南三陸の林業地が自然共生サイトになった
宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、国が認定する自然共生サイトに認定されたという記事。
南三陸FSC認証林、自然共生サイトに認定 生物多様性に配慮し植林
宮城県南三陸町にある「南三陸FSC認証林」(約2471ヘクタール)が、2024年度前期、豊かな生物多様性が保全されている区域を国が認定する自然共生サイトに認定された。生物多様性に配慮したスギを中心とした森づくりが行われている。
ついでに、こんな記事も。
これに私が驚いたのは、森林認証のFSCを取得したことではない。自然共生サイトに認定された方なのだ。それも約2471ヘクタールと全域らしい。
自然共生サイトとは、環境省が仕掛けたネイチャー・ポジティブ政策の一環。30by30と呼ばれる2030年までに国土(水陸)の30%を自然保護区に指定する国際的な目標を達成するための施策だ。国立公園などの保護地域指定では全然足りないことから、新たな指標で民間の土地も指定するようにした。生物多様性増進に役立つとされた土地を「自然共生サイト」と名付けたのだ。現在、全国で253か所あるが、多くは企業などがCSR的に生物多様性を意識した保全地区である。
私は、かなり前からこの制度に注目していて、そのうち林業地が認定される動きが始まると睨んでいた。ただし、ほとんどの人工林はスギやヒノキ、カラマツなどの針葉樹一斉林である。それでは生物多様性になりにくい。よほど工夫した森づくり(たとえば針広混交林とか)をしていないと認定されない、だから可能なのは所有林のうちの自然林部分ではないかと考えた。林業地と言っても、たいてい一部は植林せずに自然のまま残した森がある。河畔とか尾根筋とか崩落地とか……。
そうした天然状態の森の部分の保全策を決めたら、自然共生サイトに認定されるかもしれない。そうすれば、将来的に固定資産税などの減免措置もあるだろうし、補助金ももらいやすくなる……と睨んでいた。実際、いくつかの林業家の所有森林の一部が認定されている。ただし面積的には小さい。数ヘクタール、いや1ヘクタール未満も多い。大きなところで2~300ヘクタールもあるが。
ところが、今回はそうではないらしい。純然たるスギ林が、FSC森林認証を取得したことで自然共生サイトにも認定されたのだ。どうやら広葉樹も生やして針広混交林に誘導するらしいが、それでも人工林に違いがない。そこが自然共生サイトになったか! 面積も桁違いだ。
まだ認定基準とか、細かなところはわからないが、かなり期待できる。私有林業地の中の自然林は、面積にして1割程度ではないかと思っていたのだが、もし人工林全域も施業方法次第で認定されるなら、可能性は一気に10倍になる。当然、認定特典などの効果も大きくなる。30by30にも貢献する。
もしかしたらFSCの認証を取得したら、自然共生サイトに認定されやすいという事例になるかもしれない。そのうちSGECもなるか……。林業地の林業のできない部分だけ認定を受けるより、林業を行う山そのものが認定を受けられることになれば、意識も変わってくる。
願わくば、サイトに認定されたら受けられる特典を早く示すことだろう。今のところ、どんな特典があるのか明示されていないが、それが明確にわかって指定を受けたら有利になるとわかれば、参加しようという林業家、山主も増えてくるはず。内容次第だが、林業家が森林認証に目を向けるかもしれない。
そして生物多様性を重視した林業も進む。
環境省、林業政策へ一石を投じるのではないか(笑)。今も皆伐一斉造林を推進する林野庁、どうする?
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