野犬は野生? それとも……
このところ朝日新聞には、よく野犬のニュースが載る。どうやら同じ記者が執筆しているようだが……。
家畜を襲う野犬、被害深刻化 北海道・道東の酪農家「放牧できない」
野犬は愛護動物か害獣か 人へのかみつきも年数十件、牛も衰弱死被害
野生動物ジャーナリストとしてはコメントしないといけませんね(笑)。
この場合の「野犬」とは、ヤケンと読むのか、ノイヌと読むのか。前者は飼い犬が逃げ出すなどして飼い主がいないものを指すが、生活圏も含めて比較的人間社会に依存して、餌をもらったり残飯などを漁っているケースが多い。一般にはノライヌと呼ぶべきだろう。
後者は生まれも育ちも野生で、生活は人に依存しない。住まいも基本的に人のいない野山で、餌は自ら狩をして得る。
厄介なのは、日本の鳥獣保護法だ。ノイヌは狩猟鳥獣なのに対して、ノライヌは非狩猟鳥獣で捕獲することはできない。目的や手段は関係なく捕獲するには許可がいる。実際は狂犬病予防法などを根拠にノライヌを捕獲しているが。
なおノイヌは野山では鳥類もイタチなどの小動物を狩して餌にしていると思われるが、たまにはシカなど大型動物も集団で狩を行う。その点から、私はノイヌこそニホンオオカミの生態的地位(ニッチ)を確保したのではないかと思っている。いまだに獣害問題をタテに「オオカミを野に放て」とアホなことを言っている連中もいるが、その必要はないのである。
なおノイヌの元の品種によるが、シェパード系の狩猟犬の場合、その大きな体格からもニホンオオカミより強いだろう。狩猟能力も高い。
ちょっと驚いたのは、環境省のコメント。野犬は愛護動物(ペット)か害獣かの線引きは難しいとしつつ、「山野にいる犬でもその行動圏に人が居住などしている場合は、原則として愛護動物の犬として考えるべきだ」というのだ。
おいおい、慎重な官僚がそんなこと言ってもよいのかな。
そんなこと言っていたら、人里に居ついたサルやクマまで愛護しなければならないのかと言われかねない。イヌだけ特別扱いか。記事にあるような人里(牧場も含む)に出てくる野犬を駆除できない。これをノイヌ判定しなくてもよいのか。
奈良公園でも、ナラシカを襲う野犬が出るのだが、こちらはどう判定するか。ノライヌだとしたら、シカを守れない。徳川綱吉の「生類哀れみの令」の時代でさえ、シカを優先的に保護したのに。
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