「里山広葉樹の利活用」に向けた提言とやら
林野庁の「里山広葉樹林の利活用を通じた再生に向けての提言」を読む。
里山広葉樹利活用推進会議という審議会?が3月に出したものだ。最近は広葉樹押しの林野庁だが、こんな研究会も開いていたのね。正直委員の顔ぶれはうさ…、なるほどね、と思ってしまったけれど(笑)。
私も6年前のYahoo!ニュースに「もう一つの林業・雑木林を宝の山に変える方法」を書いているから気になるところではある。
掲載されているデータは、使えるかな。。。
提言部分だけ引用。
提言
上記の3つの基本的な視点を踏まえた上で、広葉樹の利活用を進めるためには、入口(樹種、径級)の多様性と、出口(家具・床板~ほだ木・薪炭・おが粉・チップ)の多様性の中で、広葉樹資源の様々な利用を組み合わせることで付加価値の高いサプライチェーンを構築する必要がある。
広葉樹の利活用について一定の成果が見られている地域は、川上・川中・川下のそれぞれの立場の者がコンソーシアムを組んで連携し、消費者への訴求や、サプライチェーンの構築に取り組んでいるが、現在の取組はまだそれぞれの地域が「点」で頑張っている段階で、多くの困難も抱えており、共通する課題も多い。
このため、里山広葉樹林の新たな価値創造と利活用を通じた再生に向けて、①各地域の取組への支援を強化しつつ、
②供給側や需要側の情報の共有や地域横断的な課題に取り組む場として、全国レベルのプラットフォームの構築に取り組んでいくことを提言する。
そして、こうした具体的な指摘もしている。
○すぐに取り組むべきこと
(ⅰ)里山広葉樹の立木伐採予定情報(樹種、径級など)、市場で取引されている原木の市況情報や流通している材の品質の共有
(ⅱ)家具メーカーや材木店、きのこ生産者等が欲している木材情報等の共有
(ⅲ)供給側と需要側の交流とビジネスマッチングとマッチングに必要なコーディネーターの育成
(ⅳ)(ⅰ)~(ⅲ)を円滑に進めるために必要な情報共有や流通拠点のあり方の検討
(ⅴ)里山広葉樹林を積極的に管理し、人との関わりを取り戻すことが 2030 年ネイチャーポジティブにつながることの国民への情報発信
(ⅵ)広葉樹施業の事例収集
○発足後 2~3 年先から取り組むべきこと
当面、上記に取り組みつつ、準備検討を重ね、以下の内容に数年後に取り組む。
(ⅰ)建築家やデザイナー等の需要者からの相談の受付
(ⅱ)広葉樹材の伐採・造材・仕分けや、加工・流通、里山広葉樹林の管理等に関する人材育成や相互研鑽の実施
(ⅲ)広葉樹林の管理や利用による生物多様性保全への貢献等のプラスのインパクトを定量的に評価する指標の検討
さあ、提言は出ましたよ。誰がやるんでしょうね。
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針葉樹と違い、偏心率の高い広葉樹の伐倒には高い伐倒技術が必要であり、危険度はかなり高くなります。集材時には広がった枝が抵抗となり、高い集材能力のウインチと破断荷重の高いワイヤーが必要となります。曲がった幹は、ハーベスタによる造材が困難な場合が多く、チェンソーによる造作作業が主となります。結果生産性は低くなり、労災事故の確率は高くなります。
…と、提言には記載されていますでしょうね。当然!
投稿: 山のオヤジ | 2025/04/20 20:31
「提言」は、リンク先に公開されていますから、ぜひ読んでください!
「山のオヤジ」さんが審議会の委員になればよかったですねえ。
投稿: 田中淳夫 | 2025/04/21 20:07
おじいさんがしば刈りする意味がなくなってから60年くらいですから、その間利用できなかったものをいまさら、という感じではあります。
投稿: 岡本哲 | 2025/04/23 10:16
林野庁は、今や広葉樹林に目を移していますから(スギ、ヒノキは飽きたのか)、何がなんでも利用したいという意図で企画したのでしょう。
机上の論理に終わらないことを期待します。
投稿: 田中淳夫 | 2025/04/23 10:26