輸入すべきは丸太か製材か
日経新聞にこんな記事。
木造建築の資材などに使う丸太の輸入が減っている。海外の環境規制や製材品への移行、国内の建設市場の縮小といった要因が絡み合い、最盛期の1970年代に比べ9割減った。丸太流通の縮小と並行して製材所も減少し、国内の木材産業にとって新たな課題になっている。
林野庁の木材需給表によると、2022年の丸太輸入量は21年比6%減の362.8万立方メートル。戦後の復興期に住宅新設や公共施設、電柱敷設などに木材が必要となり、使い尽くされた国内の森林資源の代わりに供給を支えたのが、米国産などの輸入丸太だ。1973年の丸太輸入量は5248万立方メートルに達していた。
減少したのは、木材生産国が丸太輸出を規制してきたこと。また皮むきや切削などの技術と手間を考えると、海外で加工済みの木材を輸入するほうが効率的。そして国内の木材需要全体の減少。この3つを理由に挙げている。
別に異議はないが、ふと思い出したのが、私が1996年に出版した『「森を守れ」が森を殺す!』の記憶。この執筆のために、東京・新木場だけでなく各地の輸入業者などを回って話を聞いた利のだが、文献を漁ったのだが、ここでわかったのが、歩留りという問題だ。
とくに南洋材の輸出元(マレーシアなど)の製材や合板製造では、歩留りが40~45%。ところが国内では65%を超えていた。つまり、木材の有効利用をしているのは日本だったという結果が出たのである。ならば、日本が丸太を輸入して、全部製材した方が森林伐採量は減るのではないか?
当時、ボルネオなどでは、伐採した木をそのまま捨てている現場が少なくなかった。伐採したものの、中が空洞だったりして使えないとしたのだ。それに比べて日本では、製材屑もそれなりに利用していた。日本は、合板用の場合、最大82%を達成していた。
単純に考えればそうなる。
果たして、あれから30年近くが経って、現在の状況どうなのか。今も輸出している国々の製材技術は低いのか。もしかしたら進歩を遂げているかもしれない。そもそも輸入するのは欧米が増えた。逆に日本は高いままなのか。記事には製材所も減ったことが記されているが、技術も手間もかけられないと、今や日本の製材では歩留りを落としているかもしれない。
いまさら、ではあるが、木材輸入量・国産材生産量だけでなく歩留りの視点も忘れないようにしよう。
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