無料ブログはココログ

森と林業と動物の本

« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »

2025年2月

2025/02/28

文楽に出る木の種類と建築へのツッコミ

昨夜まで東京に行っていた。何をって、いろいろあったのだが、最大の目的は「文楽鑑賞」。

演目は「妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)」という大作で、なんと3部構成10時間! 休憩は幾度かあるが、全部合わせても2時間ぐらい。つまり約8時間座りっぱなしで鑑賞したことになる。多分、途中で逃げ出すだろうな、ずっと寝ていたりして……とか想像していたのだが、しっかり全部観きった! 途中幾度かは睡魔に襲われたけど、全体としてはじっくり鑑賞、感動したのであった。

そもそも演目は、奈良が舞台である。まず妹背山とは吉野川の両岸にある二つの山のこと。話は天智天皇を軸に展開するのだが、場所は飛鳥だけでなく三輪山に奈良の猿沢池も登場すれば、吉野川も重要な役割を果たす。そして奈良のシカを殺せば死刑……というネタもあって、時間も舞台も時空を飛んでいるのだ。

話も盛りだくさんで、悲劇かと思えば吉本ばりの喜劇要素もあるし、ホラーにもファンタジーにもなる。自分の幼い息子殺しとか猟奇的な場面さえあった。

さて、せっかくだからトリビア的な指摘を(^_^)

Img_20250228090624  

これは、妹山背山の段。真ん中に流れる川は、吉野川(え?)右手が背山、左手が妹山。川をはさんでのやり取り(いや、吉野川は幅100メートル以上あるんだけど……)の末に、妹山の女性は首を打たれて背山の男の元に運ばれ、首だけの花嫁になるのであった (゚o゚;) 。

で、この両屋敷の障子。木枠に紙を張ったものは、飛鳥時代にはなかったと思われる。わずかに正倉院に残るものにそれに近い家具があるとされるが、当時、紙は貴重品でこんな一面に貼れなかったはずである。

さらに、写真はないのだが、この障子を開けると床の間が登場する。またひな人形が飾られている。う~ん、これらも登場したのは室町時代だなあ。また首だけの花嫁の婿となる男は切腹しながら結婚式を上げる… え え、え~(゚o゚;) が、切腹も鎌倉時代から室町時代の武士の作法である。このように時空を飛ぶ(^^;)。

こういうツッコミばかりだとイヤラシイので、もう少し楽しい話題として、権力を握った蘇我入鹿の豪華な御殿について語ってみよう。

 

それによると「メノウの梁、サンゴの柱、水晶の御簾、ルリの障子」だという。どんな建築物なんだ。さらに飛び石はコハク、砂は金銀。釣殿に登ると春日の杉は草のようで、猿沢の池もお庭の井戸に見える。どんだけ高いんだ。

よい匂いがするのは、縁側の板が伽羅と沈香だから。どちらも香木である。そして学問所は唐木~カリン、紫檀、黒檀、タガヤサン(鉄刀木)と南洋の稀少木の名が続く。まあ、その後、掛け合い漫才のようになっていくのだが……。

 

この演目は江戸時代中期に成立したようだが、この時代の木材の使い方や、価値基準などが読み取れて面白い。

なお、私が東京まで観劇に行ったのは、招待されたから。なぜならテキストにこんな記事を書いたからである。

20250228_114937

奈良のシカを殺すと死刑というのは、この文楽で取り上げたこともあって世間に広く知られるようになる。ちょっと誇張も入りすぎだが、伝説をつくった作品である。 

Img_20250228090718

実際の観劇には、このテキストを首ったけで突き合わせながらであったv(^0^)。さもなきゃわからない。

この表紙の女・お三輪は、登場時分は喜劇的だったのに、最後は残酷な殺され方をする。これも涙。

2025/02/27

街路樹の寄せ植え

東京の町をよく歩いた。すると、ひどい街路樹が目につく。根元をコンクリートかアスファルトで固め、根が盛り上がって来たら重しで押さえ込み……。もはや虐待かと思うのだが、平河町界隈では別の現象を見た。

1000010276

1000010277

1000010278

寄せ植え(笑)

勝手に生えてくるわけないし、行政がやることでもない。植物的には、問題があるかも知れない。狭い植樹枡の中にたくさんの植物を詰め込むのは。

でも、近所の人がやったのだろうな、と思うと、楽しくもある。

2025/02/26

洋酒樽の世界

北海道旭川に樽工場ができたというニュース。

旭川にウイスキー樽工場 京都のメーカーが建設へ 北海道産ミズナラ使い

この樽、洋酒樽である。たまに話題になる日本酒や味噌、醤油の醸造に使うスギやヒノキの桶樽とは違う。

実は、この記事に登場する有明産業には、私は以前より興味を持っていた。樽や桶の復興が話題になる際に、それとは違う洋酒の樽は広葉樹、とくにオーク(ミズナラ)でつくる樽だ。同じ樽でも別の世界。

もしかして、今後は洋酒樽、広葉樹材の樽が伸びるのではないか……なんて思っていた。この記事によると、実際に道産ミズナラを使ったウイスキーなどの熟成樽製造を計画し、2027年4月稼働予定という。

もともと有明産業は、宮崎県に基幹工場を持っており、年間5000~6000樽を製造しているという。ただ材料は、海外産のオーク材が5~6割を占めるそうだが、道産ミズナラの酒樽も年間1000~1500樽製造しているとある。新工場が同規模としたら、5000樽ぐらいつくることになり、一気に2倍になる。

そうか、需要はあるんだ。ジャパニーズ・ウイスキーが持て囃され、なかには海外産のウイスキーを日本で樽に漬け込んで数か月で「日本産」に化かして出荷することもあると聞くが……。当然、ウイスキー以外の洋酒にも使えるだろう。

日本のミズナラの大径木は、そんなに潤沢にあるわけではないので、そんなに規模が増やせるのか、とも思える。しかし、ほかの広葉樹材でつくる可能性だって探ったらいい。あるいは、細いミズナラ材を活かして樽にする技術開発をすることも考えられるかも。

Photo_20250224105901
大阪キタのサントリーバー。古い樽材から家具をつくる動きも、そこそこあるね。

こんな記事も書いていた。

酒樽から作られた家具

 

2025/02/24

再造林すればいい、のか

このところ、林野庁や林業各道府県も再造林を強く押し出している。木材生産量を増やせと言いつつ、再造林をしっかりするように、というのはマッチポンプ的でもあるが、とにかく皆伐をしても再造林をすれば大丈夫と主張したいかのようだ。

私は、この発想に疑念を持っている。「皆伐したら再造林する」というのは、最低限の努めであり、やらないよりマシぐらいである。やってもダメなケースも少なくない。やり方の問題もあるし、そもそも伐るべきでなかった林地もある。
各地の素材生産業者や自治体の林業関係部署が「再造林したから、いくら伐ってもかまわないのだ」と言い出す予感(すでに、そう思っている業者も多いだろう)がして、ここに問題点の一つを記しておきたい。

2_20250222160902 
ツリーシェルターの林立する再造林地。
1_20250222161001

私が全国の林業地を回っていた昔、地元の方と酒を酌み交わしたりしていると、ふと出たのは「皆伐の跡に植えてもダメだ。次の代の木は今のようには育たない」という声だった。ようするに樹木、つまり枝葉と幹を持ち出せば、それだけ土の栄養分は失われる。次の植林木は今と同じように育たない……というのだ。

私は、若干専門的な反論をした記憶があるが……細かな土壌養分の収支や施業法のあれこれはともかく、理論的に木材を森から持ち出せば養分は失われるのは間違いない。また皆伐すれば表土の流出が起きやすくなることも事実で、それによっても養分は失われる。

この点は、先に紹介した四手井綱英氏の『日本の森林』(中公新書 1974年初版)にも載っている。

皆伐することで栄養分の豊富な腐植土A0層が失われやすい。一回伐れば1割、2割と失われ、3回転くらいすれば育たなくなる(可能性)を指摘する。

この点に関しては、堤利夫氏(四手井教授の後輩)の『森林の生活 樹木と土壌の物質循環』(中公新書 1989年初版)に、やや反論じみた記載があるのだが、それでも徳島県の木頭林業地のスギ林で、皆伐を繰り返すごとに土壌中の炭素、窒素の集積量の減少が起きたことを指摘している。

ただ次世代の森林が戻ってくると、次第に定常常態に戻るという記述もある。問題は、それがどんな周期かということだ。戻るのはリター、つまり枝葉が地表に落下して、腐植することが前提だ。また、山地斜面の上からの土壌の移動によって、ミネラル分の供給が行われるケースにも言及している。ただ、結果的にそれが足りているのかいないのか、わからないのである。

地力の維持からみて伐期をできる限り長くすることが望ましい」とある。そして林地にも施肥をするべきともあるが、後者は現実的ではあるまい。

41lrunyn4el 20250222_155220
土壌中のカルシウムと窒素の量は、漸減していく。

皆伐して長く放置されれば、表土は残っても、降雨と日射により、おそらく土の組成も変わってしまうだろう。

では、そどうするか。たとえば吉野林業では、約500年の歴史の間に幾度も伐採と植林を繰り返したが、地力が衰えたようには思えない。もともと成長速度を抑えて細かな木目をつくる方針であるし、長伐期で80年以上、ときに100年以上の周期で回しているから回復のサイクルに入っているのかもしれない。皆伐する際も面積は小さい。せいぜい数ヘクタールだろう。

だが現代の九州では、数十ヘクタールもの大面積皆伐をして40年伐期で回そうとしている。事実、戦後の植林地は40年で十分な太さに育った。現在は50年60年生のスギ林を伐っているが、今後の皆伐地も40~60年で元どおりに成長するという前提だ。それを繰り返す林業を将来計画に入れている。

だが、私は無理だろうと思う。短伐期で大面積皆伐は確実に土壌流出を伴うし、同種の一斉造林はその種が必要とする同じ養分ばかりが吸収される。アレロパシー物質も貯める可能性がある。これを繰り返せば森林の持続性を失いかねない。
せっせと再造林を進めても、やがて成長は悪くなり、50年後に伐れるような木に育つか怪しい。枯れるかもしれない。温かいから成長がよいとしているが、実は気温が高ければ土壌中の有機物の分解も早く進む。ヘクタール1500本以下の疎植であることも、よいのか悪いのか。
2回目はなんとか60年で伐れても、3回目、4回目はどうなるか。九州でも80年伐期にするぐらいの深慮遠謀がほしいものだ。

そういや三重の尾鷲林業は、今でこそヒノキ主体だが、昔はスギだったという。しかし土壌が流亡して痩せたのでヒノキ林業に変わったと聞いたことがある。これ以上痩せたらマツ林業に転換?

まだまだ森林の生理は謎だらけだが、物質循環を含めた森林生態学の知識を基礎に置かないまま、安易に林業サイクルや施業法を選択すると将来に禍根を残す。再造林したらいい、と単純化することの危険を感じる。

 

2025/02/23

橿原神宮外苑の森

橿原市の橿原神宮に寄り道した。

橿原神宮は、畝傍山の麓に明治になってから建立された神武天皇を祀っている神社で、神武天皇陵の隣にある。ここを神武天皇の御陵だとしたのには、いろいろ裏話があるのだが、ともかく、ここにあった小さな塚・四条ミサンザイを元に、ここだと治定したわけだ。そして、徐々に大きな古墳に仕立て上げた。

つまり近代に造営した古墳と言えなくもない。

そこに、こんな森があった。「イトクの森古墳」。なんと、敷地内に別の古墳があったのか。前方後円墳だが、神武天皇陵を建設の際の土取りでかなり壊されたそうである。

20250220-162048

森と呼ぶには難しいが、神社が祀られている。

その周辺の森は、こんな具合。橿原神宮外苑である。明治神宮の外苑は再開発で揉めているが、あちらは街路樹みたいな木々を伐採するな、と騒いでいる。もともと森ではない。こちらはかろうじて森林ぽく保っている。ただ。

20250220-162643 20250220-162535

カシの木は大きく育ったが、その下の植生がないか、ササになってしまっている。人工の森とはいえ、100年以上経つのだから、これではもったいない。もう少し豊かな森にすべきだろう。ちなみに内苑も同じ状況。ただし隣の神武天皇陵には、明治神宮の内苑の森と張り合えるほど豊かな森が育っている。

内苑と外苑。この二つの違いは意外と難しい。試みに検索してみると、明治神宮の例のようだが「内苑は、人々が御祭神の御神霊をおまつりし、御神徳を仰ぎ敬うことを目的としています。 また、外苑は御祭神の御聖徳を永く後世に伝え、国民の体力の向上や芸術文化の普及となるべく」とある。
橿原神宮は違うようだ。外苑には「若桜友苑」という、戦没者を祀るところがある。予科練出身者と、空母・瑞鶴の碑があった。

いずれにしろ性格が違う両者の森

2025/02/22

ハイキング道の落とし穴

生駒山系には、いくつも森林公園がある。そして遊歩道も伸びており、ハイキングをする人も少なくない。

ただ、それらの道の中には途中で消えてしまうような廃道もあれば,個人が作ったらしく、違法で安全が確認できない道も少なくない。なかには道でないところに分け入って近道を作ってしまうとか、人が通るから道らしくなったところもあれば、勝手につくって勝手に道標まで設置しつつ、実際はその道がどこに伸びているのか、また管理はしているのかわからないような道もどきもある。気をつけねばならない。

それを警告する標識もある。

が、これはイカンだろう。

20250211-144651

こちらはハイキング道ではない? しかし、いかにも怪しく茂みを切り分けたかのような道が伸びる……。

当然、私はこの道を進んだv(^0^)アマノジャク

途中までは、わりとしっかりした道。伸びる方向は公園の敷地から外である。どうやら民有地に入るためのルートらしいが、案の定、途中で消えた。

その後はかき分けつつ、別の道に出つつ、また脱線しつつ……と進む。

20250211-142051

なんだか、丘に登る。

20250211-143602

こんなサクラの大木に出会う。

こうした“発見”も山歩きの醍醐味だ。ただし、私は自分の歩いた跡を可能な限り消す。そこが踏み分け跡から道にならないようにしております。自分で山道を造って喜ぶ趣味はないのである。

2025/02/21

住宅地で猟銃発砲法案、いよいよ

政府は、本日「住宅地での猟銃使用を可能にする鳥獣保護管理法改正案」を閣議決定した。とうとう出ましたか。

クマの人里出没がこれほど相次ぐと、こうした手段も取らなくてはならないのだろう。これまで一貫して、国民から銃器を遠ざける政策を推進してきた警察からすると忸怩たる思いかもしれない。

とはいえ、条件は甘くない。日常の生活圏(それはどこだ? 村役場の周辺まで許容? それとも農家が数軒ある集落も入れる?)に出現した場合、市町村長の判断で住宅地でも危険鳥獣の猟銃での駆除を可能にするとした。

猟銃使用の条件は、
①危害を防止する措置が緊急に必要
②地域住民に弾丸が達するおそれがない――など。

ただし、市町村長が現場で判断するわけはないので、代行する職員が状況を報告して決めるのだろうか。結局は警察官なのかもしれない。それでは、今とあまり変わらない。
物損が生じた場合は市町村長が補償する措置もあるが、これは保険を適用する。

なお「危険鳥獣」と定義するのは、ヒグマとツキノワグマ、イノシシの3種としている。鳥獣なんだから鳥も入れてほしいけどなあ。ワシ、タカは無理として、人を襲う鳥としては……カラスか(^^;)。ダチョウが動物園を逃げ出したら駆除できるだろうか。

住宅地のクマ、猟銃駆除が可能に 政府が法案を閣議決定

Photo_20250221163701 日経新聞より

 

 

2025/02/20

イオンモールの喜久屋書店

ちょっとイオンモール橿原まで行った。

ここにある喜久屋書店は、おそらく奈良でもっとも広い書店だろう。ジュンク堂書店奈良店より広い。

やっぱり行うのは自著チェック!

1000009362

1000009363

ありました(*^^*)

ただ森林カテゴリーはなく、農業分野と郷土コーナー。『山林王』はやはり郷土本扱いがありがたいね。

ちなみに3月1日になると、このイオンモールに世界最大の「無印良品」の店がオープンする。そこに書店も併設するそうだが、なんと『山林王』を50冊も注文してくれたそうだ。(事実)

これは、きっと『山林王』を山積みしてくれるにちがいない!(期待)

そして爆売れする!(願望)

増刷り決定!(夢想)

テレビドラマ化決定!(妄想)

楽しみだなあ(笑)

1000009365

 

2025/02/19

『日本の森林』に書かれていること

四手井綱英・京都大学名誉教授の『日本の森林』を改めて目を通している。サブは「国有林を荒廃させるもの」。

Img_20250219111349

なんと1974年の出版である。私は、少し遅れて80年代に購入したのだと思う。それにしても、その内容の新しさ…というべきか、今の時代にぴったりだ。まず目次は、こんな風。

日本の森林と林業の現状
造林技術のあり方―生産力増強計画(拡大造林計画)を批判して
続・造林技術のあり方
いいたいことをいわしてもらおう
森林生態学の歩み
生産力増強と短期育成
亜寒帯の森林生産力
広葉樹林について
秋田の天然スギ
木曽谷のヒノキ
裏木曽・飛騨視察記
九州の照葉樹林
自然開発・自然保護・林業

私は大学生の時に読んだのかと思うが、よく覚えていない。ただ、四手井氏の本はかなり読んでいる。この本にも、蛍光ペンなどの書き込みが多くある。

ここで、ああだこうだと本の紹介はしないが、とくに目を止めたのが最後の章。

そこに「これからの林業を考える前提条件」が記されている。

 

まず林業は、時間がかかるので未来は誰にもわからない点が記されている。今、ヒノキが売れるからと言ってヒノキを植えても育ったころの市況はどうなっているか。といった点だ。「全く不思議なことに、森林育成の長期性にかかわらず、いわゆる林業人は、こうした目先の動向の変化に非常に敏感であり、だれかがこれがよいと提案すると、すぐそれに便乗してしまう。」とある。

これは、今なら「もっと敏感になれよ!」と思ってしまうことも多くて、便乗してほしいほど鈍感なのだが。

 

そのうえで前提条件は、
(a)自然は自然としてもちいるべきである
(b)森林の生産物である木材の主な用途はやはり建築材料、とくに内装用の美術品として用いられる公算が多いであろう

(c)外材の輸入は当分続くがしだいに少なくなってくるであろう

(d)林業労働者は今後も減少するに違いない

なんか、今でもぴったり合う。とくにbの「内装用の美術品」という点が、私の予想と重なる。ただし用いられるというより、用いられるべき、なんだが。

そして「私の考えるこれからの林業」の項目。

(a)樹種の多様化
(b)長伐期・高蓄積林の実現
(c)全国土、全気象区にわたって自然保護地として保存せられるようになるし、またそうすべき

これまた私の意見とぴったり!

なぜ私がこのような意見を持つようになったかと言えば、この本を読んだからではなく、その後の森林現場、林業の実情を取材する過程で行き着いたのだろう。この本のことはすっかり忘れていたのだから。つまり実直に現場を見れば、行き着く意見は同じになる。

なお四手井氏は、林業研究者であると同時に日本の森林生態学の泰斗、創始者と言ってもよい。森林生態学を知った上で林業を考えた結果の意見なのだ。林業に関わる人は、すべからく森林生態学を学ぶべし、という私の意見にも合致する。

今では、なかなか手に入る本ではないが、多少とも内容を知ってほしい。

2025/02/18

Y!ニュース「輸入燃料はFIT打ち切り!…」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「輸入燃料はFIT打ち切り?バイオマス発電のカラクリ」を執筆しました。

先日、韓国がバイオマス発電の補助金を打ち切るゾ、という情報が入ってきて、なかなか思い切ったことを韓国はするんだなあ、日本は遅れているなあ、と思っていたら、今度は日本もFIT改正を打ち出したニュースが。

おお! これで少しはまともになるかと思って情報をじっくり読んでみたら、なんのことはない、抜け道だらけではないか!と気づいたわけであります(´_`)。

どうりで世間の反応は薄い。もし輸入燃料を全部外すことに決まったら、従来の業者は大騒ぎするだろう。なんたって、日本最大級のバイオマス発電所が山口県にオープンしたばかり。

日本最大級のバイオマス発電所

これも燃料は100%輸入だ。

実は、各地のバイオマス発電所が破綻・休止・経営陣の交代が相次いでいる。

静岡県富士市の鈴川エネルギーセンター発電所は昨年12月に発電を停止した。
北海道バイオマスエネルギー社は、下川など2つの発電所を持っていたが、昨年10月に清算した。
今年1月には和歌山県の新宮フォレストエナジー社も破産手続に入った。

バイオマス発電所は、全国各地で経営が行き詰まっているのである。

そのうち、FITなんぞ関係なく、バイオマス発電がどんどん閉鎖、廃墟になっていくのではないかなあ。

 

2025/02/17

ユドノモリの森の消失

以前、「看取られる神社」という本を紹介した。

ここには消える聖地が紹介されているのだが、その中の一つに奈良県斑鳩町のユドノモリが取り上げられている。ここは、消えるはずの聖地(神社)が生き残っている例として登場した。ユドノモリとは、湯夢ノ森と表記するそうだ。聖徳太子が湯浴みした伝説が残るという。なかなか古い歴史を持つのだ。

著者の子供の頃から見てきたもので、元は野椎神社だったそうだが、明治の合祀令で近くの阿波神社に合祀されたという。つまり神社でなくなったのだが、森の中に祠があり、近所のおばあさんが水を供えていた。つまり信仰は続いていたわけで、神社でなくなっても聖地であり続けたらしい。

これにいたく興味を持ち、また斑鳩町なら行けない距離でもない。というわけで訪ねてきた。

場所を確認しようとGooglemapで探したのだが、斑鳩町阿波の中に「湯座の森古墳」とある。湯座?古墳というのはどういうことか。不思議に思いつつ訪ねたのだが、住宅地の中で、狭い道が入り組んでおり、なかなか車で行くには苦労する。

それでもたどり着いたのだが……もう、そこには森はなくなっていた。わずかに1本2本程度が残されていて、後は切り株になっていた。かろうじて祠は残されている。

2_20250217115901

しかも、周辺は宅地と駐車場に囲まれている。想像以上に狭い土地であった。しかし、本にあった通り、奥には池(の跡)もある。

5_20250217115901

本に乗っている写真では、もっと木が生えている。撮影がいつかわからないが、出版が今年なのだから、そんなに古くないはず。つまり、伐採されたのはつい最近なのだろう。

なおグーグルマップのストリートビューにも大木が何本もある映像が残る。ただ草刈りは行っており、公園のようにすっきりしている。

伐られた大木には、「阿波村所有につき立入禁止」とある。阿波村という地名が残っているのもすごい。

6_20250217115901

それにしても、神社でなくなっても100年以上引き継がれた聖地なのが、急速に信仰はなくなったようだ。売りには出さないと思うが、駅に近く住宅地のど真ん中だから、土地の価値は高いだろう。

森という名を残すにはあまりに狭いし、肝心の木もなくなってしまった。さらに池も干上がっている。これは池に害虫がわいたからかも水を抜いたのかもしれないが、聖徳太子の伝説があるとなれば、史跡になってもおかしくないのだが。

森が森として保たれるためは、単に人為が入らなければいいのではない。むしろ人の思いがなけれは消える。


ちなみにGooglemapの名前と古墳表記は間違いでしょう。

2025/02/16

木材輸出に関する林野庁の政策

林野庁ホームページにあった「木材輸出に関する情報」の最新版木材輸出をめぐる状況(2024年11月)に目を通した。

Photo_20250215223201

木材関係の輸出額の推移がグラフになっているが、2023年が621億円。目標として25年に718億円、50年に1660億円としている。まあ,これぐらいの目標はいい。ただ現在までの品目内訳を見ると、圧倒的に多いのが、丸太。次が合板。(その他には何が入っているのか……)

Photo_20250215223501

しかし、丸太も合板も原料価格は安い。あまり利益率は高くならないだろう。もっとも利益の出るはずの製材は低いのである。

そこで、製材の輸出促進にどんな政策を掲げているか。

Photo_20250215223901

中国や韓国には、木造軸組構法の普及を掲げている。これって、日本式の建築方法を教えて、日本の製材を買ってもらうということ?

アメリカには枠組壁工法用の製材のマーケティング……。アメリカに日本的家屋は無理と考えたのか。

かつて、アメリカが日本に木材を売ろうとしてツーバイフォー工法を普及させようとしたが、日本はほとんど受け付けなかった。それを真似て、中国に日本式を教えても受け付けないんじゃない? 

もっとも多い中国の動向はこんな具合。

Photo_20250215224501

大半が丸太(笑)。製材は自国内で行うのだろう。より利益率の高い二次加工品である木工品、食器、家具、内装品、建具を増やすことを考えた方がいいのではないか。

ちなみに私の一押しの木製家具だが、輸出先は中国、台湾が多い。香港も加えると、半分近くになる。ここをもっと伸ばすことを考えてほしいものだ。すでに輸出額の1割強を占めるのだから。

Photo_20250215224801

何が欠けているのか。小さな木材輸出という分野から日本の産業の動向を眺めてみるのも悪くない。

2025/02/15

木製橋梁は増やせないのか

大阪ミナミの道頓堀川にかかっていた橋。

Photo_20250215171601
太左衛門橋とある。

江戸時代の姿を再現したらしく、なかなか風情があると思うが、歩いているのは外国人ばかりになっている(^o^)

ちなみに完全な木製というわけではなく、従来の鉄骨らしい橋の両側に木製部分をくっつけた構造。

思えば木材の用途として橋梁は忘れ去られているが、戦前は橋と言えば木製だったし、大径木材の使い道として船と橋梁は欠かせない存在だったはず。現在、大径木化した国産材が持て余し気味だが、こうした使い道をもっと増やせないか。
スギは大径木でも強度が不安……と思われるが、なに、この太左衛門橋のように鉄骨で補強したらいいのである。

無理して強度を上げるのではなく、ちょっと鉄骨に支えてもらえばよいのである。そして見た目は木造にすれば風情は増す。外国人を喜ばせる木の使い方ではなかろうか。

ちなみに道頓堀筋、戎橋通りで見かけたお店。

Photo_20250215171801

なぜか店の中に鳥居があるのだ。実は、ほかの店でも、大小の鳥居を見かけた。

まあ、触ってみると本物の木ではなかったが、こういう景色を外国人が喜ぶのなら、本物の木を使ってもらおうよ。

Photo_20250215172801

おまけ。法善寺横丁の水掛け地蔵尊。この苔を見よ。(多分)石造だろうが、表面に苔を育てたら植物化できるではないか。

2025/02/14

緊急猟銃対策と「生き物の憲法」

とうとう環境省が、住宅街に出没したクマに対する猟銃駆除を市町村長の判断で可能とする法律の鳥獣保護法改正案を通常国会に提出する

「緊急猟銃」という用語を使うようだ。

クマ被害の中“市街地で猟銃使用 市町村長判断で”改正法案へ

K10014684371_2501021842_0103043038_02_03

条件は、こんな具合。

1、クマが住宅地など日常生活圏に侵入
2、人の生命、身体に危害の恐れ
3、猟銃以外では捕獲困難
4、住民に弾丸が到達する心配がない

これらを満たした場合に許可される。ほかに民間保険に入っておいて被害が出た場合は補てんするとか、出没周辺の通行制限、避難指示を可能にするなども入っている。これまでは要請だったのだね。なおイノシシも対象にするようだ。

ここまで出没が多発したのなら仕方がない。しかし、とりあえず……という感じの改正で、対症療法的なのは拭えない。もっと野生動物に対応するための基本法などがほしいと思う。鳥獣保護法ではなく、鳥獣管理法になるのか。本当は、植物の外来種対策も含んだ野生生物管理と保護の理念を示す法律が必要ではなかろうか。別に法律で縛れというのではなくて、基本理念がわからないかからだ。できれば生態系保全に関する日本の寄って立つ考え方が知りたい。

今の日本の法律では、生物に対する規定が弱くて、何をめざしているのかわからない。人じゃないから物扱いするかと思えば、やたら保護を唱えて被害対策をしづらくする。愛玩動物(ペット)と家畜家禽と研究対象、動物園などの鑑賞・保護、そして野生……と混在している。それらを広く識者とともに議論して、生き物の憲法のようなものを示してくれないかなあ。

しかし、納得できる法文で制定するには何年もかかるのだろうなあ。ようやくまとまった頃には、事態は一変しているかもしれないなあ。

2025/02/13

Wedge「スギを伐採しても花粉症がなくならない」を書いた裏事情

Wedge on lineに「【悲報】スギを伐採しても花粉症がなくならない理由、世界の花粉症患者は4億人以上!結局どうすりゃいいの?」を執筆しました。

タイトルは編集部がつけたが、「どうすりゃいいの?」と聞かれたら、「お身体、大事なさってくださいね♡」ぐらいにしか応えようがない。

とにかく花粉症対策と言えば、スギを伐るという発想の貧困さを指摘したかったのである。ほかのどんな病気になっても、病原菌に文句いうことはないはずだ。コレラでもペストでも、エイズさえ、それぞれの菌、細菌、ウイルスには文句を言わない。言えない。そりゃ、内心「こいつがいなかったら……」と思う人もいるだろうが、コレラ菌を絶滅させよ!と声高に叫ぶ人はいないだろう。水虫になったら、白癬菌をこの世から消し去ろうとは思わない。自身の足に住みつかないように清潔にするのが先決だ。

極めて単純なお話を記事にしたのである。

内容的には、これまで幾度も各媒体に発信してきたことなので、それほど新味はないはずだが、改めて調べる過程で花粉症の奥深さ?が見えてきた。日本よりアメリカの方が花粉症患者が多いらしい。アフリカにも多い。日本だって、花粉症が発見される前から似た症状が報告されている。

花粉症対策でスギ伐採に注ぎ込んでいる資金を、治療薬やワクチン開発に投入すれば、もっと早く完成するかもしれない。林野庁が花粉症対策に手を出すのは、それが補助金行政に都合がよいからだろう。
その際に反ワクチン論者が登場する……かどうかはわからない。アホはどこでもいるから。。。

 

Photo_20250213155801

2025/02/12

樹木葬を選ぶ理由

いまや新たなお墓を作る人々の約半数が、樹木葬タイプだという統計が出ている。そして樹木葬を選ぶ理由についてのアンケートを発見した。

樹木葬の消費者全国実態調査(2024年)

これはお墓に関するポータルサイト「いいお墓」で行われた調査。

  • 調査期間:2024年1月19日(金)~1月31日(水)
  • 調査方法:インターネット調査
  • 有効回答数:873件(全体1,791件)

Photo_20250212162801

「継承の課題」を選んだ人が74.8%という結果だ。あと、安いから、という点もある。

Photo_20250212162802

一方で、樹木葬のタイプは、「里山タイプ」「公園タイプ」「庭園タイプ」の3つに分けているが、それらの説明はこんな風。

Photo_20250212163201

森になる、自然に帰るというのが里山タイプなのだろう。公園と庭園の違いとは何か。

広い園内が全部樹木葬なのが公園で、従来の石墓墓地の一部に設けられたものを庭園としたのか。

いま一つ、納得がいかない(笑)。そもそも樹木葬という言葉自体が、森に帰るべきで、石標の代わりに樹木を植える、あるいはすでにある樹木を標とするという定義だったはず。しかし、現実に作られた樹木葬墓は、森づくりは頭になく、単に石標を樹木に変えただけのものが多い。いや草花を植えるが、石の墓標もあるタイプが少なくない。ひどいのは木もない。芝生に小さな石標だけという墓もある。

公園、庭園タイプは、共にずっと維持し続けないといけないから草木の手入れが必要だ。となると、継承の問題は解決するのだろうか。一定期間が過ぎたら合葬するのかもしれないが、それなら石墓でもできることなのだが……。

なお、お骨を納めるカロートは、土に骨が触れる仕組みでないと自然に戻らない。が、実はコンクリート製が多いのである。そこにお骨を納めても骨が分解することはなく、ずっと骨は残るだろう。ただでさえ火葬していると、骨は無機化しているだろうし。

とはいえ、樹木葬という言葉を商標登録しなかったため、みんな使い放題になってしまった。

樹木葬という言葉の定義がはっきりしないことが原因だ。やはり法律などではっきりさせた方がいいのではないか。

私自身は、もう樹木葬という言葉を消すのは無理だから、自然に還る埋葬法を「緑の埋葬」と呼んだらどうかと提言している。これは環境に優しい埋葬を意味する英語のグリーン・フューネラルから取った言葉だ。ここに森に還る樹木葬のほか、海洋散骨など自然への循環を意識したタイプの埋葬法を含ませる。公園・庭園タイプの樹木葬は入れない。

地味なようだが、こうした墓地制度をはっきりさせないと、禍根を残す。

5_20250212165001
これは公園タイプ?庭園タイプ?

2025/02/11

切り株バウムクーヘン

つい買ってしまったケーキ。バウムクーヘンである。

通常、自分でケーキを買うこともない人生(^^;)なのだが、つい人生観を狂わせた!のは、樹木の断面、切り株ぽかったので。

3_20250211113901

もともとバウムクーヘンとは、ドイツ圏のお菓子だが、現地ではそんなに有名ではないらしい。ただ木の棒に巻きつけて焼き重ねていくので、年輪ぽい生地になる。日本ではそれがなぜか喜ばれるみたいで、普通に出回っているし、専門店もあるね。なぜ、本場をしのいで日本で流行っているのかは謎。

ただ、一般に売っているのは、円筒形で幾何学的な模様としての年輪だが、この商品は本物の切り株ぽいではないか。太くて焦げた木目部分は、何があったか想像すると楽しい。まあ、その年に大火事があって……ということはなく、ついよそ見して焦がしたよ、という想像だが。

発酵バターを使っているハードタイプで、切ったりかじる際にもかなり硬かった。味は濃厚だ。バターの香りがすごい。

4_20250211114201

縦断面はこんな風。樹木の木目の勉強になる(笑)。

ちょうど帰省していた娘と美味しくいただきました。

調べてみると、3月4日が「バウムクーヘンの日」なんだそうだ。ちょっと早すぎたか。

 

 

 

2025/02/10

我が家の「永久凍土」

超寒波が来たと、連日テレビは大騒ぎしたが、こんな時こそ庭仕事(^-^)/ 。

と思って庭に出た。もちろん、防寒はしっかりする。まず落葉や落枝の片づけて腐葉土づくりのため積み上げる。さらに家庭菜園部分の土壌の耕作を行おうと思ったのだが、そこで気づく。

我が家に永久凍土ができとった。。。。

20250208-134709

写真ではわかりづらいだろうが、この表土下1センチぐらい下は、ガッツリ凍っていた。よく見ると、氷の粒も見える。地下水も凍っている。

20250208-135001

スコップも刺さらない。カンカンと弾かれる。体重かけても、削れる部分はごくわずか。完全に凍っていたのであった。深さ10センチぐらいまで氷で固まった土ではないかな。庭のバケツの水も凍っていたが、その厚さも10センチ級だ。

永久凍土とは、氷河期時代より凍って、夏でも年中凍り続けてきた土地。まあ、永久なわけなく、おそらく数日で溶けると思うが(^^;)、気分は永久凍土なのである。

なお、金魚池も氷が張って割れないほどだが、その下に金魚が透けて見える。動いているのもいるから大丈夫だろう。ただ水道ホースが固まっているから、水漏れ起こさないか心配。ここまで凍ったのは、何年ぶりか。雪はたいして降らなかったからよいが、気温低下はなかなかのものだった。凍った土壌は家庭菜園に影響あるかどうか。ふかふかになって豊作になるかもね。

地球温暖化という言葉が気候変動に代えられた通り、何も暑くなるばかりではなく極端に寒い日も増えた。気候そのものが変動したのだなあ、と実感してしまいますな。

2025/02/09

セルロースナノファイバー入り和菓子!

日経新聞に、久しぶりのセルロースナノファイバー(CNF)の記事。

それがステキ(笑)。

CNFの使い道に和菓子があったというのだ。

木材由来の新素材、価格低下で離陸期 セルロースナノファイバー 和菓子食感良く/車部品を補強

和菓子に使用すればもっちりと独特の食感が出せるという理解が広がってきた」。日本製紙の松岡孝参与は手応えを話す。
CNFは植物繊維の主成分であるセルロースを細かく解きほぐしたもので、保湿性や増粘性が増す特徴がある。少し混ぜて食感を高めると売り込み、日本製紙は和菓子業界への提供を拡大。静岡県富士市の老舗「田子の月」などを開拓してきた。

もちろん、これは導入部であり、ほかにもボールペンのインキ、化粧品、生コンクリート、FRP……と、さまざまな用途を紹介している。

しかし、私には、こうした使い道がもっとも正しいと思う(^^;)。小さな用途からコツコツと、である。

記事自体が、製紙会社がCNFの製造と用途開発に力を尽くしてきたことを紹介するものなのであって、生産と用途が広がってきたことを示す。それはそれなりに頑張っているなあ、という印象を持つ。

Photo_20250208122201日経記事より借用

ただ、仮にCNFの用途が広がって儲かるのは製紙会社であることも一目瞭然。材料は紙と同じであるから、原材料は安い木質物なのだろう。高く、大量に買ってくれるとは思えない。

つまり林業には貢献しない、という私の想像どおりでもある。もしかしたら、原材料を木材から農業廃棄物にすることも考えられる。ようするにセルロースを含んでいればいいのだから。和菓子材料の小豆のカスなども使えば、和菓子業界に喜ばれるかも。

実際、製紙業界は林業界・木材業界とは違う。管轄も、どちらかと言えば経産省。

いや製紙業界からしても、CNF生産は副業にはなるが、そんなに大きな利益を生み出商品になるかどうかは怪しい。紙と違って、どんなに頑張っても量的には小さい。利益率は高いだろうが、パイがどこまで広がるか。

そこんところを勘違いして、CNFが林業を救う! 的な宣伝はアホだなあ、と感じるのだ。

もっと複合的に林業の木材生産、製材を中心に建材づくり、家具づくり、製材屑を製紙にCNFとバランスよく生産するシステムを構築しないと利益を生まないだろう。

 

2025/02/08

樹木のコラボ

近所で見つけた、この木。

Photo_20250206111401

一瞬、何の木かと迷ったのだが、本体の木は、おそらくツゲの園芸種だろう。葉っぱが少ないのでわかりにくいが。

で、幹を覆っているのはなんだ? ツタか。検索してみると、セイヨウキヅタと出た。

2種類のコラボレーションによって彩っている木であった。

 

2025/02/07

麻布中学の入試問題

某氏より、「麻布中学の入試問題が面白い」とチクリ、もとい、情報提供があった。

それは、理科の問題。塾のホームページから入れる。

2025_pc

https://www.yotsuyaotsuka.com/kaitou-sokuhou/pdf/2025_azabu_science_q.pdf

こんな問題がある。

Photo_20250207134301

まず思ったのは、これ中学入試なんだから、現小学生が解く問題なの? という点。「緑のダム」と記しつつも、それを否定する現象を探させるなんて。森林土壌や人工林の生態系など、小学生が把握しているのかと驚くが、こちらが遅れているのかもしれない。

かなり高度だ。むしろ設問に問題を感じる。窒素分を減らすための「適切な手入れ」を規定するのは、諸説ある中で断定してもいいのか。さらに水文学的な立場からも、ツッコミどころがあるように思う。

そして次のこの問題。

1_20250207134601

土壌や地下水の窒素分に目をつけるなんて、大学生でも億劫がりそう。

Photo_20250207134901

この問題こそ、林野庁の回し者的な(笑)、発想だろう。

二酸化炭素を固定するには、何が必要か? 老木は伐ってしまえ? 私は、木を伐らずに残すのが一番だと思うけどなあ。

解答は、自分で確認してほしい。

問題をつくる人が、どの程度、こうした分野に精通しているのかも考えねばならないが、小学生、中学生を受験を通して洗脳しないでね。

2025/02/06

卒論「余剰ゴルフ場と霊園」を発見

たまたま「余剰ゴルフ場」という言葉にひっかかってある論文を発見した。

なんたって、私は「ゴルフ場ジャーナリスト」だからね。そして、余剰ゴルフ場問題は、ほとんど20年ぐらい前から指摘してきたことだ。当時500ぐらい余っていると言っていたが、今はもっと増えている。そして閉鎖もどんどん出てきた。
もともとはゴルフ場の自然を調べたのだが、そこには新たな「里山」的自然があった。ところが、経営が行き詰まると破壊される例に多く触れたためである。

1_20250206113001

『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』を読んでくれたまえ。

ただ、発見したのは論文と言っても、大学生の卒論のようだ。執筆がいつだったのか書いていないが、参考文献や「大沼あゆみ研究会13期」とあることから2017年か18年ぐらいではないか。

1_20250206113002 Photo_20250206113101

「余剰ゴルフ場の利用方法に関する考察」と来たか。しかし、サブに「墓地への転用に向けて」とは……。この論文は、転用はメガソーラーより樹木葬墓地を押しているのであった。

私は樹木葬ジャーナリストでもあるから、ゴルフ場の転用となれば、樹木葬墓地をお勧めしているのである。

『樹木葬という選択~緑の埋葬で森になる』

こちらの本に記している。

参考文献を見ると、『樹木葬という選択』も入っていた。『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』(もしくは旧版の『ゴルフ場は自然がいっぱい』)も入れておいてほしいのだが。

内容は、まあ、いかにも大学生ぽい書きぶりではあるのだが、それなりにゴルフ場の実情や樹木葬については調べたようだ。私が調べた頃より約10年後の実情を知ることができた。

実は、この動きは以前からあって、私のところにゴルフ場内、もしくはゴルフ場隣接地に樹木葬墓地をつくりたいという相談が何回かあったのである。ゴルフ場経営が厳しくなる中で、完全に閉鎖でなくても、一部の土地を墓地として収入源にする発想はあるのだ。私は、宮城県まで言って支配人と相談したこともある。乗り気だったのだが、その後、ポシャったようだ。

どうやら経営者は経営危機を迎えて、あの手この手を考えるものの、オーナーにとってはゴルフ場を所有していることは、一種のステータスシンボル的な面があって、その中で転用の中でも墓地はイヤだ、という意識が高そうなのである。メガソーラーの方がマシ? 
墓地というイメージの問題なのだろう。もし、もっと経営が行き詰まれば、あるいは完全に経営が成り立たなくなって、なりふり構わずに後始末的に跡地利用を考えたら、再び持ち上がるかとも考えられる。ただし樹木葬墓地は、作ったら一気に希望者が殺到するものではなく、徐々に、コツコツ、広めていくものだ。その点は、新規事業として物足りないかもしれない。

しかし、スウェーデンには世界遺産になった墓地もあるのだ。そうしたイメージ戦略はやり方次第である。大注目を集める墓地には、希望者が殺到する可能性もある。それも生前契約させたら、結構な資金源になる。

もう一つの問題として、現在の樹木葬の広がりが、極めて安直な墓地を増やしたことが足を引っ張るかもしれない。メガソーラーと変わらない樹木葬墓地だってある。
墓地埋葬法を管轄する厚生労働省も、樹木葬や散骨を異端視しがちで、理解が遅れている。国民運動的に自然を守る「緑の埋葬」の観点を育ててほしい。日本人の「自然の中で眠りたい」要望に直視しないと難しい。

 

 

2025/02/05

食品等流通法はエガリム2法に近づけるか

通常国会で、生産コストを考慮した食品の価格転嫁に向けた食品等流通法改正案などが予定されている。

農家など売り手側がかかったコストを明確にし、買い手側がその費用を考慮して取引することなどを定めようとするものだ。努力義務だが、生産コストを小売り価格に反映させろというわけである。

これって、エガリム2法に近い? 近づけようとして改正を目論んだのか? 私が最初に頭に浮かんだのは、この点だ。

エガリム法およびエガリム2法は、フランスの法律。私は、以前、この法律に関する記事を書いた。まったく無反応というか、読者はいたのかどうかわからないほど、興味を引かなかったようだが。

トレーサビリティの次はコスト明示。適正価格求めるエガリム2法

Photo_20250204235501

まあ、この記事を書いたときは、日本側はエガリムに対して、まったくやる気のない国会答弁もあったのだが、私は遠からず議題に上げなくてはならないだろうと思っていた。今回の法改正案は、それに近づけるのか?  だいたい資材代も肥料も燃料も値上がりしているのに小売価格を上げないように、卸価格を叩いている現状がおかしいのだから。農作物だけでない。小規模生産者は、団結できないゆえ常に買いたたかれる。

食品が値上がりすれば、消費者の買い控えにつながると言われる。しかし、米が高値だとぶうぶう文句言うが、フードロスはいまだに高い。2021年で、523万トンだという。全生産量の約2割である。世界中では生産量の4割近いらしい。価格が上がれば、無駄にしないように工夫するから、フードロスも減るのではないか。

Foodloss081300003

法改正では、コスト反映に対しての支援制度を創設するものらしい(まだ法案を読んでいない)。国産原材料の安定供給に農家と連携したり、温室効果ガスやフードロスの削減に取り組んだりしたら、金融支援や税制特例をつけるというものだ。日本流の穏やかな内容になりそう。支援金で誘導しようというのも、相変わらずの行政手法だが。

ちなみにエガリム法の正式名称は、「農業および食料分野における商業関係の均衡並びに健康で持続可能で誰もがアクセスできる食料のための法律」。目的として上げられているのは、
①農業者と取引相手との適正な取引関係の促進
②食品の品質・地産地消の強化
③健康に寄与し信頼性および持続可能性の高い産品の促進
④食料分野におけるプラスチック使用の減少など

単にコストの価格転嫁だけでなく、さまざまな要素が含まれている。

コストを折り込んだ価格形成を行わせるのは、食料だけでなく林産物も含めて全商品で考えるべきだろう。木材なんて、50年60年単位でコスト計算してみたらいいと思うよ。これもサスティナビリティ経済だ。

2025/02/04

沖縄のジン

ふらりと寄った大阪の百貨店。

その酒売り場で、沖縄の酒コーナーがあった。常在ではなくイベントらしい。沖縄の酒と言えば泡盛と思うところが、実は並ぶのはウイスキー、ラム、ジン……はぶ酒がかろうじて昔ながらの沖縄の酒か。

つい立ち止まると、案内役の女性がいろいろ説明してくださって、さらに試飲を進めてくれる。つい、飲む。ウイスキーはスコッチのボトリングだったが、ほかはみんな沖縄で製造。このラムは? こちらのジンは? やはりハブ酒も。

ふん、ふん。何か特有の香りがする。美味いのか。ズレてるのか? いや、まあ、酔える。アルコール度数も40度、48度、57度……!と半端じゃない。

20250204_155316

これが57度のジン。石川酒造場の「ネイビーストレングス クラフトジン」というそうだ。この名のネイビーとは「海兵隊員が船内の火薬に間違ってかけてしまっても、火薬がしけらないほど度数が強い」という意味なんだそうである。限定もので、日本で唯一のウイスキーとスピリッツの品評会である「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2021」で金賞を受賞したとある。ボタニカルも沖縄特産のいろいろ、そして樽もいろいろ。オーク樽やシェリー樽、寝かす期間もこだわりがあるらしい。

いっぱい飲んで、「これ、水を入れると白く濁るんですよ」。「えっ、本当?」「試してみますか」
というわけで、また試飲する。

試飲はそれぞれを3㎖ぐらいずつかと思うのだが、全銘柄を飲めば、30㎖ぐらいにはなるのではないか。うふふ。

軽く酔って、このままでは呑み逃げになるかと思って、このジンを購入してしもた。酔った勢いか。

こうした洋酒スピリッツやウイスキーづくりは、全国的に進んでいる。泡盛メーカーはもともと蒸留酒を作っているのだから、ちょっとした発展でラムやジンも作れるだろう。寝かすことでウイスキーも可能だ。ただ内地の日本酒メーカーまでが、ジンやウイスキーをつくる時代になった。

日本の場合、ボトリングしても、その産地名を使えるから、気をつけないといけない。しかし、ボタニカルという名の植物の活用は、お酒が一番向いているのかも。

私も、行きつけのバーで47度のジンにゆずやレモンの皮を漬け込んでいるのを見て、作り方を教わり我が家でも試している。最初は自宅で採れたレモンを、今は国産完熟ライムという珍しいものを手に入れて漬けている。まだ飲んでいないが、梅酒なんぞと違って、高度数スピリッツにより、糖分も入れないボダニカル要素である。

さて、沖縄試飲祭り、最後は、試飲できないはずの限定泡盛のクースー(古酒)、年間200本しか作っていない逸品も飲ませていただいた。実は、これが試飲した中で一番美味かったのだが、価格も10倍ぐらいするのであった……。

 

 

2025/02/03

盗伐問題の記事に思う

思わず私が書いたんじゃないのか?と思ってしまった記事(^^;)。

再生可能エネルギーを促進する制度が「森林破壊」を加速させている

Photo_20250203132701

だって、再生可能エネルギーというのはバイオマス発電のことで、そこに「盗伐が助長される」とあるのだから。バイオマス発電批判、盗伐批判となれば、私のテーマにそっくり。

よく読めば、宮崎県盗伐被害者の会の海老原裕美会長が登場している。拙著『盗伐』にも登場する盗伐問題の火付け役だ。なるほど、彼に取材したのなら、重なるはずだ。

まあ、バイオマス発電が木材価格を上昇させた、というよりも、まず大規模伐採ありきで、伐った木の使い道がないゆえバイオマス燃料に流れ込んだとみた方が正確だろうと思うが。結果的に建材になる木が燃料なのだから、木材価格はむしろ引き下げた。それでも量を多くして利益を出すという刹那的なビジネスモデルである。そこに他人の山を乱暴に伐るのだから、コストを抑えてより儲けられる盗伐が、広がる余地があった。

Photo_20250203133301

ちなみに、先日地元の図書館に行った。ここは、近年の拙著はほぼ全部揃えてくれている有り難い図書館なのだが、なんと『盗伐 林業現場からの警鐘』はなかった。内容をチェックして、これは生駒市民にはいらないわ、と判断したとは思えないので、ようはタイトルに魅力がなかったのか。盗伐という言葉は、そんなに興味が持てないのかね。都会の街路樹伐採となると、飛びつくのかもしれないが。

盗伐問題がイマイチ盛り上がらないのは、他人事を感じさせ深刻さが伝わらないからかねえ。

 

 

 

2025/02/02

『看取られる神社』考

このところ、暇を見つけては近隣の「散歩」をしているのだが、その際に発見に努めているのが「廃神社」。正確には仏教施設も含むし、神社=神道というより、新興宗教的施設も多いのだが、ようするに信仰を基盤とした「聖地」が廃れていった後の姿だ。

そして、生駒、少し広げて奈良というところは、そんな施設は少なくないのである。犬も歩けば、森林ジャーナリストも歩けば廃人、じゃない廃神社に当たる。。。

市街地でも建築物の合間に挟まるように藪があり、そこに潜入すると、たいてい祠とかため池がある。山に入れば、森の中に崩壊しかけた宗教施設の残骸が見つかる。なかにはパワースポット扱いもあれば、ホラーかオカルトの拠点かと思わせるところもあるのだ。

そうした所ばかりを見て歩くと、なんだか精神が病んでいるかのようなのだが、さまざまな幻の記憶が蘇る。その施設が勃興した時、栄えたとき、いつしか寂れていくとき。見ても聞いてもいないのに、感じ取れる。

そんな最中に読んだのが、『看取られる神社 変わり行く聖地のゆくえ(島田奈穂子著 あいり出版)であった。

嶋田さんは、イマジナリー生態学を標榜して、聖地の研究をしている。現在、滋賀大学の非常勤講師だそうだ。

Photo_20250202220601

目次を示すと、

1章 聖地が生まれる
 (災害の爪痕を、自然の恵みを願う場に 稲荷神社 滋賀県守山市服部/土地の先住者をカミに プーターの森 ラオス・チャンパサック県ノックコック村 ほか)
2章 育つ聖地
 (筏流しの守護から、新しい村の鎮守へ 思子淵神社 京都市左京区大原大見/水神は、イノシシ除けのカミになった 大川神社 滋賀県高島市朽木生杉 ほか)
3章 看取られる聖地
 (神社を看取った人 大山祇神社 福島県大沼郡昭和村畑小屋/神社の“墓標”を立てた夫婦 菅八幡神社 福井県越前市菅町 ほか)
4章 それでも、聖地が生き続ける理由
 (誰もいなくなる土地に生きることを願われる聖地 白山神社 福井県勝山市横倉/合祀された「井戸」 沖縄県那覇市 ほか)

見出しどおり、聖地の誕生、育ち、看取り、そして復活を描いている。

神社の誕生として示されるのは、洪水被害地や、丸太の筏流しの拠点、そして何らかのストーリーがあるようだ。ラオスのコック爺さんなんか、村に先住していた人らしいのだが、なんだか可愛らしい。

そして過疎化の進展から消滅集落化によって看取られる。だが、神社がなくなっても信仰の地、聖地として残り続ける土地もあるようだ。

実は、私の訪ねた廃神社と重ね合わせると、どこかに共通点を感じる。もちろん、私は研究しているわけではなく、その神社の由来を調べるわけでもなく、現状の聞き込みをするわけでもない。ただ、見て、感じる。妄想に近いのだが。

たとえばため池が祀られることは、比較的多いようだ。池を掘ったときに、水の神様を勧進したのだろうか。ほか森、大木、巨石なども聖地になる。イマジネーションを刺激されるからだろうか。生駒山にはナナツモリの伝説があって、小さな森が聖地とされる。7つとは語呂合わせで、実際にいくつあるかわからないが、訪ねると、祠や石仏があったりする。

神社が廃される裏には、明治の神社合祀令があるが、これは半強制的なケース。私の見つけたものは、個人で建てたが、世代が変わって捨てられたものや、カリスマ的な教祖によって生み出された宗教施設も、カリスマがいなくなることによって消えていく。後を継ぐものの存在がいなくなれば、当たり前だが廃される。

しかし、信仰の記憶が続くと、いつしか記憶のバトンタッチがされて復活につながることもあるのだ。山がなくなっても、聖地は残る。

2_20250202170801
大豪邸の一角に祀られていたのだが、いつしか豪邸は空き家になり、神社も荒れ果てた。

3_20250202170801
新興宗教らしいが、山中に捨てられた。そこに教祖様のお言葉が掲げられている。

1_20250202170801
住宅再開発が進み、周辺の山はなくなってしまった祠が、近年になって建て直された。復活したのである。

 

ところで、最後に余談を。実は、著者にあったことがある。取材したのだ。それも東チモールのコーヒーについて。そのときのことを記していた。当時は思想生態学と名付けていたが、それはイマジナリー生態学になったようだ。

森の思想生態学!

2025/02/01

南三陸の林業地が自然共生サイトになった

宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、国が認定する自然共生サイトに認定されたという記事。

南三陸FSC認証林、自然共生サイトに認定 生物多様性に配慮し植林

宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、豊かな生物多様性が保全されている区域を国が認定する自然共生サイトに認定された。生物多様性に配慮したスギを中心とした森づくりが行われている。

ついでに、こんな記事も。

20250128_075640

これに私が驚いたのは、森林認証のFSCを取得したことではない。自然共生サイトに認定された方なのだ。それも約2471ヘクタールと全域らしい。

自然共生サイトとは、環境省が仕掛けたネイチャー・ポジティブ政策の一環。30by30と呼ばれる2030年までに国土(水陸)の30%を自然保護区に指定する国際的な目標を達成するための施策だ。国立公園などの保護地域指定では全然足りないことから、新たな指標で民間の土地も指定するようにした。生物多様性増進に役立つとされた土地を「自然共生サイト」と名付けたのだ。現在、全国で253か所あるが、多くは企業などがCSR的に生物多様性を意識した保全地区である。

私は、かなり前からこの制度に注目していて、そのうち林業地が認定される動きが始まると睨んでいた。ただし、ほとんどの人工林はスギやヒノキ、カラマツなどの針葉樹一斉林である。それでは生物多様性になりにくい。よほど工夫した森づくり(たとえば針広混交林とか)をしていないと認定されない、だから可能なのは所有林のうちの自然林部分ではないかと考えた。林業地と言っても、たいてい一部は植林せずに自然のまま残した森がある。河畔とか尾根筋とか崩落地とか……。

そうした天然状態の森の部分の保全策を決めたら、自然共生サイトに認定されるかもしれない。そうすれば、将来的に固定資産税などの減免措置もあるだろうし、補助金ももらいやすくなる……と睨んでいた。実際、いくつかの林業家の所有森林の一部が認定されている。ただし面積的には小さい。数ヘクタール、いや1ヘクタール未満も多い。大きなところで2~300ヘクタールもあるが。

ところが、今回はそうではないらしい。純然たるスギ林が、FSC森林認証を取得したことで自然共生サイトにも認定されたのだ。どうやら広葉樹も生やして針広混交林に誘導するらしいが、それでも人工林に違いがない。そこが自然共生サイトになったか! 面積も桁違いだ。

まだ認定基準とか、細かなところはわからないが、かなり期待できる。私有林業地の中の自然林は、面積にして1割程度ではないかと思っていたのだが、もし人工林全域も施業方法次第で認定されるなら、可能性は一気に10倍になる。当然、認定特典などの効果も大きくなる。30by30にも貢献する。

もしかしたらFSCの認証を取得したら、自然共生サイトに認定されやすいという事例になるかもしれない。そのうちSGECもなるか……。林業地の林業のできない部分だけ認定を受けるより、林業を行う山そのものが認定を受けられることになれば、意識も変わってくる。

願わくば、サイトに認定されたら受けられる特典を早く示すことだろう。今のところ、どんな特典があるのか明示されていないが、それが明確にわかって指定を受けたら有利になるとわかれば、参加しようという林業家、山主も増えてくるはず。内容次第だが、林業家が森林認証に目を向けるかもしれない。

そして生物多様性を重視した林業も進む。

環境省、林業政策へ一石を投じるのではないか(笑)。今も皆伐一斉造林を推進する林野庁、どうする?

 

 

 

 

« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »

July 2025
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

森と筆者の関連リンク先

  • Yahoo!ニュース エキスパート
    Yahoo!ニュースに執筆した記事一覧。テーマは森林、林業、野生動物……自然科学に第一次産業など。速報性や時事性より、長く読まれることを期待している。
  • Wedge ONLINE執筆記事
    WedgeおよびWedge on lineに執筆した記事一覧。扱うテーマはYahoo!ニュースより幅広く、森林、林業、野生動物、地域おこし……なんだ、変わらんか。
  • 林業ニュース
    日々、森林・林業関係のニュースがずらり。
  • 森林ジャーナリストの裏ブログ
    本ブログの前身。裏ブログとして、どーでもよい話題が満載(^o^)
  • 森林ジャーナリストの仕事館
    田中淳夫の公式ホームページ。著作紹介のほか、エッセイ、日記、幻の記事、著作も掲載。