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2025/02/14

緊急猟銃対策と「生き物の憲法」

とうとう環境省が、住宅街に出没したクマに対する猟銃駆除を市町村長の判断で可能とする法律の鳥獣保護法改正案を通常国会に提出する

「緊急猟銃」という用語を使うようだ。

クマ被害の中“市街地で猟銃使用 市町村長判断で”改正法案へ

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条件は、こんな具合。

1、クマが住宅地など日常生活圏に侵入
2、人の生命、身体に危害の恐れ
3、猟銃以外では捕獲困難
4、住民に弾丸が到達する心配がない

これらを満たした場合に許可される。ほかに民間保険に入っておいて被害が出た場合は補てんするとか、出没周辺の通行制限、避難指示を可能にするなども入っている。これまでは要請だったのだね。なおイノシシも対象にするようだ。

ここまで出没が多発したのなら仕方がない。しかし、とりあえず……という感じの改正で、対症療法的なのは拭えない。もっと野生動物に対応するための基本法などがほしいと思う。鳥獣保護法ではなく、鳥獣管理法になるのか。本当は、植物の外来種対策も含んだ野生生物管理と保護の理念を示す法律が必要ではなかろうか。別に法律で縛れというのではなくて、基本理念がわからないかからだ。できれば生態系保全に関する日本の寄って立つ考え方が知りたい。

今の日本の法律では、生物に対する規定が弱くて、何をめざしているのかわからない。人じゃないから物扱いするかと思えば、やたら保護を唱えて被害対策をしづらくする。愛玩動物(ペット)と家畜家禽と研究対象、動物園などの鑑賞・保護、そして野生……と混在している。それらを広く識者とともに議論して、生き物の憲法のようなものを示してくれないかなあ。

しかし、納得できる法文で制定するには何年もかかるのだろうなあ。ようやくまとまった頃には、事態は一変しているかもしれないなあ。

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ナラシカ・動物・獣害」カテゴリの記事

コメント

針葉樹から広葉樹への転換以外に問題解決の道はないです。時間がかかっても、クマが森から出たくなくなるような、おいしい食べ物で満ち溢れた森づくりを指向すべきです。人間と野生動物と共存が基本理念でしょう。

クマ、あるいはイノシシなどの動物が人里に出てくるのは、何も山に餌がないからではなく、人里の餌(主に農作物)が美味しいからです。これは実験などで確認されていて、いくら山に豊富な餌があっても、一度人里の味を覚えたら、追い払っても出没するでしょう。
山の中で野菜や果樹を栽培すると、そちらを食べるかもしれませんが、それで野菜などの美味しさを知って、やはり人里に出没……というケースも考えられるので、山の植生を変えることでクマなどの出没を抑えることは難しいでしょうね。

熊が出ると必ずドングリを植えよという話題になりますよね。
でも少し考えれば、食糧(ドングリ)が増えて頭数が増えればそれだけ遭遇する確率も上がります。とくに裏年など。
田中さんの著書がもっと読まれるようになれば獣害リテラシーも高まるのに。

ドングリを撒いたり餌を与えたら、人に餌をもらえると学習するうえに頭数が増えて逆効果……というのは、何も私の考えでなくて、数々の実験や観察をされてきた学者および現場の獣害担当者が行き着いた結論です。
私は、その布教を担当しているだけかな(^^;)。

熊出没問題と針葉樹の森原因説を見ていると、まるで拡大造林前は野生動物との軋轢がなかったかのように聞こえてしまいますね...そのようなことは無いのですが…(クマについては後述のリンクを参考にしてください)かつて無法的に駆除やら対策をして、コウノトリを絶滅寸前、トキを絶滅に追いやったたことを考えれば、鳥獣保護法は有効だと思うのですが、やはり仰るとおり総合的に管理できるような法なり仕組みなりを作らないと、ますます野生と関わりをなくしていく現代では深刻な問題に発展していきますね

http://www.forest-akita.jp/data/sansai/kuma-taisaku/kuma.html

江戸時代も獣害に悩まされてきたことは記録に残っています。それが明治~昭和前半には、かなり獣害が減る。これは、自然破壊が進んで野生動物の数がかなり減ってしまった結果でしょう。だから保護に転換した。
それが最近は数が元に戻ってきて獣害が再び出始めたと見るべきでしょうね。再び転換して頭数管理を必要とする時代になったのではないでしょうか。

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