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森と林業の本

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2024/12/01

古代の木材カスケード利用

今の林業を衰退せしめたのは、木材利用の歩留りの悪化だ。

とまあ、そこまで断言はしないが、木材価格が落ちているのに歩留りまで悪化したのでは、林業は儲からない。

そんなときに見かけたのが、古代の木材のカスケード利用である。

そこは藤原宮跡資料室。平城宮に先んじた日本最初の都城跡だが、その一角に奈良文化財研究所の藤原宮跡資料室がある。ここにも寄ってきた。なかなか穴場で人は少ないのだが、展示品は第一級だし、無料観覧できる。第一、立地が遺跡の真ん中(^_^) 。

ここにもハニワや土器がいろいろ展示されているが、やはり目を引くのが、巨大な丸太。

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古代の藤原宮の宮殿に使われたと思われる柱なのだが、実は出土したのは平城宮跡。そしてよく見ると。

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このように中がくり抜かれている。なぜかと言えば、に使っていたからだという。まあ、今なら土管か側溝のような用途かもしれない。ちなみに本当に土器で排水施設もつくられていたから、それは土管そのものだ。

藤原宮は、その規模は1辺5キロを超す大規模な都だったのだが、飛鳥宮から遷都後十数年で、平城宮にまた引っ越す。その際に、宮殿などは解体して部材を平城宮まで運んだようだ。もっとも、再び元の用途には使えない木材もあったから、それを再利用して樋などをつくった模様。まさに木材のカスケード利用である。木材資源は貴重だったのだろう。

ちなみに木材は、当時から滋賀県の田上山から運んだとある。それを川を使いつつ陸上も運搬して藤原宮、つまり橿原市まで運んだのに、またそれを平城(なら)まで移動させたのだから、たいした輸送力だ。ちなみに丸太には、運ぶ際の筏にするための穴まである。

 

余談だが、こちらには日本最初の貨幣・富本銭の展示があった。実は、明日香村の萬葉文化館で本物の富本銭を展示している。それが有料で、私も入場料を支払って見たのだが、なんとこちらでは無料で、しかも常設展示(^^;)。国(奈良文化財研究所)と県、市町村と管轄はバラバラなので、こういうことが起きる。穴開き銭だからではないが、穴場。

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なお、この横に、富本銭より前につくられたと思われる国産通貨もあった。それを無文銀銭という。何の紋様も字も書かれていない、単に丸くて穴の空いているだけ。しかもいびつで、大きさも定まっていなかったようだから、地金の塊で、試作品みたいものだ。畿内で少しだけ流通したようだが、中国の唐銭も入ってきた中、自作したのだろう。みんな試行錯誤しているだよ。

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木製品・木造建築」カテゴリの記事

コメント

その通りだと思います。歩留の低さを考えると、集成材もCLTも木材振興にはなるかも知れませんが、原材料である原木価格を低く設定されて林業振興にはなりませんね。
原木を海外に安く輸出して、輸出先で加工された物を喜んで買う日本人…
日本も、自国の保護主義を強く進める指導者を送り出したいものです。

歩留りを落とすのは、誰も喜ばないのに推進しているという摩訶不思議。
何より木材に「愛」がありませんね。天平人を見習ってほしい。

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