ジビエ嫌いのジビエ・ビジネス
以前、ジビエ、とくにシカ肉の加工場を取材した時に言われたのだが、そこは例外的にビジネスを成功させ、黒字だった。その業者は、シカの解体から精肉加工、ペットフード加工、そして小売りしつつ、レストランも経営している。
たいていのジビエ・ビジネスは赤字だ。イノシシはまだしもシカ肉は全然売れていない、売れても赤字。それを見事に黒字にした手腕とは。
場長に「ジビエ、好きですか」と問われたので、「ええ、時折食べますよ」と応えたのだが、それに対して「そうですか。私は嫌いなんですよ」との返事。ここの事実上のオーナーも「嫌い」なんだそうだ。豚肉や牛肉の方が絶対に美味い、と言われた。そりゃ、そうだ(笑)。食肉として磨き上げた家畜の肉と比べては敵わない。ジビエはたまに食って、その癖を楽しむものではなかろうか。
「ジビエを売り物にしている人は、ジビエの美味さを強調しようとするんですよ。でも一般人は、ジビエを食ったという経験、噂のジビエを味わったことに満足するんです。だから味はできるだけジビエぽさを消して普通の肉と変わらないようにしています」。
う~む。
レストランでジビエを食べた後にジビエを販売すると、よく売れるという。そうした仕掛けでビジネス化をはかったというのであった。
ビジネスでは、商品にほれ込んで売り込まないと、と一般のビジネス本には書いてあるだろう。しかし、そもそも本当に潜在的顧客に好まれる商品なのか、という点を忘れてはいけないのかも。結局、求められているのは、味とか機能ではなく「情報」なのかもしれない。舌で味わうのではなく、脳で「食べた体験」を味わっている。
木材ビジネスもそうかもしれない。
とくに銘木なんてのは、何がよくて何が不細工なのか、素人的にはわかるまい。下手に銘木好きが銘木を扱うと、一般人の木材の好みからかけ離れてしまう。森林にも木材にも興味ないけど「この銘木を高値で売りつけてやる」と冷静に考えている人間の方が成功するのかもよ。
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