獣害でそば屋が休業
奈良県天理市の高原地帯に「荒神の里 笠そば」というそば屋がある。
すべて自分たちで栽培したそばを使っていることが名物だ。それも「挽き立て・打立て・茹がきたて」 。それなのに、そばを出せなくなったため一時休業するという。その理由は、獣害だそうだ。
詳しいことは書かれていないが、昨秋の収穫時期に獣害等により壊滅的な被害を受けた事から、皆様方に地元産のソバを提供する事が困難な状況となりました、とある。
獣害とは、イノシシなのか、シカなのかわからないが、壊滅的とは……。高原だからイノシシはこれまであまりいなかったと思うのだが、登ってきたのか。あるいはシカが柵をかいくぐったのか。いずれにしろ5月には在庫が底を突くのだろう。他地域からそば粉を仕入れてまで開業を続けないとは、思い切った決断。
ここは個人の店とは違って地域おこし的につくられた店だ。
もともと山の中の高原地帯で、1978年に始まった国営総合農地開発事業、つまりパイロットファームとして60ヘクタール以上の巨大農地を造成したのだが、このような国主導の農業は何を栽培するか、どうやって売るかを考えていない。栽培するものに困る例もよく聞くが、手間のいらない作物としてそばが人気。それはこの施設も同じだ。私も、よく似た事例を各地で聞くのだが、実は成功しているところは少ない。たいてい失敗するのだねえ(> <;)。
ここでも4分の1に当たる15ヘクタールでそば栽培を始めた。とはいえ、そば粉だけでは利益など出ない。輸入品にかなわないからだ。
だが1994年に結成された笠そば栽培促進協議会女性部が、そばの加工と販売、そば打ち体験教室……などを始めた。素人のそばうちからスタートしたのである。栽培から加工・販売まで一貫して地元で行うそば屋として、笠そば処がオープンしたのだ。
かつてのそば畑と笠そば処。なかなか繁盛していた。私自身も、幾度も訪れている。名人級の美味いそば……とまでは言わないが、それなりに楽しめる。ほかにも農産物直売もやっていたはずだ。
それにしても15ヘクタール分のそばを食い尽くすとは、どんな獣害だろうか。
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私も何回かお邪魔したことがあります。獣害はおこの毒としか言い様がありません。当地も、猿・鹿・イノシシ・最近はハクビシンなど。獣害対策は行政の補助があるとは言え、そこそこお金がかかります。段々畑のようなところは、余計にお金がかかります。家庭菜園を守る程度の対策では、強風が吹けば、ネットは破れるだけでなく、柵ごと倒れたりでメンテにも苦労します。お金をかけて丈夫な獣害対策をすれば、他の対策が弱いところや、家の庭の草花を食べます。山から、彼らが里に出てこれないようにする対策が望まれます。自衛隊の演習で、山奥へ追っ払っていただけないでしょうかね。
投稿: 野崎 和生 | 2025/03/17 17:08
15ヘクタールもあるソバ畑……と考えましたが、もしかして15ヘクタールもあるから、どこか一か所が破られても気づけない、という面もあるかもしれません。
手間をかけずに栽培できる作物を選んだということは、柵のメンテナンスをする余力もないのかもしれません。
仮に害獣を一斉に駆除しても、絶滅させるのは不可能だから、必ず復活してまた増えます。空白地帯には外部から進出してきます。
これは、終りなき戦いなのでしょう。
投稿: 田中淳夫 | 2025/03/17 22:19