森林経営管理制度の改正
どうやら農林水産省、林野庁は、今年の通常国会に「森林経営管理制度」を改正案を提出するらしい。
この制度、運用開始は19年だから6年目にして改正される模様。(実施を考えれば7年、8年目か。)
いまさら説明もいらないと思うが、この制度は森林所有者が管理できていない森を自治体(市町村)が預かり、それを代わって管理する団体に再委託するというシステムだ。ようするに所有者がやらないのなら、お前の森林をほかの誰かに管理をやらせるぜ、という制度。乱暴な説明……(^o^)
が、肝心の再委託先が見つからないケースが多いらしい。だって、管理放棄している森とは事実上荒れた森なのであって、しかも小規模面積を請け負っても儲からないから。
そこで来年度には集約化に向けたモデル実証事業を行うという。森林が小規模で分散している。まず市町村や事業者、所有者らが集まった地域協議会を設置し、採算が取れる枠組みをつくるそうだ。
そこで林道整備の方針、再委託先となる事業者などを定めた「集約化構想」をまとめる。改正案では、
・複数市町村や都道府県との共同策定も可能とする。
・所有者に対して主体的に委託への同意を働き掛けられるようにする。
・市町村の職員不足を補うため、市町村が一括で策定できるようにするほか、森林情報の解析や所有者不明森林の探索といった事務を支援する団体や企業に事務委託する
・所有者の過半数の同意があれば預かって適切な手入れができる仕組みも設ける。
などが並んでいる。その前に「所有者に対して自ら経営を続けるか、お任せするかの意向調査」が必要であるが。
この中で気になるのは、「主体的に委託への同意」を働きかけ「過半数の同意があれば」という点か。自治体が所有者に委託しろと働きかけるとともに、みんな同意しているんだから、とプレッシャーをかけることにならないか。
それと気になるのは、ここで再委託先が行う「経営管理」とは、実は伐採すると同義語なのだ。伐採しない管理を認めていない。だって、儲けさせてあげるよ、と再委託するのだから。
これまでより強権的に伐採を進めるための制度改革に見える。森林経営は続けたい、ただし伐採はしないという所有者に対して強引に他者の意向を押しつけかねない。
逆に、荒れ放題で伐採して金になる木もない森には、この制度を適用しない気がする。
どうやら改正案は、島根県邑南町で行った「林業事業者から管理しやすそうな森林区域について提案を受けて、面的なまとまりを持った形で事業者に再委託」したケースをモデルにしているらしい。つまり所有者の意向以前に林業事業者=伐採業者の意向を聞いて、伐採したい森を伐採しやすい形に集約化して、委託しようという伐採ありきのスキームである。
問題意識を持っている政治家は、与野党含めていそうにないから、すんなり通りそうだ。
なんか、いやあな感じがする。
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それほど心配する必要はないと思います
大半の市町村はこれ以上手のかかることはしたくない(出来ない)ので、林野庁が推進する某町のような先進的?な取組はやらないでしょう
それはソレでもんたかもしれませんが…
投稿: くさ | 2025/01/28 14:08
おそらく、そうでしょうね(笑)。面倒くさいこと、やりたがりませんから。行政がそこまでして、森林経営管理という名の伐採をすすめて業者を儲けさせてやる必然性がない。
ごく一部の林業に熱心な職員のいる市町村が、挑戦する程度でしょう。
ただ、林野庁は、なんとしても伐採をしたがっているのは伝わりました。
もっと根本的に豊かな森をつくる森林経営管理をめざす市町村が出てきて、そのために森林環境譲与税を注ぎ込むケースはないものでしょうか。
投稿: 田中淳夫 | 2025/01/28 16:15