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森と林業と動物の本

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2025/02/17

ユドノモリの森の消失

以前、「看取られる神社」という本を紹介した。

ここには消える聖地が紹介されているのだが、その中の一つに奈良県斑鳩町のユドノモリが取り上げられている。ここは、消えるはずの聖地(神社)が生き残っている例として登場した。ユドノモリとは、湯夢ノ森と表記するそうだ。聖徳太子が湯浴みした伝説が残るという。なかなか古い歴史を持つのだ。

著者の子供の頃から見てきたもので、元は野椎神社だったそうだが、明治の合祀令で近くの阿波神社に合祀されたという。つまり神社でなくなったのだが、森の中に祠があり、近所のおばあさんが水を供えていた。つまり信仰は続いていたわけで、神社でなくなっても聖地であり続けたらしい。

これにいたく興味を持ち、また斑鳩町なら行けない距離でもない。というわけで訪ねてきた。

場所を確認しようとGooglemapで探したのだが、斑鳩町阿波の中に「湯座の森古墳」とある。湯座?古墳というのはどういうことか。不思議に思いつつ訪ねたのだが、住宅地の中で、狭い道が入り組んでおり、なかなか車で行くには苦労する。

それでもたどり着いたのだが……もう、そこには森はなくなっていた。わずかに1本2本程度が残されていて、後は切り株になっていた。かろうじて祠は残されている。

2_20250217115901

しかも、周辺は宅地と駐車場に囲まれている。想像以上に狭い土地であった。しかし、本にあった通り、奥には池(の跡)もある。

5_20250217115901

本に乗っている写真では、もっと木が生えている。撮影がいつかわからないが、出版が今年なのだから、そんなに古くないはず。つまり、伐採されたのはつい最近なのだろう。

なおグーグルマップのストリートビューにも大木が何本もある映像が残る。ただ草刈りは行っており、公園のようにすっきりしている。

伐られた大木には、「阿波村所有につき立入禁止」とある。阿波村という地名が残っているのもすごい。

6_20250217115901

それにしても、神社でなくなっても100年以上引き継がれた聖地なのが、急速に信仰はなくなったようだ。売りには出さないと思うが、駅に近く住宅地のど真ん中だから、土地の価値は高いだろう。

森という名を残すにはあまりに狭いし、肝心の木もなくなってしまった。さらに池も干上がっている。これは池に害虫がわいたからかも水を抜いたのかもしれないが、聖徳太子の伝説があるとなれば、史跡になってもおかしくないのだが。

森が森として保たれるためは、単に人為が入らなければいいのではない。むしろ人の思いがなけれは消える。


ちなみにGooglemapの名前と古墳表記は間違いでしょう。

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