日本最大級のバイオマス発電所
山口県下関市に日本最大級のバイオマス発電所が稼働を始めたという。
長府バイオパワー合同会社(CBP)、およびCBPへ出資する株式会社東京エネシス(以下「当社」)、石油資源開発株式会社、株式会社MOT総合研究所、株式会社長府製作所、ならびに川崎近海汽船株式会社の5社(以下、5社をあわせて「出資5社」)は、CBPが事業主体として計画を推進する長府バイオマス発電所(山口県下関市、以下「本発電所」)の営業運転を、2024年12月30日に開始しました。
本発電所は、木質ペレット100%を発電燃料とする出力規模74,950kW のバイオマス専焼発電所です。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT制度)を利用し、中国電力ネットワーク株式会社へ売電しており、年間約5.2億kWhの売電量を見込んでおります。
出力規模は、なんと74950KW。そして燃料は、木質ペレット100%(海外から輸入)とある。
これ、燃料の量については触れていない。そこで勝手に推定してみる。
一般に5000KW級バイオマス発電所で年間約6万トン、約10万立方メートルの木材が必要とされる。その約15倍だから、90万トン、150万立方メートルとなる。90万トンの木質ペレットとは、どんなものか。
100%東南アジアから輸入というから、多くはベトナムだろう。ベトナムの木質ペレット生産量は、2022年に490万トンだった。現在は500万トンを優に超えているはずだ。それでも6分の1近くを占めるのではないか。なお日本がベトナムから輸入するのは約250万トンだから、90万トンは3分1にもなる。そして150万立方メートルの木材とは、宮崎県の年間スギ生産量に近い。(全国のスギ生産量は1200万立方メートルぐらいだったから、8分の1に相当。)
それを1基のバイオマス発電所で消費してしまうのか。すげえな。
もちろん推定値には誤差があるし、木質ペレットは、アメリカやカナダも大規模な木質ペレット生産国で、日本はそこから大量に輸入している。だが輸入国がどこであろうと、これだけの木材を消費することが重要だ。
それにしても、韓国はバイオマス発電への補助金を打ち切りに動いたというのに、日本ではまだまだイケイケドンドンなのだね。
なお国産の木質ペレットの生産量は、15万8645.5トン(2023年)だった。むしろ減少傾向。全然足りない。
木質ペレットは、その製造時に原料木材の持つエネルギーの半分近くを消費してしまう。まず木粉に砕いて、またそれを圧縮して固めるのだから。そして原木とペレットの輸送エネルギーもバカにできない。そして森林破壊を進める。これで温暖化を食い止めることにはならないだろう。FITを使ってまで、つまり我々が見えない税金(電力料金)を取られてまで推進するものか。
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数年後には稼働を止める結果となることでしょう。もし補助金を使っていたら3年は持ちこたえる必要があります。補助金の返還が必要になるためです。
なぜ継続可能性の少ない施設にこれだけの投資をするのか疑問です。ただ要するに投資先を見つける力がないのが理由と思われます。
国も支援をしている。他にも同じような施設の建設が進んでいる。つまり他にもやっている。失敗しても自らの責任が及ばない。いくらでも言い訳ができる。
新たなものを作り上げるべき地位にいる人達にその能力がないのが一番の問題です。それは社会そのものの根本の問題ですからどうしようもないのでしょう。
投稿: フジワラ | 2025/02/01 09:11
FITは認定から20年間。その後は通常買取価格になります。
太陽光や風力は、基本的に建設したらあとはメンテナンスだけで稼働できるから、20年後もなんとか発電を続ける可能性はありますが、バイオマスは燃料費が莫大にかかります。つまり確実に赤字となるから稼働を止めるでしょう。その後は廃墟になるんじゃないか。それとも税金投入して支えるか。
実は国も自治体も、その先を読んでいない。逆に業者は未来を読んで、20年後に逃げる手立てを考えていますよ。
投稿: 田中淳夫 | 2025/02/01 09:58
朝日新聞のSDGsACTION!2025.01.31の記事から
廃木粉から作ったMIRAIWOODの話
こちらはいくつか事例が紹介されていますが
バイオマス発電のペレットのように輸入ではなく
地産地消、地元で商品を作る際にでるゴミ
廃材を 木粉としてプラスチックに混ぜて
ここでも、木は二酸化炭素を吸収するから排出量にはカウントしないルールで
バイオマス発電と比べたら利用される量は微々たる量ですが
参考まで
投稿: 参考 | 2025/02/01 13:09
ありがとうございます。
でも木粉にプラスチック混ぜたら、もう生態系を循環しないですねえ。それに廃材って、意外と足りない。調達に苦労するんじゃないかな。
投稿: 田中淳夫 | 2025/02/01 16:43