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森と林業と動物の本

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2025年2月

2025/02/11

切り株バウムクーヘン

つい買ってしまったケーキ。バウムクーヘンである。

通常、自分でケーキを買うこともない人生(^^;)なのだが、つい人生観を狂わせた!のは、樹木の断面、切り株ぽかったので。

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もともとバウムクーヘンとは、ドイツ圏のお菓子だが、現地ではそんなに有名ではないらしい。ただ木の棒に巻きつけて焼き重ねていくので、年輪ぽい生地になる。日本ではそれがなぜか喜ばれるみたいで、普通に出回っているし、専門店もあるね。なぜ、本場をしのいで日本で流行っているのかは謎。

ただ、一般に売っているのは、円筒形で幾何学的な模様としての年輪だが、この商品は本物の切り株ぽいではないか。太くて焦げた木目部分は、何があったか想像すると楽しい。まあ、その年に大火事があって……ということはなく、ついよそ見して焦がしたよ、という想像だが。

発酵バターを使っているハードタイプで、切ったりかじる際にもかなり硬かった。味は濃厚だ。バターの香りがすごい。

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縦断面はこんな風。樹木の木目の勉強になる(笑)。

ちょうど帰省していた娘と美味しくいただきました。

調べてみると、3月4日が「バウムクーヘンの日」なんだそうだ。ちょっと早すぎたか。

 

 

 

2025/02/10

我が家の「永久凍土」

超寒波が来たと、連日テレビは大騒ぎしたが、こんな時こそ庭仕事(^-^)/ 。

と思って庭に出た。もちろん、防寒はしっかりする。まず落葉や落枝の片づけて腐葉土づくりのため積み上げる。さらに家庭菜園部分の土壌の耕作を行おうと思ったのだが、そこで気づく。

我が家に永久凍土ができとった。。。。

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写真ではわかりづらいだろうが、この表土下1センチぐらい下は、ガッツリ凍っていた。よく見ると、氷の粒も見える。地下水も凍っている。

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スコップも刺さらない。カンカンと弾かれる。体重かけても、削れる部分はごくわずか。完全に凍っていたのであった。深さ10センチぐらいまで氷で固まった土ではないかな。庭のバケツの水も凍っていたが、その厚さも10センチ級だ。

永久凍土とは、氷河期時代より凍って、夏でも年中凍り続けてきた土地。まあ、永久なわけなく、おそらく数日で溶けると思うが(^^;)、気分は永久凍土なのである。

なお、金魚池も氷が張って割れないほどだが、その下に金魚が透けて見える。動いているのもいるから大丈夫だろう。ただ水道ホースが固まっているから、水漏れ起こさないか心配。ここまで凍ったのは、何年ぶりか。雪はたいして降らなかったからよいが、気温低下はなかなかのものだった。凍った土壌は家庭菜園に影響あるかどうか。ふかふかになって豊作になるかもね。

地球温暖化という言葉が気候変動に代えられた通り、何も暑くなるばかりではなく極端に寒い日も増えた。気候そのものが変動したのだなあ、と実感してしまいますな。

2025/02/09

セルロースナノファイバー入り和菓子!

日経新聞に、久しぶりのセルロースナノファイバー(CNF)の記事。

それがステキ(笑)。

CNFの使い道に和菓子があったというのだ。

木材由来の新素材、価格低下で離陸期 セルロースナノファイバー 和菓子食感良く/車部品を補強

和菓子に使用すればもっちりと独特の食感が出せるという理解が広がってきた」。日本製紙の松岡孝参与は手応えを話す。
CNFは植物繊維の主成分であるセルロースを細かく解きほぐしたもので、保湿性や増粘性が増す特徴がある。少し混ぜて食感を高めると売り込み、日本製紙は和菓子業界への提供を拡大。静岡県富士市の老舗「田子の月」などを開拓してきた。

もちろん、これは導入部であり、ほかにもボールペンのインキ、化粧品、生コンクリート、FRP……と、さまざまな用途を紹介している。

しかし、私には、こうした使い道がもっとも正しいと思う(^^;)。小さな用途からコツコツと、である。

記事自体が、製紙会社がCNFの製造と用途開発に力を尽くしてきたことを紹介するものなのであって、生産と用途が広がってきたことを示す。それはそれなりに頑張っているなあ、という印象を持つ。

Photo_20250208122201日経記事より借用

ただ、仮にCNFの用途が広がって儲かるのは製紙会社であることも一目瞭然。材料は紙と同じであるから、原材料は安い木質物なのだろう。高く、大量に買ってくれるとは思えない。

つまり林業には貢献しない、という私の想像どおりでもある。もしかしたら、原材料を木材から農業廃棄物にすることも考えられる。ようするにセルロースを含んでいればいいのだから。和菓子材料の小豆のカスなども使えば、和菓子業界に喜ばれるかも。

実際、製紙業界は林業界・木材業界とは違う。管轄も、どちらかと言えば経産省。

いや製紙業界からしても、CNF生産は副業にはなるが、そんなに大きな利益を生み出商品になるかどうかは怪しい。紙と違って、どんなに頑張っても量的には小さい。利益率は高いだろうが、パイがどこまで広がるか。

そこんところを勘違いして、CNFが林業を救う! 的な宣伝はアホだなあ、と感じるのだ。

もっと複合的に林業の木材生産、製材を中心に建材づくり、家具づくり、製材屑を製紙にCNFとバランスよく生産するシステムを構築しないと利益を生まないだろう。

 

2025/02/08

樹木のコラボ

近所で見つけた、この木。

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一瞬、何の木かと迷ったのだが、本体の木は、おそらくツゲの園芸種だろう。葉っぱが少ないのでわかりにくいが。

で、幹を覆っているのはなんだ? ツタか。検索してみると、セイヨウキヅタと出た。

2種類のコラボレーションによって彩っている木であった。

 

2025/02/07

麻布中学の入試問題

某氏より、「麻布中学の入試問題が面白い」とチクリ、もとい、情報提供があった。

それは、理科の問題。塾のホームページから入れる。

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https://www.yotsuyaotsuka.com/kaitou-sokuhou/pdf/2025_azabu_science_q.pdf

こんな問題がある。

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まず思ったのは、これ中学入試なんだから、現小学生が解く問題なの? という点。「緑のダム」と記しつつも、それを否定する現象を探させるなんて。森林土壌や人工林の生態系など、小学生が把握しているのかと驚くが、こちらが遅れているのかもしれない。

かなり高度だ。むしろ設問に問題を感じる。窒素分を減らすための「適切な手入れ」を規定するのは、諸説ある中で断定してもいいのか。さらに水文学的な立場からも、ツッコミどころがあるように思う。

そして次のこの問題。

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土壌や地下水の窒素分に目をつけるなんて、大学生でも億劫がりそう。

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この問題こそ、林野庁の回し者的な(笑)、発想だろう。

二酸化炭素を固定するには、何が必要か? 老木は伐ってしまえ? 私は、木を伐らずに残すのが一番だと思うけどなあ。

解答は、自分で確認してほしい。

問題をつくる人が、どの程度、こうした分野に精通しているのかも考えねばならないが、小学生、中学生を受験を通して洗脳しないでね。

2025/02/06

卒論「余剰ゴルフ場と霊園」を発見

たまたま「余剰ゴルフ場」という言葉にひっかかってある論文を発見した。

なんたって、私は「ゴルフ場ジャーナリスト」だからね。そして、余剰ゴルフ場問題は、ほとんど20年ぐらい前から指摘してきたことだ。当時500ぐらい余っていると言っていたが、今はもっと増えている。そして閉鎖もどんどん出てきた。
もともとはゴルフ場の自然を調べたのだが、そこには新たな「里山」的自然があった。ところが、経営が行き詰まると破壊される例に多く触れたためである。

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『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』を読んでくれたまえ。

ただ、発見したのは論文と言っても、大学生の卒論のようだ。執筆がいつだったのか書いていないが、参考文献や「大沼あゆみ研究会13期」とあることから2017年か18年ぐらいではないか。

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「余剰ゴルフ場の利用方法に関する考察」と来たか。しかし、サブに「墓地への転用に向けて」とは……。この論文は、転用はメガソーラーより樹木葬墓地を押しているのであった。

私は樹木葬ジャーナリストでもあるから、ゴルフ場の転用となれば、樹木葬墓地をお勧めしているのである。

『樹木葬という選択~緑の埋葬で森になる』

こちらの本に記している。

参考文献を見ると、『樹木葬という選択』も入っていた。『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』(もしくは旧版の『ゴルフ場は自然がいっぱい』)も入れておいてほしいのだが。

内容は、まあ、いかにも大学生ぽい書きぶりではあるのだが、それなりにゴルフ場の実情や樹木葬については調べたようだ。私が調べた頃より約10年後の実情を知ることができた。

実は、この動きは以前からあって、私のところにゴルフ場内、もしくはゴルフ場隣接地に樹木葬墓地をつくりたいという相談が何回かあったのである。ゴルフ場経営が厳しくなる中で、完全に閉鎖でなくても、一部の土地を墓地として収入源にする発想はあるのだ。私は、宮城県まで言って支配人と相談したこともある。乗り気だったのだが、その後、ポシャったようだ。

どうやら経営者は経営危機を迎えて、あの手この手を考えるものの、オーナーにとってはゴルフ場を所有していることは、一種のステータスシンボル的な面があって、その中で転用の中でも墓地はイヤだ、という意識が高そうなのである。メガソーラーの方がマシ? 
墓地というイメージの問題なのだろう。もし、もっと経営が行き詰まれば、あるいは完全に経営が成り立たなくなって、なりふり構わずに後始末的に跡地利用を考えたら、再び持ち上がるかとも考えられる。ただし樹木葬墓地は、作ったら一気に希望者が殺到するものではなく、徐々に、コツコツ、広めていくものだ。その点は、新規事業として物足りないかもしれない。

しかし、スウェーデンには世界遺産になった墓地もあるのだ。そうしたイメージ戦略はやり方次第である。大注目を集める墓地には、希望者が殺到する可能性もある。それも生前契約させたら、結構な資金源になる。

もう一つの問題として、現在の樹木葬の広がりが、極めて安直な墓地を増やしたことが足を引っ張るかもしれない。メガソーラーと変わらない樹木葬墓地だってある。
墓地埋葬法を管轄する厚生労働省も、樹木葬や散骨を異端視しがちで、理解が遅れている。国民運動的に自然を守る「緑の埋葬」の観点を育ててほしい。日本人の「自然の中で眠りたい」要望に直視しないと難しい。

 

 

2025/02/05

食品等流通法はエガリム2法に近づけるか

通常国会で、生産コストを考慮した食品の価格転嫁に向けた食品等流通法改正案などが予定されている。

農家など売り手側がかかったコストを明確にし、買い手側がその費用を考慮して取引することなどを定めようとするものだ。努力義務だが、生産コストを小売り価格に反映させろというわけである。

これって、エガリム2法に近い? 近づけようとして改正を目論んだのか? 私が最初に頭に浮かんだのは、この点だ。

エガリム法およびエガリム2法は、フランスの法律。私は、以前、この法律に関する記事を書いた。まったく無反応というか、読者はいたのかどうかわからないほど、興味を引かなかったようだが。

トレーサビリティの次はコスト明示。適正価格求めるエガリム2法

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まあ、この記事を書いたときは、日本側はエガリムに対して、まったくやる気のない国会答弁もあったのだが、私は遠からず議題に上げなくてはならないだろうと思っていた。今回の法改正案は、それに近づけるのか?  だいたい資材代も肥料も燃料も値上がりしているのに小売価格を上げないように、卸価格を叩いている現状がおかしいのだから。農作物だけでない。小規模生産者は、団結できないゆえ常に買いたたかれる。

食品が値上がりすれば、消費者の買い控えにつながると言われる。しかし、米が高値だとぶうぶう文句言うが、フードロスはいまだに高い。2021年で、523万トンだという。全生産量の約2割である。世界中では生産量の4割近いらしい。価格が上がれば、無駄にしないように工夫するから、フードロスも減るのではないか。

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法改正では、コスト反映に対しての支援制度を創設するものらしい(まだ法案を読んでいない)。国産原材料の安定供給に農家と連携したり、温室効果ガスやフードロスの削減に取り組んだりしたら、金融支援や税制特例をつけるというものだ。日本流の穏やかな内容になりそう。支援金で誘導しようというのも、相変わらずの行政手法だが。

ちなみにエガリム法の正式名称は、「農業および食料分野における商業関係の均衡並びに健康で持続可能で誰もがアクセスできる食料のための法律」。目的として上げられているのは、
①農業者と取引相手との適正な取引関係の促進
②食品の品質・地産地消の強化
③健康に寄与し信頼性および持続可能性の高い産品の促進
④食料分野におけるプラスチック使用の減少など

単にコストの価格転嫁だけでなく、さまざまな要素が含まれている。

コストを折り込んだ価格形成を行わせるのは、食料だけでなく林産物も含めて全商品で考えるべきだろう。木材なんて、50年60年単位でコスト計算してみたらいいと思うよ。これもサスティナビリティ経済だ。

2025/02/04

沖縄のジン

ふらりと寄った大阪の百貨店。

その酒売り場で、沖縄の酒コーナーがあった。常在ではなくイベントらしい。沖縄の酒と言えば泡盛と思うところが、実は並ぶのはウイスキー、ラム、ジン……はぶ酒がかろうじて昔ながらの沖縄の酒か。

つい立ち止まると、案内役の女性がいろいろ説明してくださって、さらに試飲を進めてくれる。つい、飲む。ウイスキーはスコッチのボトリングだったが、ほかはみんな沖縄で製造。このラムは? こちらのジンは? やはりハブ酒も。

ふん、ふん。何か特有の香りがする。美味いのか。ズレてるのか? いや、まあ、酔える。アルコール度数も40度、48度、57度……!と半端じゃない。

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これが57度のジン。石川酒造場の「ネイビーストレングス クラフトジン」というそうだ。この名のネイビーとは「海兵隊員が船内の火薬に間違ってかけてしまっても、火薬がしけらないほど度数が強い」という意味なんだそうである。限定もので、日本で唯一のウイスキーとスピリッツの品評会である「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)2021」で金賞を受賞したとある。ボタニカルも沖縄特産のいろいろ、そして樽もいろいろ。オーク樽やシェリー樽、寝かす期間もこだわりがあるらしい。

いっぱい飲んで、「これ、水を入れると白く濁るんですよ」。「えっ、本当?」「試してみますか」
というわけで、また試飲する。

試飲はそれぞれを3㎖ぐらいずつかと思うのだが、全銘柄を飲めば、30㎖ぐらいにはなるのではないか。うふふ。

軽く酔って、このままでは呑み逃げになるかと思って、このジンを購入してしもた。酔った勢いか。

こうした洋酒スピリッツやウイスキーづくりは、全国的に進んでいる。泡盛メーカーはもともと蒸留酒を作っているのだから、ちょっとした発展でラムやジンも作れるだろう。寝かすことでウイスキーも可能だ。ただ内地の日本酒メーカーまでが、ジンやウイスキーをつくる時代になった。

日本の場合、ボトリングしても、その産地名を使えるから、気をつけないといけない。しかし、ボタニカルという名の植物の活用は、お酒が一番向いているのかも。

私も、行きつけのバーで47度のジンにゆずやレモンの皮を漬け込んでいるのを見て、作り方を教わり我が家でも試している。最初は自宅で採れたレモンを、今は国産完熟ライムという珍しいものを手に入れて漬けている。まだ飲んでいないが、梅酒なんぞと違って、高度数スピリッツにより、糖分も入れないボダニカル要素である。

さて、沖縄試飲祭り、最後は、試飲できないはずの限定泡盛のクースー(古酒)、年間200本しか作っていない逸品も飲ませていただいた。実は、これが試飲した中で一番美味かったのだが、価格も10倍ぐらいするのであった……。

 

 

2025/02/03

盗伐問題の記事に思う

思わず私が書いたんじゃないのか?と思ってしまった記事(^^;)。

再生可能エネルギーを促進する制度が「森林破壊」を加速させている

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だって、再生可能エネルギーというのはバイオマス発電のことで、そこに「盗伐が助長される」とあるのだから。バイオマス発電批判、盗伐批判となれば、私のテーマにそっくり。

よく読めば、宮崎県盗伐被害者の会の海老原裕美会長が登場している。拙著『盗伐』にも登場する盗伐問題の火付け役だ。なるほど、彼に取材したのなら、重なるはずだ。

まあ、バイオマス発電が木材価格を上昇させた、というよりも、まず大規模伐採ありきで、伐った木の使い道がないゆえバイオマス燃料に流れ込んだとみた方が正確だろうと思うが。結果的に建材になる木が燃料なのだから、木材価格はむしろ引き下げた。それでも量を多くして利益を出すという刹那的なビジネスモデルである。そこに他人の山を乱暴に伐るのだから、コストを抑えてより儲けられる盗伐が、広がる余地があった。

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ちなみに、先日地元の図書館に行った。ここは、近年の拙著はほぼ全部揃えてくれている有り難い図書館なのだが、なんと『盗伐 林業現場からの警鐘』はなかった。内容をチェックして、これは生駒市民にはいらないわ、と判断したとは思えないので、ようはタイトルに魅力がなかったのか。盗伐という言葉は、そんなに興味が持てないのかね。都会の街路樹伐採となると、飛びつくのかもしれないが。

盗伐問題がイマイチ盛り上がらないのは、他人事を感じさせ深刻さが伝わらないからかねえ。

 

 

 

2025/02/02

『看取られる神社』考

このところ、暇を見つけては近隣の「散歩」をしているのだが、その際に発見に努めているのが「廃神社」。正確には仏教施設も含むし、神社=神道というより、新興宗教的施設も多いのだが、ようするに信仰を基盤とした「聖地」が廃れていった後の姿だ。

そして、生駒、少し広げて奈良というところは、そんな施設は少なくないのである。犬も歩けば、森林ジャーナリストも歩けば廃人、じゃない廃神社に当たる。。。

市街地でも建築物の合間に挟まるように藪があり、そこに潜入すると、たいてい祠とかため池がある。山に入れば、森の中に崩壊しかけた宗教施設の残骸が見つかる。なかにはパワースポット扱いもあれば、ホラーかオカルトの拠点かと思わせるところもあるのだ。

そうした所ばかりを見て歩くと、なんだか精神が病んでいるかのようなのだが、さまざまな幻の記憶が蘇る。その施設が勃興した時、栄えたとき、いつしか寂れていくとき。見ても聞いてもいないのに、感じ取れる。

そんな最中に読んだのが、『看取られる神社 変わり行く聖地のゆくえ(島田奈穂子著 あいり出版)であった。

嶋田さんは、イマジナリー生態学を標榜して、聖地の研究をしている。現在、滋賀大学の非常勤講師だそうだ。

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目次を示すと、

1章 聖地が生まれる
 (災害の爪痕を、自然の恵みを願う場に 稲荷神社 滋賀県守山市服部/土地の先住者をカミに プーターの森 ラオス・チャンパサック県ノックコック村 ほか)
2章 育つ聖地
 (筏流しの守護から、新しい村の鎮守へ 思子淵神社 京都市左京区大原大見/水神は、イノシシ除けのカミになった 大川神社 滋賀県高島市朽木生杉 ほか)
3章 看取られる聖地
 (神社を看取った人 大山祇神社 福島県大沼郡昭和村畑小屋/神社の“墓標”を立てた夫婦 菅八幡神社 福井県越前市菅町 ほか)
4章 それでも、聖地が生き続ける理由
 (誰もいなくなる土地に生きることを願われる聖地 白山神社 福井県勝山市横倉/合祀された「井戸」 沖縄県那覇市 ほか)

見出しどおり、聖地の誕生、育ち、看取り、そして復活を描いている。

神社の誕生として示されるのは、洪水被害地や、丸太の筏流しの拠点、そして何らかのストーリーがあるようだ。ラオスのコック爺さんなんか、村に先住していた人らしいのだが、なんだか可愛らしい。

そして過疎化の進展から消滅集落化によって看取られる。だが、神社がなくなっても信仰の地、聖地として残り続ける土地もあるようだ。

実は、私の訪ねた廃神社と重ね合わせると、どこかに共通点を感じる。もちろん、私は研究しているわけではなく、その神社の由来を調べるわけでもなく、現状の聞き込みをするわけでもない。ただ、見て、感じる。妄想に近いのだが。

たとえばため池が祀られることは、比較的多いようだ。池を掘ったときに、水の神様を勧進したのだろうか。ほか森、大木、巨石なども聖地になる。イマジネーションを刺激されるからだろうか。生駒山にはナナツモリの伝説があって、小さな森が聖地とされる。7つとは語呂合わせで、実際にいくつあるかわからないが、訪ねると、祠や石仏があったりする。

神社が廃される裏には、明治の神社合祀令があるが、これは半強制的なケース。私の見つけたものは、個人で建てたが、世代が変わって捨てられたものや、カリスマ的な教祖によって生み出された宗教施設も、カリスマがいなくなることによって消えていく。後を継ぐものの存在がいなくなれば、当たり前だが廃される。

しかし、信仰の記憶が続くと、いつしか記憶のバトンタッチがされて復活につながることもあるのだ。山がなくなっても、聖地は残る。

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大豪邸の一角に祀られていたのだが、いつしか豪邸は空き家になり、神社も荒れ果てた。

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新興宗教らしいが、山中に捨てられた。そこに教祖様のお言葉が掲げられている。

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住宅再開発が進み、周辺の山はなくなってしまった祠が、近年になって建て直された。復活したのである。

 

ところで、最後に余談を。実は、著者にあったことがある。取材したのだ。それも東チモールのコーヒーについて。そのときのことを記していた。当時は思想生態学と名付けていたが、それはイマジナリー生態学になったようだ。

森の思想生態学!

2025/02/01

南三陸の林業地が自然共生サイトになった

宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、国が認定する自然共生サイトに認定されたという記事。

南三陸FSC認証林、自然共生サイトに認定 生物多様性に配慮し植林

宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、豊かな生物多様性が保全されている区域を国が認定する自然共生サイトに認定された。生物多様性に配慮したスギを中心とした森づくりが行われている。

ついでに、こんな記事も。

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これに私が驚いたのは、森林認証のFSCを取得したことではない。自然共生サイトに認定された方なのだ。それも約2471ヘクタールと全域らしい。

自然共生サイトとは、環境省が仕掛けたネイチャー・ポジティブ政策の一環。30by30と呼ばれる2030年までに国土(水陸)の30%を自然保護区に指定する国際的な目標を達成するための施策だ。国立公園などの保護地域指定では全然足りないことから、新たな指標で民間の土地も指定するようにした。生物多様性増進に役立つとされた土地を「自然共生サイト」と名付けたのだ。現在、全国で253か所あるが、多くは企業などがCSR的に生物多様性を意識した保全地区である。

私は、かなり前からこの制度に注目していて、そのうち林業地が認定される動きが始まると睨んでいた。ただし、ほとんどの人工林はスギやヒノキ、カラマツなどの針葉樹一斉林である。それでは生物多様性になりにくい。よほど工夫した森づくり(たとえば針広混交林とか)をしていないと認定されない、だから可能なのは所有林のうちの自然林部分ではないかと考えた。林業地と言っても、たいてい一部は植林せずに自然のまま残した森がある。河畔とか尾根筋とか崩落地とか……。

そうした天然状態の森の部分の保全策を決めたら、自然共生サイトに認定されるかもしれない。そうすれば、将来的に固定資産税などの減免措置もあるだろうし、補助金ももらいやすくなる……と睨んでいた。実際、いくつかの林業家の所有森林の一部が認定されている。ただし面積的には小さい。数ヘクタール、いや1ヘクタール未満も多い。大きなところで2~300ヘクタールもあるが。

ところが、今回はそうではないらしい。純然たるスギ林が、FSC森林認証を取得したことで自然共生サイトにも認定されたのだ。どうやら広葉樹も生やして針広混交林に誘導するらしいが、それでも人工林に違いがない。そこが自然共生サイトになったか! 面積も桁違いだ。

まだ認定基準とか、細かなところはわからないが、かなり期待できる。私有林業地の中の自然林は、面積にして1割程度ではないかと思っていたのだが、もし人工林全域も施業方法次第で認定されるなら、可能性は一気に10倍になる。当然、認定特典などの効果も大きくなる。30by30にも貢献する。

もしかしたらFSCの認証を取得したら、自然共生サイトに認定されやすいという事例になるかもしれない。そのうちSGECもなるか……。林業地の林業のできない部分だけ認定を受けるより、林業を行う山そのものが認定を受けられることになれば、意識も変わってくる。

願わくば、サイトに認定されたら受けられる特典を早く示すことだろう。今のところ、どんな特典があるのか明示されていないが、それが明確にわかって指定を受けたら有利になるとわかれば、参加しようという林業家、山主も増えてくるはず。内容次第だが、林業家が森林認証に目を向けるかもしれない。

そして生物多様性を重視した林業も進む。

環境省、林業政策へ一石を投じるのではないか(笑)。今も皆伐一斉造林を推進する林野庁、どうする?

 

 

 

 

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