『都市に侵入する獣たち』を論じるジャーナリスト宣言
先日訪れた岡山理科大恐竜学博物館では、恐竜以外の収穫があった。
サテライト展示室の図書館に、処分する雑誌等が置かれて、自由に持ち帰れたのだ。よく見ると、ナショナルジオグラフィック誌が多数ある。
思わず手に取っていただいたのが、これ。
いやあ、欲しかったのになぜか買い損ねていた。2022年7月号だから、わずか2年で廃棄してしまうのか。私には有り難いが。
タイトルどおり、都会に野生動物が侵入してくる記録なのだ。基本的にはアメリカだが、ニューヨークやシカゴ、カリフォルニアの都市にコヨーテやアメリカクロクマ、アライグマなど多数の種類と数が姿を現していることが、貴重な写真で紹介されている。
実は、この本を読んだ。
これまたズバリのタイトル。『都市に侵入する獣たち』(ピーター・アラゴナ著・築地書館)。
ここにも熊やシカ、コヨーテ、ピューマ、コウモリと多様な野生動物が、都市部に住みつき、すでに生態系をつくっていることを紹介されている。ちょっと翻訳がこなれず読みづらいのが難点だが、実に興味深い観点を示してくれる。
たとえば「都会ほど住みやすい土地はない」という説明もある。もともと都市が造られた場所は、野生動物に取っても楽園だったこと、都市ができて動物は減ったが家畜が都市に関わったこと、やがて公園緑地を造ったことで野生動物を再び引き寄せ数を増やしたこと……そして人間の被害の実情と、駆除は事実上不可能であるということまで。結局は、共生しなくてはならないのだが、果たして人間にそれは耐えられるか、と考えさせられる。
が、この内容の本を、私はすでに出版しているのだよ。
『獣害列島』(イースト・プレス)。本書は、現在日本の獣害の説明から入るが、最後には「やがて野生動物は都会に向かう」と記している。クマやシカ、イノシシなどが、どんどん都会に出てくるだろう、と。予言の書なのである( ̄^ ̄)。
出版は2020年だから、わずか3、4年で現実化した。昨年からクマを中心に都会に出没することが頻発して、私にも何かと依頼が来る。この本を読め、と言いたくなる。
もっとも、この本の前には『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)を出版している。ここでメインで取り上げたのは、奈良のシカなのだが、これこそ都会の野生動物の代表格。後半にはシカだけでなく多くの動物が都会に出てくるだろうことを予言している。
いよいよ「都会の野生動物ジャーナリスト」を名乗ろうかな。
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