ホクトの火事と廃菌床発電
10月30日の記事。
上田市塩川にあるきのこ生産大手「ホクト」の上田第一きのこセンターから火が出ました。
消防車両30台あまりが出動し消火活動にあたっていますが鉄骨2階建ての工場1棟が燃えていて、出火からおよそ19時間になる現在も火は消し止められていません。
上田第一きのこセンターは、延べ床面積が2万70平方メートルで、ブナシメジを生産していて1日の出荷量はおよそ10トンにのぼるということです。
なんで、こんな火事の記事を取り上げるかというと、キノコ栽培場には何時間も燃えるものがあるのだな、と思ったから。そもそも培地は、おが屑を使っているはずだが、その量はとてつもないのだ。1日に10トンのブナシメジを出荷できるということは、どさだけの培地があるだろう。単純にキノコの10倍の重さがあるとしたら100トンだ。それが1日分なのだから、全体では数百トン以上になるのではないか。一つの培地で何回転させるのか知らないが、そう長く使えないから廃棄量と新たな培地生産量は莫大なはずだ。
ホクトの工場の規模は相当なものだ。
実は三重県松阪市にBPTグループ(バイオマスパワーテクノロジーズ)という会社があって、バイオマス発電をしているという。そのうちの3号機が、ホクトの廃菌床(培地)を引き取って燃料にしているらしい。しかも、発電した電力は全部ホクトに売って、FITに頼らない経営をしているというのだ。出力がいくらかは確認していないが、ざっと年間数万トンの木質燃料が必要なはず。
なお、この会社の北角社長には、以前某所でお会いしたことがあるのだが、私はバイオマス発電の危険性や脱炭素に寄与しないのではないか、という質問を投げかけた。だが、小規模分散型の発電施設を展開しているということだ。(1号機、2号機は、いわゆる未利用材など木材を燃やしているそうである。)
なんでも能登半島の地震で出た廃材も引き受けているという。そもそもバイオマス発電所は、能登周辺にもある。ところが、どこも引き受けないそうだ。おそらくだが、燃料を木質ペレットなどに特化した施設にして、廃材を燃やせる構造になっていないのだろう。
バイオマス発電の効用は、東日本大震災の時も廃材処理が謳われた(そして、震災後にFITもできて、バイオマス発電所が各地にできる契機となった)のだが、現状では絵に描いた餅以上にならない。
燃焼効率とか自動運転を追求すると、木質ペレットおよびPKS(ヤシ殻)になるのである。いずれも輸入である。
せっかくだから、木質ペレット供給国ベトナムの状況を記した記事をリンクしておこう。
〈日本の再エネ支えるベトナム林業〉森林回復と両立させる意外な経営手法と、背後に潜む問題点
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