見えないカルテルが、木材価格を下げる
面白い論文(のdigest )を読んだ。
建築資材の輸入規制緩和がもたらす原木価格の上昇について~竹中 昂平(帝塚山大)・都築 佑太(京大)
ものすごくかい摘んで私なりに要約すると、木材は商品としては非木質建材と組み合わせて存在することが多いが、その非木質建材(ガラスやアルミサッシなど)はJAS認定などで実質的に寡占状態である。実際に、ガラスでは旭硝子と日本板硝子がシェアの過半を占めており,アルミサッシではLIXIL,YKK AP および三協立山がシェアの大半を占めている……そうである。 ようするに、そこには目に見えないカルテルなようなものがあり、高価格維持戦略が取られている。だから価格は下がらない。すると木材価格が下がる。
たとえば、このような木造建築物の建築コストは、非木質建材がごっそり建築費を取って、予算が足りなくなると、木材を安く買いたたいて成立させている……と見ることもできるわけだ。
だが、輸入品と競争を促せば、否応なく価格引き下げ圧力が生じる。その計算を住宅ローンの金利から導き出している。ローン金利も非木質コストの要素があるからだ。住宅ローンの金利が上がると、木材価格は下がるのだ。
輸入規制緩和による建築資材価格の下落は、製材品、ひいては原木価格を上昇させるであろう。
とある。つまり非木材建材に外国製品の輸入を緩和して競争を促すと、引き下げが期待されるわけだが、その場合に木材価格の上昇が期待できる、というのだ。
これって、すごいことではないか?
もともと木材価格は、極めて不透明だ。そして、この不透明さが、木材業界衰退の原因であると言っても過言ではない。
なぜ不透明かと言えば、小規模業者が多くて連係もしないから、大手業者に対抗できない。そのくせ業者間で足の引っ張り合いばかりして、ダンピング合戦をする。
逆に、銘木などは、仕入れコストや市場の需給など関係なく、業者が思いつきで価格を決める。同じような銘木が、業者によっては半額になったり2倍3倍になることは珍しくない。高い業者が吹っ掛けて儲けようとしているというよりは、ほかの業者がどんな価格をつけているのか知らないから、相場を無視した値付けをするのだろう。
では、どうしたら木材の価格は上がるか?
・非木質建材の競争を促して価格を下げさせることで木材価格を上げる。
・非木質建材部分で稼いで、その利益を木材調達に注ぎ込むことで木材価格を高くする。
・林業関係者が、非木質建材の販売を手がけて儲ける。木は捨て値でよい。
さて、どれを選ぶ? それとも、どれも選ばないという選択もある。面倒くさいから。
ちなみに、この論文を書いた竹中氏のいる帝塚山大学経済学部の東生駒キャンパスは、我が家からもっとも近い大学。10分くらいで着くのではないか。この大学に林業研究者がいるとは思わなかった。訪ねてみようかな。
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