「財務省が獣害対策におかんむり」な理由
獣害の話題がよく上がっているが、財務省は農林水産省に獣害対策を抜本的に見直すよう要請した……というニュースがあった。
鳥獣対策金、抜本見直しを 予算執行、27事業で改善要求―財務省
ようするに付けた予算が被害減少につながっていないからだ。具体的には害獣侵入対策津用の防護柵の予算(鳥獣被害防止総合対策交付金) のよう。22年度の補正後予算額は137億円で、例年近い金額を支出していたが、被害額は18年度の158億円以降は横ばいだからだ。当初は防護柵の建設と駆除強化で随分下がった。239億円をピークに抑えていたのだが、近年は下げ止まり。
なぜ、被害が減らないのか。ちゃんと予算執行調査で各地の現場を確認したようだ。そしてわかったのは……柵が適切に管理されず穴だらけ、加えて出荷しない作物が農地に放置されていたという。担当者は「これでは獣に食べに来てくださいと言っているようなもの」。
捕獲実績は結構な数があるのに、被害額が減っていない自治体もあるのだが、どうも捕りやすい場所で捕獲して、単に実績(数字)を積み上げているだけで、農作物被害を減らそうと真剣に取り組んでいないことも指摘している。そして「成果を挙げていない市町村にも交付金が交付されるのは不合理」という意見がついている。
柵の設置は補助金でやるのだが、その後誰も管理せず、穴が空いたり壊れて出入り自由状態になっていたり。柵の出入り口を開けっ放しのケースもあるそうだ。柵の問題のほか、農作物廃棄物を山積みにした田畑も、よく見かける。それに里に下りてきて農作物を食べたわけでもない山の中のシカを捕まえて駆除しても、意味がない。これで獣害が大変と言っても通じないだろう。
この感想、鳥獣害専門家には以前から言われていた。同じことを素人の財務官僚にも言われたのだね(^^;)。
まあ、農水省というより、自治体への通告なのかもしれない。しかし、その自治体に配分しているのは農水省なわけで、ちゃんとやる気のある自治体かどうか見極めずにばらまいているのだろう。
一方で、鳥獣を捕るエリアを計画で定め、捕獲実績を把握している自治体は、被害減少額が大きい。真面目に取り組めば獣害は減らせる、と財務省は判断したのだろう。そして自治体への配分の在り方を変えるように求めていた。でも、農水省⇒都道府県が獣害対策の真剣度・成果度合いで補助金の配分を決めたら、手抜き自治体からの突き上げが恐い。査定の仕方も難しいし、下手に査定すると減らされた自治体の恨みを買う……。一律、ばらまく方が楽だし、恨みを買わない。
農水省も、実は獣害対策に本気ではないのである。
最近、獣害とは何かを考えているのだが、そこで思いついたのは、害獣(主にシカ、イノシシ)が増えたからではないかもしれないと思い出した。たとえば奈良のシカの歴史をひもとくと、「人に迷惑をかける獣害」を出すのは頭数ではないことに思い至った。
まだ詳しく論考してはいないのだが、そのうち論じてみたい。
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