トランプは森のラストベルトを救うか
アメリカのトランプ大統領の言動と政策には、まったくうんざり来る。ときに反吐を吐きそうな気分になる。だいたい法律ではなく大統領令ばかりなのが恐ろしい。
が、今回の大統領令はどうだろうか。あまり大きく報道されていないようだが。
トランプ氏、国有林の商業伐採推進する大統領令に署名 関税対象のカナダ木材依存脱却
内容は、国有地での商業伐採の「即時拡大」を掲げたもの。
当局に、認可の迅速化や絶滅危惧種保護法などの環境保護規制を回避する方策を検討するよう指示している。「外国の生産者」に頼らないよう木材の国内生産を拡大するのが目的で、「米国には、国内需要を十分にまかなえるだけの豊富な木材資源がある」と説明している。ちなみに昨年、アメリカで消費された木材の23.6%は、カナダからの輸入だった。
アメリカは、木材輸出国である。ただ、国境を接しているカナダからの輸入も多い。それを国富の流出だとトランプは感じたようだ。アメリカ北西海岸地帯に森のラストベルトがあるように、仕事を奪われた林業労働者も多い。彼らは麻薬や酒に溺れていく。林業振興で、それらの問題をアメリカ国産材の増産で解決する!
しかし消費者に求められる木材は、丸太ではなく製品としての木材である。ちゃんと製材・加工していないと消費者は使えない。林業労働も高度化しており人材育成なしに使えない。そして森林は機械の並ぶ工場ではなく生物資源としての複雑さを持っていることも理解しているとは思えない。
仮にアメリカが木材生産を増やしても、それを即消費者に届けるのは難しい。製材をどうするか、林業労働力は足りているのか。価格は跳ね上がる、そして伐採のよる環境破壊や再造林など跡地問題の考えねばならない。さもなけれは持続性を失う。
ただ…これを読んで、日本でもやれと思う林業関係者は多いだろうな、と感じた。日本でも「豊富な木材資源がある」とどこかの省庁が連呼しているし、「外国の生産者」つまり外材ではなく国産材を使え、そのために国産材の生産を拡大しろ、という声が強い。国有林を伐ろうという動きが広がっているのも同じかもしれない。日本の林業家はトランプ主義者だった?
しかし、林業労働者が不足し、量も質も安定的に供給できない、乾燥・製材・加工も追いついていない。外材と国産材の材質が違って代替にならない、原木は安いのに製材品になると価格が跳ね上がる産業構造。そして再造林の低迷……などの課題が横たわる。そもそも木材需要が伸びていず、非木質建材もいっぱいだから、価格が上がれば木造建築は減るだろう。アメリカより厄介だ。
日本の森のラストベルトを救う政策とは何か。アメリカが反面教師になるかな。
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