「自然」の経済……生態経済学プラス1
このところの私の講演、とくに林業関係のテーマでは、ネイチャーポジティブについて語ることが増えた。いきなり地球環境問題を持ち出すと林業関係者は引くのだが、あえて強調している。なぜならネイチャーポジティブは森林と林業活動に直結しているから。そして、この認識が世界の潮流となってきたからだ。ネイチャーポジティブを無視した林業は時代後れ、いや産業として失格の烙印が押されるだろう。
そんなときに「生態経済学」という分野があることを知った。地球環境問題を毛嫌いし、CO2地球温暖化説を必死で否定する。そのうえで産業は儲けるため、林業で儲けたいんだ、という時代後れな人向け(笑)。
もっとも、「生態経済学」は生態系で儲けるための学問ではない。生態経済学とは、経済は社会と有限な生物圏に組み込まれていると考える。現在の生物多様性の重要性を説くネイチャーポジティブの礎とも言える学問であった。
この新しい学術分野を提起したのは、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのロバート・コスタンザ教授である。1989年にISEE(国際生態経済学会)を設立した人だった。そして持続可能な社会の実現に向けた政策提言を行っている。
私が知ったのは、公益財団法人旭硝子財団が主催するブループラネット賞(地球環境国際賞)の2024年に受賞したからである。なぜか私の所に案内が来るようになった。本年度の受賞者はロバート・コスタンザ教授と、受賞団体である生物多様性についての知見と科学的評価を提供している政府間組織IPBES(イプベス)のアン・ラリゴーデリー事務局長とルサンド・ディジバ博士。
生物多様性と生態系サービスの科学的評価を通して、持続可能な経済活動へのパラダイムシフトの実現を提言
これまで生態系は、人間社会にも多くの恩恵、サービスを与えていることは指摘されて来た。いわゆる「生態系サービス」だ。
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