自然尊厳法人~自然に法的な人格を
タイトル読んで、???な人も多いかと思う。だが、実際に決定したことだ。
ニュージーランドでは、森林や山や川に「法的な人格」を与えているのだ。
今年1月には、タラナキ山(マオリ語でタラナキ・マウンガ)を、人間と同じ権利を持つと認めるとした。この山は、ニュージーランド北島で2番目に高い標高2518メートル。タラナキ山とその周囲の山頂と土地を含む。
法律で、タラナキ・マウンガには人間と同じ権利、義務、責任、賠償責任が与えられた。植民地時代に(白人政府に)接収されたこの山が、マオリ族から盗まれたことも認定され、補償がおこなわれる。なお山を管轄するる法人名は「テ・カフイ・トゥプア」。法律で「生きた、分割できない全体」と認定した。
実は山だけではない。2014年には北島の広大な原生林「テ・ウレウェラ」に人格権を付与。これが自然に対して法的な人格を与えた最初で、ちゃんと法律を定めている。もちろん世界初の国である。政府の所有権はなくなり、トゥホエ族がその保護を担うことになった。
また2017年には、北島のワンガヌイ川に「アワ・トゥプア」(祖先の川)として法的な人格を認めている。
ニュージーランドで山に人格権認める法案が可決、先住民マオリの世界観認める
ニュージーランド政府は、「森、川、山に「生きた存在」として法律で権利を認めているわけだ。
法的人格とは、法律によって組織や団体に与えられる法律上の人格で、権利や義務の主体となる資格(権利能力)を指す。法律に従い一定の手続きを経たものだけに法律ではの人格が認められるものだ。一般に株式会社もNPO法人も、この法的人格がある。ならば、一定地域の自然に関与するステークホルダーが法人を設立するケースもあり得る。
これまで私はノンヒューマンズ・パーソンズという考えに触れてきた。こちらは動物全般であり、世界に広がっている。
ノンヒューマン・パーソンズ~動物に“人格”が認められる時代がやってきた
野生動物にも法的人格を与えて尊厳を持って対応しなければならないという考え方が世界に広がっているのである。
ニュージーランドは、動物という枠さえ飛び越えて、森や川や山、言い換えると自然そのもの、いわば生態系や景観に人格を認めたのだ。
もちろんこれらの法律は、先住民マオリの存在と信仰、理念、思想……などが基礎になっているのだが、決して飛び抜けたものではないだろう。そのうち世界に広がる可能性もある。自然尊厳法人とか自然共有法人みたいなものが定められて、普通に登記が行われるようになるかもしれない。
勘違いしないでほしいが、人格を認めたらすべて保護するものではない。家畜、実験動物、そして獣害からの駆除も認められる。会社だって廃業・解散できる。人間が人間を殺す死刑も法的に存在しているのだから、自然を開発することもできるだろう。ただし、法的人格を尊重して行わねばならない。駆除するにしても、痛みや苦しみを与えない。自然も開発しても劣化させないようにしなければならないのだろう。
コモンズの悲劇は、超えられるだろうか。
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