺める

最近は、朝起きたら庭を散歩する癖がついた。池の金魚に餌をやり、庭の各所の花を観察する。

ただ、雨の日は出られない。ちょっと日課のサイクルが行えないのが残念だ。

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我が家では、まだまだアジサイがよく咲く。これは1株から生えているのに3色になっていた。アジサイの花は、土壌のアルミニウムの量によって色が変わると言われる。少ないと赤、多いと青。その中間が紫。でも、根っこは同じなのだが。

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ようやく2階の屋根に届いた朝顔。ちょっと遅い。葉の量も少ないように思う。全国的に暑くて成長がよいというが、我が家では反対の傾向がある。キュウリもトマトも成長は遅くあまり伸びていない。何が影響するのかわからない。

こうした日常の観察で自らの自然の触覚を磨く。

おまけ。

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何の花……もちろんアジサイ。蕾の群だけをアップにすると別の世界みたい。

2024/06/27

「気候変動とは言ってはいけない」法律+α

アメリカのフロリダ州で「気候変動と言ってはいけない(Don’t Say ClimateChange)法」が成立したことをご存じだろうか。(通称だけど)

フロリダ州には、2050年までに100%再生可能エネルギーに移行する計画があった。それを削除。海岸から1マイル以内の洋上風力発電禁止も廃止、州が購入する自動車は低燃費車とする義務も廃止。一方で電力会社は政府の承認なしで天然ガスパイプラインを建設(最大100マイル)できる。そのほか気候変動に関する記述はほとんど削除している。

すでに小学校の低中学年ではLGBTQ+教育を禁止する法律「ゲイと言ってはいけない(Don’t Say Gay)法」を通しているし、強硬な移民対策法もある。トランプ大統領の唱える政策を手ぬるいというほどの方針だ。

この法案に署名したのはロン・デサンティス知事。共和党の大統領候補にもなっていた男だ。

世界中の選挙で、環境保全政党は後退している。そしてナショナリズムや反環境を前面に出す右翼が進捗する。それぞれの国・地方に個別の事情はあるのだろうが、立派な理念(ポリコレ)より目先の自身の損得と感情を優先したい民意なのだろうか。

日本でも、同じ傾向はある。政治的に正しい理念(まさにポリコレ)を強く掲げたら、より強い反作用で本音が出てくる。

環境より便利快適。
平等社会より階層社会。
公正より上から目線。
持続性より目先の利益。
善行善意よりシャーデンフロイデ(妬み・悪の快感)。
ダイエットより甘いケーキ。

もうダイエット止めようっと。

閑話休題。

日刊ゲンダイに『盗伐 林業現場からの警鐘』の書評が出た。感謝。

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私は、本書ではっきりとは明治神宮外苑問題に触れていないが、読み取ってくれている。同じ趣旨の書評は信濃毎日新聞に書いてくださった武田砂鉄さんであった。目先の外苑、見なかったことにする盗伐。
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2024/06/26

Y!ニュース「クマ出没に備えるガバメントハンター…」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「クマ出没に備えるガバメントハンターについて考える」を執筆しました。

もうクマ出没関連の記事は書きつくしたかな、コメント付けもあるし。

そう思っていたのだが、相変わらず出没は続く。実はこの記事は数日前から手がけていたのだが、本日の朝には奈良県の吉野町でクマが駆除された。それもイノシシやシカの駆除に出動したハンターがクマに出くわしたのである。クマは近づいてきて接近したので発砲したという。おそらく持っていたのは散弾銃かハーフライフルで、本来はクマ用ではないものの、近距離だから命中したし、威力を発揮できたのだろう。

実は、奈良県では今もクマは駆除対象外である。かつて紀伊半島のツキノワグマは絶滅寸前と報告されたこともあり、今も駆除しないのだ。しかし、現実は増えているのは間違いない。

ここで驚いたのは、町の「鳥獣被害対策実施隊」のメンバーで、その中には吉野町職員もいたそうで、ようするにガバメントハンターだったのである。

すでにガバメントハンターは現場レベルで広がっているのだろう。

もっとも、調べていけば行くほど、公務員が業務としてハンターになるのは大変。個人でやる気があっても、役場全体の支援がなければ出動できないのだ。だから、この記事は、ガバメントハンターをつくれ、という提言ではなく、つくるにはこんなに大変、首長は覚悟を持って当たれ、という訴えなのである。

 

 

2024/06/25

ギター用木材の密輸

夕方、何気なく見ていたニュースにいきなり流れた木材密輸のニュース。

「三木楽器」の取締役を逮捕 ワシントン条約で規制されている木材をパラグアイから密輸しようとした疑い「20回から30回ほど輸入し、ギターとして販売していた」(2024年6月25日)

あわてて撮影。

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ギター用の木材で絶滅危惧種……なっだっけ。うっすら覚えのある名前。ツルサイカチ。

調べてみると、ローズウッドらしい。パラグアイなら、ブラジリアン・ローズウッド。楽器の素材としては神材とまで呼ばれるほどの人気らしい。しかし、なあ。それを無理して輸入して、なんと名をつけて売るのか。

硬い材質とは聞くが、それが楽器にどれほどの音色として反映されるのか。違反してもよい音を出したいというマニアックなメーカーの犯罪なのかもしれない。

木材輸入で捕まるギターメーカーといえば、アメリカのギブソンだろう。12年前、マダガスカルの伐採禁止の黒檀や紫檀を輸入したことがバレて改正レイシー法違反で摘発された。この法律、なかなか厳しいもので35万ドルの罰金だったそうだ。

日本には、そんな厳しい違法木材禁止法はないのだが、と思ったが、ワシントン条約違反で捕まえたか。結構、結構。

ギブソンは、その後倒産して、再建された現在の会社は、高級ギターではなく、一般の安いギターを製造しているそうである。

 

 

 

2024/06/24

木造ビルは本当に木造か?

こんなサイトを見た。

TOKYO BEST OFFICE 木造オフィスビル特集

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ようするに東京の計画中・建築中、そして竣工済みの木造ビルを紹介しているのだが、よく内容を読むと、これ木造? と思ってしまう。

まず林野庁推しのCLTを使ったビルは少ない。CLTは木造ビルを建てられる!という点を売りにしていたはずなのに。使っているところも床に使うと書いてあって、全面使用ではなさそうだ。むしろ従来建材を利用して、10階建てビルに仕立てたところも多い。

そして構造材は鉄骨やコンクリートを使う。木材は一部だけ。階層でも、10階建て20階建てとあるが、すべてが木造ということはなく、一部の階だけだ。全部木造だというのは、皮肉にも番外である横浜の Port Plusビルだけではないか。 

別に文句をつけているわけではない。私が見てきた木造ビルもほとんどがそうだった。5階建て木造ビルと謳っていたのに、実は鉄骨構造で、CLTを床と壁だけに使っていたビル。

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私が訪ねた東京国分寺市のフレーバーライフビルも、実は下部3階までは鉄筋コンクリートで、上部3階が木造という構造。見た目が逆転しているのは笑えるが、すべて木造と張り切ったわけではなかった。

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改めていうが、文句つけているわけではない。これでいいと思っている。木造ビルを木材だけでつくると張り切る方が危なっかしい。それは、せいぜい2,3階建てまでにしておいて、より強くより機能的で、さらに経済的、デザイン的にも満足させるにはさまざまな建材を利用すればよい。無理することはない。木材なんて、ビルの内側と外側の見える所だけに張り付けておけば、もう全部木造に見える(笑)。

 

2024/06/23

謎のハイブリッドグマ

先日、某地方紙の記者が生駒まで取材に来た。特集記事の中で林業の実情を取り上げるから話を聞きたいとのことだった。

大型企画の担当で、わざわざ奈良まで足を運ぶ(最近は、経費の面からなかなか長距離泊まり掛け出張が許されなくなってきている。とくに地方紙は……)というのだから、ベテラン記者かな、と思っていたのだが、生駒駅の改札口で待ち合わせて出会ったのは、意外や若い女性記者であった。

さあ、取材に入る前の雑談に何をするか。車で移動する最中、若干悩む。お互い?探るように世間話をする。

入社4年目なの? 記者稼業はどう? 楽しい?とかなんとかオジサン的な質問をしているうちに、人生相談ぽく(ここでオヤジ化する)なるが、聞いてみると農学部卒。なんだ、私と一緒か。専門は? と聞けば、なんと森林科学系なのであった。私と同じや、それなら林業もそこそこ知っているでしょう。卒論何やったの? とまたオジサン的質問。

すると、クマの生態を追いかけていたというのだ。森林とクマの専門家(見習い)ではないか。ただ、クマの記事はまだ書いたことがないというのだが……。

えっ、私も卒論は動物追いかけていたんだよ、扱ったのはカモシカとかアカネズミだったけど、クマの冬眠穴調査もやったんだぜ、と、若い女性記者との共通点をせっせと探すのは、やはりオヤジ化したのかも。

ここでクマの話で盛り上がる。その際に話題になったのが、ハイブリッドグマの話題だ。

クマの出没が毎日のようにあるが、その中でいきなり飛び出したハイブリッドグマの噂。ようするに東北地方では、通常のツキノワグマの2倍ぐらいある巨大クマの目撃例が増えているという。しかも凶暴。これはツキノワグマとヒグマのあいのこ、つまりハイブリッドではないのか?と言い出した人たちがいる。これにマスコミは飛びついた。

「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体

「何年も前から、一般的なツキノワグマの倍ほどもある大型の個体を見たと、山の仲間たちは話していました。私たちは、ヒグマとツキノワグマが交配して誕生したであろう彼らを『ハイブリッド個体』と呼んでいます。ヒグマの体格と獰猛な性格を受け継いだ個体が、秋田の山の中をウロウロしていると思うと、恐ろしくてたまりません」

何のことはない、秋田県で聞いた噂をそのまま垂れ流しているだけだ。

真面目に考えれば、津軽海峡があるかぎり両種の出会いもないし、野生状態のツキノワグマとヒグマが交配するとは考えられない。出会えばヒグマがツキノワグマを食い殺す可能性だってある。遺伝子的には、クマ同士ならかろうじて一代雑種はつくれるかもしれないが、それが巨大になるとか凶暴になるかどうかもわからない。病弱になる可能性だって高い。

では、正体は何か。ツキノワグマとは世界的にはクロクマの仲間である。だからアジアクロクマとも呼ぶ。アメリカ大陸にはアメリカクロクマがいるが、それがデカいのだ。立ち上がると2メートルを超す個体もいる。アメリカのヒグマ、グリズリーと比べると小さいのだが……。

ツキノワグマも餌が豊富になって、また長生きをすることで巨大な体格を手に入れた個体もいるのではないか。私の見解としては、餌の量が増えると、クマの数が増えるだけでなく、巨大化したツキノワグマが出現するのかもしれないよ。

とまあ、こんな話をしている時が、もっとも楽しい(^^;)。若い記者に説教を垂れるのが趣味ではないのである。

もちろん、取材には前向きに応えましたよ。絶望の林業の話を(-_-;)。彼女、『絶望の林業』と『虚構の森』を持参していた。有り難い。ただ図書館からの貸し出し本であった。『盗伐 林業現場からの警鐘』は買ってね、とお願いしておいた。「はい、Amazonでボチります」との返事にゴキゲンになったのであった。

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みどりのシロクマ?????これもハイブリッドだろうか。価格はなんと9割引!

2024/06/22

[絵葉書]管流しと台湾の巨木

かつて川を使って原木を運び出す場合、筏流しが行われたことはよく知られているが、その前に管流しがあった。

ようするに丸太をそのまま1本ずつ川に流す方法だ。そして下流で拾い上げる。ときに堰を築いて、貯めた水で一気に流すことも行われたらしい。筏を流すには河川の幅と水量が必要だし、途中でぶつからないように岩などを除く河川整備も必要となる。その点、管流しは簡単な方法なのだが、意外と画像では見たことがなかった。筏流しは画像・動画が残されているのに。

そこに友人のカメラマンが昔の絵葉書を発見。画像をいただいた。

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山形県温海川の管流し風景らしい。なんと、バラバラで打ち上げられている。そうか、これを拾い集めるのも大変だろう。途中で折れたり丸太の表面も傷つくことも少なくないはずだ。

実は管流しの最中に、丸太を盗まれることもよくあったようだ。こうして予定外のところに打ち上げられたら勝手に盗む輩もいるだろう。どちらにしても、岸辺から運び出すのが大変だろうが。

もう一点。

こちらは台湾の阿里山の巨木。

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ざっと直径5~6m。凄まじい巨木だ。土倉龍次郎が明治時代の阿里山で撮影した巨木林の写真でも、ここまで太いのはあまりない。
写っているのは伐採する人だろうか。とてつもなく長いノコギリを使っている。こういうのをドンドン伐ったのだろうな。

台湾の巨木林も見たいと思っているのだが、阿里山は伐り尽くしたらしい。検索してみると、巨木と言えるもので保護されているのは3,40本ぐらいしか残っていない。それも、写真ほど太いかどうか。

それにしても、戦前は今ほど写真機が普及していないだけに、一般人や現場で働く人自身が撮影するのは至難だ。それを記録するきっかけというか手段としては、絵葉書作成が担っていたのだと思わせる。

 

 

2024/06/21

Y!ニュース「バイオマス発電が原生林を破壊する」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「バイオマス発電が原生林を破壊する」を書きました。

5月末にスザンヌ・シマード氏とレイチェル・ホルト氏の記者会見に参加して、記事にしなくてはいけないなあ、と思っていたのだが、実はその直後に台湾に行ったのである。

帰国後も、それなりにたまっている仕事を片づけたり、疲れを癒したり(^^;)していたのだが、その間に次々と二人の記事が出る。新聞もネットニュースにもいろいろ出ていく。記者会見なのだから、メディア関係者が参加していたわけで、そりゃみんな記事にするだろう。

しかし、私はそのタイミングを外したわけで、記者会見の内容をそのまま記事にしたら二番煎じ三番煎じになってしまう。だいたい私は、取材した内容そのものを記すストレート記事は苦手なのである。

そこで何を書くか、結構悩んでまた時間がすぎていく。ああでもない、こうでもない。結果的に、原点にもどるようにバイオマス発電の燃料という観点から調べ直すことにした。記者会見の情報は貴重なのだが、それだけでは三番煎じなので、日本の輸入元第1位のベトナム事情に注目した。

結果的にベトナムが原生林を伐っているという証拠はないのだが、伐らなくてはこれだけ大量の木質ペレットを生産できないでしょ、しかも森林面積の推移から類推しても怪しいよ、という条件証拠から類推した。まあ、飛ばし記事かもしれない(^^;)。

ともあれ、わりと難産であった。

2024/06/20

全国植樹祭の会場は屋内?

林野庁のモクレポを見ていると、岡山県で開かれた全国植樹祭の様子が紹介されていた。

モクレポ33号(6月15日発行)

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例年の行事であるが、今年は5月26日。テーマは「晴れの国、光で育つ 緑の心」なんだそうだが、驚いたのは会場だ。ジップアリーナ岡山、つまりアリーナつまり体育館の屋内なのだ。晴れの国なのに(^^;)。

まあ、晴れの国がテーマなのに当日雨が降ったら困るとでも考えたのかどうか。岡山県、肝が据わっていない。

ちなみに来年は埼玉県なのだが、会場は「秩父ミューズパーク」となっていた。ここは公園だが、地図を見ると音楽堂などの屋内施設もあるようだ。式典はどこでやるのだろうか。

それにしても気になるのは、植樹祭の行事では苗木を植えるわけだが、屋内であれば当然育てられない。式典終了後はどうしているのか?
移転するのだろうと思うが、“天皇陛下のお手植”の苗を後で植え直すなんて不敬、いやダサくないだろうか。式典とはそんなものなのか。

実は、2027年は奈良県だと聞いている。まだ発表されていないようだが、内定ということだ。あと3年後。今頃、企画案を練っている最中?

どこで開くのだろうか。候補は平城宮跡歴史記念公園か、橿原運動公園あたりという噂だが……できれば野外にしてほしい。まあ、平城宮跡でも大極殿の中だと面白いかも。古代の天皇が儀式を行ってきた高御座(たかみくら)の前で植えるのも奈良ではの話題になるか。

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大極殿と、その中にある高御座

ただし、そうした会場では、植えた苗木をその場所で育てるのは難しい。しかし植え替えるというのも面白くない。できれば本当に森へと育てる覚悟がほしいのだが。平城宮跡でも森にできる部分はあるし、橿原公園なら橿原神宮の一角というのもアリだと思うのだが。雨の場合は、オシャレなテントでも建てたらいいのではないか。

植えるのも、ありきたりのスギやヒノキ、ちょびっと広葉樹……というのではなく、奈良的な樹木の苗はないだろうか。絶滅危惧種のトガサワラなんかは面白いと思うのだが。
あるいは奈良県は針広混交林づくりを進めているのだから、天皇・皇后夫妻で針葉樹・広葉樹両方の苗を同じ植樹桝の中に混ぜて植えてほしい。

いっそ奈良公園に植えて、奈良のシカに苗を食われないかヒヤヒヤするという趣向もいい。獣害問題クローズアップのチャンスだ。

とまあ、妄想を膨らませている。

2024/06/19

Amazon1位と日本農業新聞

昨日の朝日新聞1面広告の効果か、Amazonの環境問題部門でベストセラー1位となった。

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おお! と喜んでスクリーンショットしたが、今アップするために確認すると4位だった……。瞬間風速だったのね(^^;)。時々刻々、変化する。が、それでも全体で3000位~6000位くらいだから、かなり高い。ちなみにAmazonでは、なぜか急に「文学・評論部門」でもランキングされている。もちろん、1000位以下。こんな分野に入れるなよ。。(-_-;)

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一方で、楽天ブックスの農林水産部門では、今も1位だ。やはり分類が明確であってほしい。

もう一つ、日本農業新聞にも書評が掲載された。

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日本農業新聞には、林業系のニュースも比較的載る。これも全国紙だから有り難い。農業関係者は、どこまで盗伐問題に興味を持つだろう。

ただ書評が地方紙中心であることも含めて、結局、都会人は『盗伐』という事象に興味がないのだろう。自分とは関係ないところの木がどんなに伐られても平気。

一方で、相変わらず明治神宮外苑街路樹のしょぼい伐採計画には大騒ぎで知事選挙の争点にしているのに。でも、反対している人の何%が、本当に外苑を身近にしているのか。(ちなみに、計画では人気のイチョウ並木は伐採されない。4列の並木は残すと言っているのに、なぜ反対なのかよくわからん。)

 

2024/06/18

朝日に広告を打つ!

本日の朝日新聞朝刊(全国版)。とうとう広告を打つ。それもカラーだ。。。(その前に読売新聞と宮崎日日新聞にも広告は打っている。)

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この広告のミソは、上部の「各紙書評で話題!! 衝撃の声続々。」の部分。

各紙とは、まず共同通信の配信。

南から追うと、琉球新報、沖縄タイムズ、南日本新聞、宮崎日日新聞、大分合同新聞、佐賀新聞、長崎新聞、中國新聞、山陽新聞、山陰中央新報、日本海新聞、徳島新聞、京都新聞、福井新聞、新潟日報、埼玉新聞、岩手日報、東奥日報……と確認している。どこか抜けているのはあるか?

そして独自に信濃毎日新聞、旬刊宮崎、そしてインタビューで北海道新聞。全国20紙以上に載ったことになる。これは記録的。ほか、赤旗と週刊東洋経済なども。ネット書評もいくつか。

これだけの書評を受けての、朝日の広告なのである。

しかし、全国紙には載らないというのは、やはり「盗伐」という言葉への引っ掛かりが、地方と都会に差があるように思う。

タイトルを『盗伐 林業現場からの警鐘』としたのは、おしゃれな言葉よりベタに内容を知らせようという意図があったのだが(後半は林業のこととわかるように)、どうも出版後に反応を探っていると、そもそも盗伐という言葉を知っている人が意外と少ないということだった。

文字も「討伐」と間違われるし、盗む伐る、では意味がわからないらしいのだ。思えば林業用語だった。林業界の言葉は伝わらないからなるべく使わないようにしているのだが、盗伐まで知られていないとは。

やはり森を入れたタイトルの方がよかった?

2024/06/17

「王子の森」はどこにある

録画していたテレビ番組を不真面目に見ていて、不意に「王子の森」という文言が映し出される。

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奈良には王寺町がある(^^;)。こんなに広くない。八王子でもなさそう。どこぞの王子様でもあるまい。

もちろん王子製紙(王子ホールディングス株式会社)のことだとわかったが、60万3000haとは。王子製紙は日本一の森林地主だが、たしか19万haぐらいと記憶していた。少し考えて、ああ、海外所有林もあったか、と気づく。そこで調べてみた。

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サイトを見ると、国内は18万8000haらしい。そして4割ほどを人工林化している。ごていねいにバイオマス発電所の位置までしるしてくれている。そして、海外所有林が、41万5000ヘクタール。

王子グループは、6ヶ国、10ヶ所で植林事業を展開しています。2022年度末の海外植林面積は279千haに及びます。また、生物多様性や流域保全を主目的とした環境保全林は136千haです。

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ブラジルが圧倒的だが、インドネシア、ニュージーランド、ベトナム、オーストラリア……6カ国とあるが、これに日本も足すのか?

王子グループの海外植林事業では、広葉樹のユーカリやアカシア、針葉樹のラジアータパインなどの早生樹を植林しています。また、ブラジルCENIBRA社では、長年にわたり林木育種を行っています。地道な人工交配によって得られた2万以上の個体から、約15種、類の成長量・パルプ生産特性が高い優良品種を選抜。同様に、インドネシアKTH社などでも林木育種を継続しています。各事業で開発した優良系統を植林することで、森林の成長量を高め、CO2吸収の促進を目指しています。

どんな森づくりなのか。写真があったので拝借。ブラジルの苗畑らしい。

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うむ。この元は、アマゾンのジャングルだったのか、それともセラード(サバンナ)だったのか。ユーカリ、アカシア、ラジアータ……。

悪いとは言わない。が、これでいいのか、という疑問はある。伐った木は一部は木材として使うだろうが、当然ながら製紙原料になる。炭素固定期間は何年か。それでも「CO2吸収の促進」だという。当然ながら合法的なのだろう。

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ちなみに、こちらはカナダの皆伐地。原生林を切り開いた跡だ。これは合法的である。なぜなら、跡地に植林されるから。むしろ天然林を人工林に換えることは、推奨されている。二酸化炭素の吸収がよくなるそうだ。伐った木材は木質ペレットにして燃やすのだけど。

こういうのは、グリーン・ウォッシュとは言わないのだろうね。言ったら、世界中の脱炭素政策が破綻する。机上の数字でも辻褄は合わない。でも……ネイチャー・ポジティブはどうする?

2024/06/16

書棚の配列の妙

ジュンク堂書店難波店を覗いてきた。もちろん森林棚をチェックする。

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ここだけでなく隣も森林林業棚で、そこには『虚構の森』などもあるのだが……この棚の平積みに『山林王』と『絶望の林業』と『盗伐 林業現場からの警鐘』が並んでいるのは嬉しい。その上には『フィンランド 虚像の森』もある。さらに上には『森は怪しいワンダーランド』も。。。

平積みの真ん中に『樹盗』があるのだが、そのポップに「盗伐横行」の文字。これが隣の『盗伐 林業現場からの警鐘』と重なっていて、どちらのポップか迷わせるところがよろしい(^^;)。

ちなみに拙著のアメリカの盗伐事情を示した5章2節「北米で狙われる巨木林」は、多分に『樹盗』の情報を使わせてもらっているが、その後半の木質ペレットのための原生林皆伐事情については、上部の『マザーツリー』の世界である。こちらの事情については、改めて記したいと思っている。(が、執筆に難渋。。。)

この棚の本は、所有している本が多い。このところ、金回りがいいのかなんだか、高価な本の衝動買いが続いている。それでも、読めばいいのだが、積ん読にならないようにしなくては。

 

※なお、本日は、山陽新聞(岡山)に共同通信の書評が掲載された模様。

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2024/06/15

盗伐~読者からの手紙

『盗伐 林業現場からの警鐘』の書評、今日はを出版してから、東奥日報に共同通信配信の書評が掲載されたという情報が寄せられた。さらに南日本新聞にも。

かなり増えてきたねえ。各地の地方紙は、かなり網羅したかのように思う。

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ところで意外と多いのは手紙による反響。版元経由で届くのだが、手紙を書くというのはご年配の方の読者が多いのだろうか。盗伐に遇った、というのはまだないのだが、なかには何を書いているのかわからない????ものもあるし、昔の思い出を綴ったものもいくつか。自分の山の山仕事の思い出も。

その中で農林系の高校の教師をしていたという人からの思い出もある。

本人は「アホらしい経験」と記すが、10年間を高校の林業科で教師していたというのだ。植栽や下刈り、製炭の実習は自分自身の勉強になったなど思い出を語るが、「古くさく、くさりきった体制」の高校には心底げんなりした様子(笑)。

そもそも生徒は林業とは無関係のどこも引き取り手のない生徒であることが多く、林業家の子弟もやる気がないそう。林業家は補助金をあてにした生活で豊かで高級車を乗り回し、贅沢三昧。地方のボスなども暗躍して「教育」をしていたそうな。結局、生徒の将来など、誰も考えていない状態。「宮沢賢治のうさん臭さを知った」らしい。

もちろん、ン十年前の個人の体験であり、農林系の高校にもいろいろあるわけだが、まあ、こうした傾向を否定しきれない。本当に林業に興味を持った生徒が入学しているのか、という点から問われるべきだろう。それは現在は全国的に盛況の林業大学校も同じである。(その点は.私も経験した笑)。

私的には、この手紙の嘆きの肝は、学校の話ではなくて、親の林業家の現実だろうと思う。補助金生活を送っていて、本音は林業そのものに未来を見ていない人も多いのではないか。

一般に林業の補助金が出るのは経費の7割までというし、林業は儲からない、とみんな口をそろえるが、では残り経費の3割を負担しているのかというと、かなり怪しい。実は事業者が申請した経費の7割の補助金が出たら、その枠内で全部賄ってしまうことで、自己負担はゼロでなかろうか。そのうえで山主にも経費分を支払わせる話を聞くし。なんと収穫した原木を売った代金さえ山主に渡さない。

どうやら拙著『盗伐 林業現場からの警鐘』は、盗伐そのものには縁がない人も、林業界の違法行為に関心を示しているように感じる。

2024/06/14

庭の初収穫

今年は暑い暑いと言われ、、全体に世間で言われている気温と我が家は違う。我が家に来たヤクルトおばさん(^^;)にも、「ここまで来ると気温が少し下がりますよ」と言われた。標高差は250メートルぐらいあるか。

おかげでキュウリもトマトも生育が遅くて……と文句を言い出したらきりがないが、とはいえ、ここ数日は急激に暑くなった。

まずアジサイが咲き始めた。

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Wedge オンラインに<林業家が経営するアジサイ園>困難な木材のみの経営に必要な“日本型”森林経営の未来像とは?の記事が掲載されたが、実はここに紹介した「みちのくあじさい園」を取材したことから、私も山にアジサイを植えだしたのだ。何が気に入ったかというと、アジサイは強くて林床でも世話いらずでよく育つと聞いたこと。

荒れた雑木林に隠れた花園にするのが目的だ。そして、2年前から我が家の庭にも植えだした。アジサイは強くて成長がよくて花もきれい。世話があまりいらないのが有り難い。カタツムリも数が増えて喜んでいるみたいだし。

ところで1枚目のアジサイの左下に写っている植物は何かわかるだろうか。そう、ジャガイモだ。残っていたジャガイモを庭に埋めたら、どんどん成長した。これは栽培ではないな。その点は、農業ではなく林業的(^^;)。
イモが地面に盛り上がって緑に変色しかけていたので、このままだと有毒になってしまうのでイモ堀りをしたわけ。引き抜いただけだが。わりと太っている。十分食べられるだろう。

これが本年最初の収穫だ。ネギやシソの葉などの収穫はあったが、本格的な作物はこれが初めてである。

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なお、以前紹介したゴーヤの根元のカボチャは、どうも実は大きくならない。葉っぱは大きいので多分ゴーヤに栄養を回しているのかと思う。

2024/06/13

杣塾のオンライン講座で土倉庄三郎を

森林・林業講座について、ご紹介。

オンライン講座【森林と樹木のサイエンスシリーズ】

というのも、私が1回目を務めるから(^_^) 。

これは、鳥取県智頭町で行っている(講座はオンライン参加)もので、智頭の山人塾 /杣塾の山本福壽塾長(元鳥取大学教授)が主催する。全6回の講座を毎年続けてきて、今年は5期目だそうである。ちなみに山本塾長は、プレ講座も開くから、全7回ある。

いずれも森林や林業の専門家・研究者が講義を受け持つが、私だけ異端であるのだが、テーマは、なんと土倉庄三郎。もっとも、その背景として江戸から明治時代にかけての吉野林業について説明する。

ほか、木曽林業に再造林放棄問題、外来種ハリエンジュ(ニセアカシア)、森林業、巨樹……と続く。

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なお、プレ講座以外は有料。詳しくはサイトを読んでください。

私の回は、8月22日。夏休み真っ盛りに何を語るか。怪談にするか?とか考えている(^^;)。

 

 

2024/06/12

石のスキマに深く根を下ろす

最近は、比較的平城宮跡公園をよく散歩している。平坦で歩きやすいこともあるが、さまざまな見どころがあることが魅力。

当然ながら歴史的な面からは発掘遺跡あり、土器・木簡など資料あり、古代木造建築復原物あり、ついでに遣唐使船まである。

一方で130ヘクタールものだだっ広い草原があり、オギ・ススキ原や野草の宝庫で、そこに昆虫など虫類も、水路には淡水昆虫あり、空には鳥が群をなす。古代史、考古学、建築学、動植物、地質まで幅広いのである。

今回は、こんな植物を紹介。

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これ、何の植物かわからない。赤い葉は幼葉なのかどうか。検索しても、ケイトウだとかタコノアシ、ツメレンゲ……とバラバラの似た植物が出てくる。ただ、私が気になったのは、生えている場所が、土砂でもなく砂利でもない、まるで敷きつめた砕石のようなところ。肝心の地面までは深くあるんじゃないか、どこから生えているのか? と気になったから。

そこで掘る、のではなく石を少しずつどけて、生え際を確認してみた。

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しれ。細い根が伸びている。これ、根を切っていない。石をどけただけで、まだ深く伸びている。茎は意外と短く、根が伸びたらしい。石の上に種子が落ちて、ひたすら土壌のあるところまで根を伸ばしたのだろうか。

海浜植物ぽいが、名前がわからない。

2024/06/11

北海道新聞に『盗伐』インタビュー

北海道新聞6月9日に『盗伐 林業現場からの警鐘』に関するインタビュー記事が掲載された。

<訪問>「盗伐」を書いた 田中淳夫(たなか・あつお)さん

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実は、北海道新聞に掲載されることは期待していた。というのは、おそらくだが、北海道でも盗伐は、かなり行われているという気配を感じていたからだ。 

本書で取り上げたのは、主に宮崎県で、それに鹿児島、兵庫だが、ほかにも奈良や広島などいくつかの地域で盗伐が起きていることは把握している。しかし全国的に広がっているはず。ただ被害者が声を上げないと実態がつかめないし取材もできないのだ。

木材生産量の増加などから推測するに、東北と北海道でも起きていておかしくない。秋田、山形、岩手、宮城、福島……とくに広くて平坦な北海道は、隠れて伐採するのに適している。実際に国有林が盗伐を受けた事件もあるし、噂レベルの情報は多数ある。SNSでも流れている。

ちなみに奈良の吉野でも起きているが、古いタイプの盗伐である。(銘木狙いの抜き伐りで、犯人は身内や周辺人物であることなどから、被害者も表沙汰にしない。そして泣き寝入りするか、裏で多額の賠償金を取り立てるか、いろいろなケースがある。)

これは宮崎県でも言えることだが、盗伐があっても被害者が声高に訴えないと表沙汰にはならないのだ。警察も自治体も扱いたがらず、うやむやにしてしまう。ほとんど泣き寝入りなのだ。自分だけの不幸と諦めてしまう。しかし、自分だけではないと知ったら……。

だから地元メディアを通して全国的な盗伐の現状を知ってもらえれば、被害者が声を上げてもらえるのではないかと思っていた。

もし北海道でも恒常的に盗伐が発生していることが浮上すれば、いよいよ全国規模の問題として訴えられる。全国の盗伐被害者の声を集めるネットワークづくりの構想もある。

 東北でも、きっと出る。

なお、「訪問」とあるが、取材は諸般の事情で奈良まで来れず、Zoomになりました(^^;)。

2024/06/10

「とうきょうの木」記事4本

せっせと執筆したものの、その原稿がどんな記事として公開されているか、確認していないことがある。

雑誌や新聞なら掲載紙誌を送ってきてくれたらよいのだが、たまにすっぽかされるし、ネット記事の場合はサイトのどこか連絡をくれないと忘れてしまう。連絡があっても見忘れることもある。

ちょうど「そういや、3月中が締切だったけど、どうなったか」と思い出した記事があった。たまたま担当者が3月一杯で転勤になったのだ。依頼主はメディアでもなかったし、一応の後任者は何も連絡をくれなかった。そこで探してみたら……ありました。

とうきょうの木のすすめ

正確に言えば、東京都の「多摩産材・国産木材製品紹介サイト」であった。

そこに東京にちなむ木材関係のコラムを書いてくれと言われて、5本をめざしたが4本で時間切れというか息切れたのであった。サイトには5本並んでいるが、最初の1本は、学者の総論みたいなもので、その後の4本が私の執筆。

まあまあ、私の主張と東京都の立場を慮って(^^;)、上手く書けたのではないかと思うのだけど、ふと気づいたのは写真がないこと。

「写真は、こちらで何かイメージ写真を探して添えます」とのことだったのだが、ないと映えないなあ。

そこで、勝手に私の手持ち写真から選んでここにアップしよう。

幻の四谷丸太に幻の林業を見る

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四谷丸太は幻だから、代わりの京都・北山丸太

節だらけエクステリアが人気の時代が来る

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我が家のリビングの壁面にある節。デザインになるか?

街路樹の木の命を木工品に移す

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公園の木を伐る際は、何かと気をつかう

海で採れる木材、海を越える木材

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新木場の埠頭に並ぶのは、パッキングされり製材ばかり

いかが?

2024/06/09

宮崎日日新聞に書評が載った!

とうとう載った。『盗伐 林業現場からの警鐘』の書評が、本日の宮崎日日新聞に載ったのである。(共同通信配信版)

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(ちなみに写真を送ってくださったのは、書評筆者の上野敏彦氏!感謝)

内容は、ほかの県版と変わらないが、なぜ喜ぶというか驚くというのは、宮崎県が主な舞台なのに、あまりに宮崎県で拙著の動きが鈍かったからである。

まず主要書店の棚に並ばなかった。新刊なのに、である。

そして5月半ばに宮崎日日新聞に広告を打ったのに、書店からの注文はゼロ。客注文が2冊だけだった。これって、何か宮崎県内の隠れた権力がこの本を県民の目に触れさせないように圧力を受けているんじゃないか。。。。なんて陰謀論に与したくなる。おそらく目に見える圧力ではなく、書店子が無意識的に取り扱わなかったのだろうと想像するが、それが逆に怖い。

客注文というのはリアル書店に客が取り寄せるように要請するということで、それが取次や版元を通して客の手元に届くまでに時間がかかる。ときに1週間2週間にもなる。それでも頼む客というのは、リアル書店にとって非常に大切な客のはずなのだが、実はあまり歓迎されない。たった1冊取り寄せるだけなのに手間がかかるからだ。本来は客注文で売れ筋を知って、複数取り寄せ店頭に並べるなどの努力をするものなのだが、最近はそうした熱心な書店が減っている。取次からの本のつまった段ボールの封も切らずに返品するケースさえあるという。

「町の書店」が消えていく問題が取り沙汰されているが、私がわりと冷やかなのは、努力している書店の姿をあまり感じないから。私も、ほしい本は最初にリアル書店に探しに行くが、なければさっさとAmazonに注文する。

閑話休題。

ともあれ、宮崎県紙の宮崎日日新聞に書評が載った本を宮崎県の書店が店頭に並べないということはあるだろうか。

なお、もう一つの宮崎県の新聞「旬刊宮崎」にも書評は載った。

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今後の展開が楽しみである(⌒ー⌒)。

 

2024/06/08

推進するのは、疎植林業?

あまり知られていない(笑)が、今年の森林・林業白書が公表された。

令和5年度 森林・林業白書(令和6年6月4日公表) 

特集が花粉症なので、ほとんど興味がわかない(-_-;)。

それでも「森のようちえん」を取り上げているところなどひっかかりはあるのだが、詳しくはまた読もう。

今回目に止まったのは、第2章の「林業と山村」の中に「新しい林業」とその新技術について施業法を取り上げているところ。

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こうした方向をめざしているということか。一目で感じるのは疎植したいのだな、という点。そして早生樹・エリートツリー苗などで木を早く育てようという魂胆か。

まあ、そんな林業もあるだろう。が、全国画一的に広めるなよ、と言いたい。そして、もっと過去を見ろ。温故知新で事例はある。

すでに紹介したが興野文書というのがあり、栃木県にあった黒羽藩の林業技術を記した「太山の左知」が林業遺産にも指定されている。

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これは、疎植の技術だ。2間、つまり4メートル間隔で植えるというから、1ヘクタールあたりは625本。今なら超疎植扱いだろう。そして樹下植栽しろとか、なかなか面白い。わざわざ吉野林業を視察したうえでの結論だったようで、吉野の密植をやらない、反面教師にしたのか。

これで早く、太く育てるどいうのだ。

興野家文書と林業技術のアレンジ 

黒羽にあったもう一つの林業

今は消えてしまった幻の林業技術だが、なぜ消えたのか。どこに無理があった?疎植だからかも?

ほかにも京都ではヘクタール500本植えもあったし、各地で疎植をしていた。それが密植に変わっていったのはなぜ。

やみくもなに再び疎植を目指す前に、過去の検証をやってほしい。

 

2024/06/07

龍眼のハチミツ

台湾で空き時間を見つけて訪れたのが、花博公園。台北では何年か前に花と緑の博覧会、園芸博を開催したようだ。

その一角で農産物直売フェアをしていた。野菜や果物、そしてお茶などが多かったが、目に止まったのが、ハチミツだ。養蜂家が何軒も出展していた。ハチの巣箱を持ち込んでいるところもある。つい覗き込んでしまう。

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この娘につかまってしまった。。。。この笑顔に……。

いろいろ味見をさせてもらう。そして聞き取れたかどうかわからない説明を聞き、それなりに語り合った。どうせなら誰かが所望のミカン蜜があれば、と思ったが、柑橘系はなかった。

でも、ライチやロンガン(龍眼)の蜜があった。熱帯果実の蜜なんて、日本では絶対にない手に入らないハチミツだろう。思えば、ハチミツは養蜂する地域の自然や植物を現していることになる。純正ならば、その土地の自然を味覚で表現しているはず。ほか百花蜜もあった。

つい買ってしまったよ。

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龍眼のハチミツ。実は、まだ味わっていない。これから味見するね(^_^) 。

 

ちなみに、この買い物の後に、喉が渇いたから自家製ハチミツレモンのペットボトルを購入したのだが、いざ受け取ると凍っている。いや、暑い盛りに冷たい飲み物は有り難いんだが、すぐには飲めない。必死で溶かさないとイケないのであった。

 

 

2024/06/06

我が山で盗伐?それとも……

久しぶりに訪れた生駒山の我が山、タナカ山林。

それでえっ? と目を剥く光景が。

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なんだ、なんだ。木を伐られてしまったのか。しかし所有者の知らぬ間に……これは盗伐か!?

だが、短く刻んで積んであるのもヘンだし、どの木を伐ったのか。

すると道端にあった大木がなくなっている。これを過去に撮った写真から探し出すと。

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これは2年前に電線にかかる木の枝を払いに来た関西電力の請負会社。トラックの上に電線をまたぐような形で大きな枝が伸びている木があるだろう。私も、てっきりこの木を伐ってくれると思ったのだが、「これは電線に触れてない」という理由で保留された。しかし、どう見てもアブナイじゃないか。
実は、私もこの木を処理しようと思ったことがあるのだが、その時はアーボリスト一人しかいず、これを普通に伐ったら電線を切ってしまいかねないし、上手く吊り上げて電線に触らぬように伐採するのは骨であることから止めたもの。それを、なぜ今?

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この木の根元を見ると、腐って穴が開いていた。なるほど枯れたのか。そして倒れたのかもしれない。そのために処理したのか。
倒れたとすれば、電線にのしかかる可能性があるが、果たして大丈夫だったのか。それとも一度断線していから張り直したのか。

まあ、これなら緊急で切り倒して処理するのが仕方ないが……。所有者に連絡も入れないものなのだね。

 

2024/06/05

電力の父・土倉龍次郎と思わぬ電気利用

台湾では、獅子頭山に登る予定があった。ここは、土倉龍次郎が租借した山林地帯に近く、原住民(いわゆる高砂族)のテリトリーと接している。そこで隘勇線(あいゆうせん)と呼ばれる襲撃に備える防備エリアの痕跡が残っているというので楽しみにしていたのだが、あいにくの雨。

朝、さすがにザアザア降りを見て諦めた。その代わりに訪れたのが台湾博物館の南門館

これは本館とは別の場所にあり、元は樟脳と阿片の工場・集荷場だった所を改装したものだという。

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ここで樟脳関係の資料を見ていた(龍次郎は、クスノキを伐採して樟脳製造を行っていた)のだが、それとは別に2階に「台湾電力の歴史」コーナーがあった。そこで驚きの展示。

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この展示文をよく読んでほしい。土倉龍次郎の名があるから。そして亀山水力発電所の建設にかかわったことに触れている。台湾で初めて本格的な発電所をつくったのは龍次郎だということを記してあるのだ。実際の発電所は総督府に買い取られてしまったから、龍次郎は、これまで「台湾の隠れた電力の父」的な認識だったが、なんのことはない、台湾ではすでに電力事業の創始者として名が刻まれているのであった。

それだけではない。こうして供給されるようになった電気の利用法として、わりと大きく取り上げているのが、隘勇線。

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隘勇線の写真。木を伐って見通しをよくして鉄条網など防護柵を築いている。ところが、高砂族は、そんな防護柵を乗り越えて侵入し、首狩りを行う。随分、日本人も殺されて首をとられたそうだ。実は龍次郎の部下たちも殺されている。

だが、それを防ぐのに抜群の効果を見せたのが、電気柵だった!

そう、電力のもっとも有効な利用法の一つが電気柵だったのである。しかも、かなりの高圧電流を流したらしい。誤って触った日本人が死んだ記録もある。当然、高砂族も多くが電気ショックで亡くなったのだろう。

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今の獣害対策で設置する電気柵を連想する。通常の防護柵を破る害獣の対策に、電気柵は有効だという。言い換えると、高砂族を危険な害獣扱いしていたようなものだろうか。

もっとも現在の獣害対策用の電気柵の電流は弱い。シカやイノシシ対策にはなってもクマには効き目は薄いという。イノシシだって、鼻先以外の皮膚に触っても効かないらしい。そのうち凶暴なクマが町に出没するようになったら、電力出力を上げることも考えられるかもしれない。

ここでことの善悪を論じるつもりはないが、明治時代の台湾電力利用の思わぬ一面を知ってしまった。

 

2024/06/04

政治大学にて

台湾にある国立政治大学を訪れた。

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政治と名がつくが、研究テーマを眺めていると、日本でいう社会系の大学と思ってよいだろう。

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いただいた大学の冊子。読めないけど(^^;) 。でも茶園をAI管理するとか、里山再生の話も登場する。

こちらの方も興味深いが、私のお会いしたのは、王准教授。台湾の原住民(日本でいう先住民、高砂族)の研究をされている方であり、同時に土倉龍次郎の研究者でもある。なんと、台湾に龍次郎の研究者がいたのだ。これだけでも感激だろう。そして、数々の情報を得ることができたのである。

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『山林王』をプレゼントした。するとランチをご馳走になった(^_^) 。

 

 

2024/06/03

大阪湾上空から見えたもの

台湾から帰って来ました。

なかなか密度の濃い時間を送って成果もあったのですが、帰国直前の成果は。

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大阪湾上空を旋回して着陸態勢に入った際に見えたもの。

これ、夢洲の万博会場予定地ですな。うっすらとリングも見える。こうして見ると、高さを感じず薄っぺらいものである。初めて肉眼で見たことになるかも。

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