このところ、ユーカリを植林する動きがよく目に止まる。
まずは兵庫県佐用町。ここは町が持て余している山林を購入する事業を行っているのだが、今度はそこにユーカリ植林を計画している。早生樹だから20年ぐらいで建材や燃料にできるというのだ。それに対して疑問視する住民運動も始まっている。
ユーカリ植樹に賛否 町の狙いは『放置される森林を買い取り...早く育つユーカリ植えて建材や燃料に』
次に島根県浜田市にも同じような計画が表沙汰になった。
ほかにも千葉県でも動き出している。
ユーカリ
仕掛け人は誰なのか。佐用町や浜田市を探ると㈱ジャパンインベストメントアドバイザーという会社が登場する。もともと飛行機や船などのオペレーティングの会社だというのだが、再生可能エネルギービジネスにも進出しており、太陽光発電を始めている。その次にバイオマス発電の展開を考えているようだ。ただし輸入燃料だと何かと叩かれるので、国内で燃料を調達しようという発想らしい。
中四国に於けるユーカリを活用した
エネルギーの森実証事業
千葉県で計画している㈱エコグリーン・ホールディングスは、ようするに産廃業者がバイオマス発電に乗りだした口か。
しかし、その後ろに透けて見えるのが、東京農工大学だ。ユーカリを研究していたらしい。さらにNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)もチラホラと見え隠れ。どこが仕掛けたのかはともかく、多額の補助金ビジネスになる!と睨んで流れ込んできたのではないか。
しかし、ユーカリとはねえ。外来種そのものなのに、日本の気候に合う品種を選び出しているというのだが。早く育つという点では、コウヨウザンなどと変わらないが、昔のヒーロー(だけど、不祥事で引退した)をもう一度引っ張りだしたような印象。
ユーカリといえば、かつては悪魔の木として批判されたものだ。その場合の舞台は、主に東南アジア。
タイではユーカリを植えて大変なことになった、水はなくなる、動植物は生えなくなる、住民は飢える……とされたのだ。あのころは反ユーカリ学者と反ユーカリ運動家が輩出?したものである。
私は、当時この手の話も信用できずに調べたのだが、ほとんど濡れ衣みたいなものだった。水を吸い上げるのは普通の樹木と一緒(成長が早いだけ多いが、それは在来種と同じ)で、他の動植物を忌避させるアレロパシーだって、たいして強くない。見慣れぬ樹木に当惑したタイの農民の気持ちはわかるが、ユーカリを敵視しても仕方がない。
ただし、東南アジアの伐採跡地にユーカリを植えることが正しいとは思わない。とりあえずの緑化になったとしても、その後在来樹種の森に変えていく必要がある。外来種であり生態系を乱すことは紛れもない事実だからだ。しかし、今も東南アジアには植えられている。それはアカシアなども同じである。
ただ、ユーカリ植林は下火だ。伐採跡地にはユーカリよりアブラヤシを植えるようになったのではなかろうか。ともあれ、時とともに日本では話題に上がらなくなった。反ユーカリから反アブラヤシに転換した学者や運動家も多いはずだ。
そんな古い役者を、今度は日本の舞台に引っ張りだしたわけか。しかも振り付けは、再生可能エネルギー。メチャクチャ、うさん臭い(笑)。
東南アジアに植えられたのは、フタバガキ科の伐採跡地を早く緑化することと、その後製紙原料など金になる木材を得るためだった。
だが、今回の日本では補助金目当てのように思えてならない。どうせ国が莫大な補助金を用意しているだろう。林業再生とか、脱炭素名目が使えるからだ。
しかし早生樹と言っても収穫まで15~20年もかかるのだ。バイオマス発電業者が、20年後の燃料にする木材を育てるなんて悠長な話に乗るわけがない。その頃にはFIT(期限は20年)も切れて、電力買取価格は下がり儲からなくなるからだ。事業から撤退しているに違いない。製紙原料にするにしても、価格は低いまま。ユーカリ建材はどこまで使えるか。
いや、そもそもユーカリは日本で真っ当に育つのか。育てば生態系を狂わさないか。検証はまだ行われていない。
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