幻の吉野漆と漆掻き道具
市立五條文化博物館で「吉野の漆掻き道具」展がやっていたのだが、それが最終日であることに気づき、急ぎ覗きに行く。車で1時間半の距離だから、結構遠い(-_-;)。
ウルシノキの樹皮を剥いて、そこに傷をつけ、流れ出る樹液をこそげ取り、壺に入れて集荷する。それを精製して全国に出荷……という流れだったようだ。全国の産地とのやり取りを示す手紙や書類の類も展示されていた。
なかなか渋い特別展だった。市内の某民家の蔵から漆掻き道具が見つかり、寄贈されたものが奈良県有形民俗文化財に指定されたことから企画されたそうだが、そもそも吉野漆が幻なのだった。かつて西吉野では漆の生産が行われていた。質のよさで一世を風靡したそうだが、現在は生産どころかウルシノキさえほぼないだろう。今は柿と梅の産地である。
なぜ消えたのか。まず中国産漆に席巻されたうえ、ほかの産地で吉野漆に中国産を混ぜて「吉野漆」の名で売り出すという商売が行われ、そのため質の悪さが指摘されて値を下げる……というようなことが起きたらしい。なんだか、今でもよくある産地擬装と同じことが明治時代に行われたのである。
そしてこの漆の産地の隣には吉野塗、下市塗と呼ばれる漆器もあったのだが、それも消えてしまった。
この道具類も、今ではつくる人がいるのかどうか。国産漆の産地は岩手の浄法寺と茨城の太子町ぐらいだが、道具はどうして調達しているのだろう。
産業とはちょっと気を緩めると悪辣な偽物が出回り、ブランドを失って消えていくものなのだ。ちなみに、この展示会のために参考にしたのが京都府福知山の漆だそうだが、こちらも消えつつあるところをNPOが引き継いだものなので、産業として残っているとは言えない。
私は、その福知山の漆掻きを取材したことがある。
道具はよく似ているようだが……写っている人は最後の現役だったはずだが、もういない。
なお見学者の中には漆に詳しそうな人が何人かいた。学芸員も困っただろう。私も、つい口を挟んでしまったが(笑)。
展覧会は終わったが、写真は拡散してください、と言われたので、気になる方がいれば見せてもらえることもあるだろう。
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