「林業と建築の勉強会 」から学ぶ
奈良県王寺町の「陽楽の森」で、 TREE FLAG FESというイベントが開かれた。これは森の中でアートあり、工芸品の販売あり、建築あり、木登りあり、サウナあり……というさまざまな行事が行われているものである(以前は「チャイムの鳴る森」という名で開催していた。)。
ちなみに明日も開かれる。
今回はそこに幾つかのフォーラムも追加された。その一つが「林業と建築の勉強会 ヨーロッパの林業と建築の関わり」だ。講師は、法政大学デザイン工学部教授の網野禎昭氏。これに参加。
正直、始まる前は、建築家が林業を語ると、たいてい林野庁の回し者的な「木材を建築に行かして町の森を、そして脱炭素!」とか「CLTで木造ビルを」なんて話になるので、警戒していた。
ところが講演は、違った方向に。まあ、ここで全部再録するのは無理なのだが、バイオマス発電は、ヨーロッパの安全保障政策から生まれたこととか、中央ヨーロッパの4階建て5階建ての木造建築は木材不足の結果であって……といった話が続いて、なかなか目からウロコ的な面白さがあった。加えて興味を持っていた中世ヨーロッパの「フォルスト条例」のことも改めて知ることができたし、私も訪れたスイス・リースのフォレスター学校の建築も登場した。
さらに戦前日本の「山林都市」構想も紹介される。これは、かつてエネルギーを自給しつつ、職住近接の上品な小都市を森の中に建設することを論じた黒谷了太郎のユートピア構想である。
ちなみに山林都市の具現化の一つとしては、生駒山の山上地域に建設された別荘小都市も含まれるのだよ。これはブルーノ・タウトの設計による。また台湾・阿里山の高原にできたタイワンヒノキ林業の町も構想に近い。
結論としては、今の量を追いかける林業は破綻すること。木材の歩留りを上げるローテクが必要なこと……私は、それを「林業が産出する木材で建築を行う」のではなく、「建築で必要な木材を木拾いし、それを山から伐りだす林業」にすることと読み取った。商流を逆転させるべきなのである。
それを実現させる建築が、この陽楽の森で来年より始まる予定である。
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