再生可能エネルギーへの逆風とバイオマス白書2024
言うまでもないが、昨日、私が歩いた山は生駒山系のメガソーラー建設予定地である。現在裁判係争中であるが、工事差し止め仮処分申請は却下されたので、本裁判の判決待ちの状態だ。おそらく今夏~9月には出るだろう。
私は『盗伐 林業現場からの警鐘』の取材で警察、検察、として裁判といった司法の現場に降れた感触からすると、決して期待できる状況ではない。どんな証拠を突きつけても、結局は担当する司法関係者の胸先三寸なのである。何を捜査対象にするか、立件するかしないか……といった警察や検察の判断から始まり、裁判も解釈で180度違った判決を出すことも可能な実態を知れば、さてどうなるか。「判断」「判決」は個人の人間が出す。その思想信条に引きずられる。
そもそも小難しい理系的な数値で説明した意見書を出しても文系の判事は読めない(-_-;)。いや、読まないのかな。自分の感覚でどっちに有利な判決を出すか決めている(としか思えない事例が多数)。最初に判決ありきで、理屈は後からこねる。
できれば拙著『盗伐』は、林業本ではなくて、司法関係の現場事例として読んでほしいと思っている。
さて、 本題。
地球沸騰化と言われる中、主要な温暖化ガスであるCO2の排出は何がなんでも減らさねばならない。もうすぐ1・5度上昇というティッピングポイント(後戻りできない地点)に達すれば、気候変動は振り幅を拡大させて予測もできないレベルに達するだろう。ちなみに私は、すでにティッピングポイントに達したのではないかと疑っているが。
ところが、その手段である化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーと呼ばれるCO2を出さないエネルギー源を増やす政策は、逆風にさらされている。主に太陽光発電(メガソーラー)、風力発電、バイオマス発電には反対運動が広がっている。
ある意味、やりすぎた反動だろう。窮屈な脱炭素の動きに嫌気爆発といった状態だ。アメリカのトランプ前大統領的メンタリティの人がどんどん増えている。パリオリンピックでも、肉の少ない料理に不満が出ているのと似た感じ(笑)。
私自身は、森林を破壊するメガソーラー、風力などは反対だが、建築物などの屋上や壁面を利用したメガソーラーや洋上風力は容認している。もちろん、景観破壊や低周波の発生、鳥被害など問題があるのはわかるが、それらを低減させつつ実施するべきだと思っている。この際、景観などは犠牲にしても仕方なく、何より気候変動を止めてほしい。
が,バイオマスエネルギーだけは、廃材利用などによる小規模な熱利用以外は、とくに発電は完全に廃止すべきだ。理論的にもCO2排出を減らせない、むしろ増やすことが一目瞭然だからだ。
そこで出ました、バイオマス白書2024
そして日本のバイオマスの中身。
じっくり読んで、今後のあり方を思索する。
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大西洋の海洋循環が30年代後半には停止するかもしれないという記事が出ていました。
本当にもうティッピングポイントを越えてしまったのかもしれませんね。
投稿: Lago | 2024/08/06 08:44
仮に現在の目標値を達成しても、抜け道だらけの脱炭素策ですから、変動は止まらないと思っています。
ティッピングポイントを超えたとき、何が起きるのか……誰も予測できないのが恐い。
投稿: 田中淳夫 | 2024/08/06 09:16