今年の米は不作か?
昨日、Yahoo!ニュースでコメントを付けたこの記事。
米どころ新潟、災害級の猛暑でコシヒカリの一等級比率が平年70%→昨年5%に 想定上回る温暖化、「新之助」は窮地を救えるか #食の現在地
私が米作についてコメント? と意外感を持たれた方もいるだろうが、私はYahoo!ニュースに「農林水産業、第1次産業のエキスパート」として登録されているのだよ。まあ、米について特別詳しいわけではないが(^^;)、植物のこととして扱うとともに、産業問題としても切り込める。このコメントに1700を超える「参考になった」が付いた。なかなかの数字である。
おかげで某雑誌から「米の不作について」というコメントを求められた。専門じゃないよ、と言いつつ、ほいほい応えるのが私である。
そのコメントがいかなるものか、それをどう使う気なのか、この際ドーデモよい。私は自分の名で何を書かれても気にしないから。どうせ、雑誌のコメントだ(笑)。
ただし、私の意図だけはこちらに記しておこう。
まず、上記の記事をよく読めばわかるが、米は不作ではない。そもそも扱っているのは昨年の事例。そしてタイトルにある通り、一等米が減ったことである。それを今年も酷暑だから不作だろう……と連想させているのにすぎない。
だが、私は今年は不作ではないと思っている。作柄予想も例年並だ。昨年の経験から、今年は農家も暑さ対策をして頑張っている。雨がよく降ったから、成長はいいのではないか。
ただ今後の台風によってやられる水田が出るかもしれない。秋田県なども、すでに先日の台風でかなり被害が出ているそうだし。
いや、昨年だって不作ではなかった。単に米の質が落ちただけだ。一等米の量は減ったが、2等米はたいして減っていない。
今年、米が小売店の店頭から消えたのは、インバウンドで外国人の消費が大きかったからだろう。観光客は、日本人よりよく米を食う(笑)。たまたま需給が狂っただけ。米不足と米が不作は全然違うのである。
しかし、質の落ちた米は買取価格が下がる。肥料や燃料費は上がったのに価格が下がれば純益は落ちる。農家はやっていられない。また暑さ対策の新たな栽培法なんて言われても、手間が増えるのはイヤ。高齢化も進んでいるから、米作止~めた、という農家も出るだろう。
落ちたのは、量ではなく質なのだ。そして問題は、価格下落なのだ。
この構図は林家と一緒だ。木材は質が落ちたというより質の低い木材ばかりが求められるようになった。そして価格が落ちた。だったら林業なんかやってられるか! となるだろう。林政をころころ変えても、高齢化の進んだ林家は対応しきれない。米作と同じ構造だ。
なお農家の平均年齢は68歳に達しているから、あと10年もすれば大半が引退する。当然、米の生産量も落ちる。質も量も落ちる。この時に、米不足が陥るだろう。
……とまあ、そんなコメントをしたけど、果たして使われるかな? 不作じゃないんなら記事止~めた、かもしれない。
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