「スマート」なモデル地区
林野庁も、農水省も、環境省も、モデル地区がお好き。それもICTとやらを使った「スマート」な事業地区をアチコチに設定するおつもりのようだ。
たとえば林野庁は、2025年度予算概算要求に小規模な森林の集約化に向けたモデル実証事業を入れている。
ようするに小規模な森林所有者を集約化して、境界線の明確化や不明所有者の特定も進める事業。3億円を計上している。実証事業は2年間で、全国で8カ所程度をモデル地域に選ぶことを想定している。モデル地域では、森林の管理方法や所有する機械といった現状把握し、集約した場合の木材の生産方針などについて話し合う。そこに境界や所有者の特定も入っているわけだ。しかし、どこの市町村でも、それを担う人材が足りないから、ICTの活用を進めるという。そしてサポートする弁護士や司法書士といった森林土地専門の人材を養成することも考えているよう。
農水省の農村振興局は、獣害対策としてICTデータを活用した「スマート捕獲」を強化するため、3年間のモデル地区となる自治体を選定する計画。例えば捕獲場所をGISに落とし込み、あるいはセンサーカメラの記録から出没の多い時期を抽出してグラフ化することなど。この事業で優良事例を発掘して、それを近隣の集落や市町村に展開を図るのだという。
そして環境省は、21年6月に策定した「地域脱炭素ロードマップ」に合わせて、25年度までに少なくとも100カ所の「脱炭素先行地域」を選ぶのだという。すでに脱炭素先行地域は募集していて、24年度現在で、36道府県の計73カ所が選定されている。今年で5回目だ。
選ばれた自治体などに対し、1カ所当たり最大50億円の交付金で複数年にわたって支援する。先行地域は50年を待たずに、30年度までにCO2排出の実質ゼロを目指す。
別に反対はしないけど、これだけアチコチにモデル地区が生まれたら、重なっているのもあるだろうし、みんなモデルになって誰が真似るのか、と思ってしまう。そのスマートやらのICTやDXな機器を使うのは誰なのか。機材があってもスマートになるかどうかはわからないよ。
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また、無駄な事業が始まる。何年前の新規事業が終了した穴埋めのために提案された事業と想像できる。その時代の流行りとなる味付けをして予算要求をする。これらは単に税金の無駄遣いだけでなく、人の無駄遣いに大きな問題がある。行政で本来必要とされる仕事が蔑ろにされ、何も意味のない事業に人員が割かれる。全く意味がないことを証明するには過去の新規事業の効果が残っているかを検証すればわかる。ただし、実績報告などのお手盛りの報告書などは全く意味がない。
この国の予算のあり方に最大の問題がある。財務省(旧大蔵省)は予算査定という権限で自らの省庁の権益を守る。建前は財政の健全化を歌っているが、オリンピックや万博のような単発の事業にはなんのチェックも果たさない。それは自らの権益に影響がないためである。何兆円もの無駄遣いがあってもどうでも良いのである。
予算査定という手続きのために意味のある仕事は横に置かれ、どうでも良い仕事が作られる。そして国民負担が上昇する。選挙に半数近くがいかないのであるからどうしようもない。学問を修めた者たちは日和見であるので上部構造の改革もない。
どんどん国力が落ちているだけなのだろう。
投稿: フジワラ | 2024/11/06 19:51
常に新しい事業をやり続けるというのは役所の宿命ですね。
ただし、本当に「新しい事業」で、試してみる価値のあるモデル地区ならいいのだけど、アイデアも枯渇しているから目先を変えるだけになりがちだし、やることに意義があって、結果は気にしない……というのが現実でしょうか。
投稿: 田中淳夫 | 2024/11/06 23:10