草抜きは土壌環境の破壊!
そろそろ庭に雑草が目立つようになってきた。庭木や畑はある程度いいのだけど、歩くスペースに雑草が繁ると困る。
そこで草抜きをするわけだが……ここで草を抜くことが次の草を生やすのではないか、と思いついた。草は根こそぎ取らないと、すぐにまた生えてくるとよく言われるのだが、根こそぎ抜くと土壌を引っくり返す。耕したも同然。すると柔らかくなった土壌に適合する早生の草が生えてくるお手伝いのようになるのではないか、と。
土壌は、さまざまな生物が共生して作り上げる自然環境だ。また土そのものが植物とともに物理的環境を作り上げている。そこにさまざまな草木が生えることでお互い牽制し合い、繁殖を抑える。それなのに草抜きは、土壌環境を破壊してしまう。それが土壌生物を殺すかもしれない。せっかく有機物を分解していたのに止まってしまう。あるいは柔らかくなった土が雨に流される確率も増えて、土壌を流亡させる。
それを破壊することは、生態系を狂わせ、一部の植物だけ大繁殖を招きかねない……。しかも跡地には、早生である場合の多い外来植物の侵入を許すのではないか、と考えたのである。
セイタカアワダチソウにウスベニチチコグサ、キキョウソウ。と検索で出た。ほかヌスビトハギやハルジョオン。いずれも外来種。
そこで私は草抜きをせず、せっせと園芸用ハサミで茎を切断することにした(^_^) 。まあ、庭という狭い空間だから、これで間に合う。
雑草を根こそぎやっつけようとするのは、はてしなき戦いだ。むしろ雑草をしつける( ̄^ ̄)。高く背を伸ばしたら切られるのだよ、地面すれすれに葉や茎を広げるのなら「見なかったこと」にしてやろう、と草に“教育”する。この教育には根気がいるが……。
背が低い草ばかりになれば、こちらも歩く邪魔にならないし、むしろ芝生のようになって快適になる。
実際、奈良公園では、伸びた草はシカに食われてしまうので、背を低く育つことを覚えたという。小さく背の低いまま花を咲かせ種子を実らせるのである。これを進化とか適者生存と呼べるのかどうかはわからないが、環境に適応するのである。
これを庭でもできないか。もちろん奈良のシカのように1000年かけて築けるわけではないが……。
そういえば、除草剤は土壌を守るために開発された、という話を聞いたことがある。欧米では草抜きをすると土壌が乾燥して傷むそうである。一部の草を選択して枯らす方が土壌のためにもよいらしい。もちろん人間の労働を減らす効果も大きくて、それで普及した面もある。
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雑草の話で、確か日曜日の朝の東京のラジオ
雑草研究の大学の先生が出演
稲垣栄洋(いながき ひでひろ)
1968年静岡県静岡市生まれ
岡山大学大学院農学研究科修了、農林水産省、
静岡県農林技術研究所などを経て
現在、静岡大学大学院教授
農学博士
著書やネットで読める対談など多数
安住紳一郎の日曜天国の出演ユーチューブ
2023/11/19と2015/01/04放送分がネットに
投稿: 参考 | 2025/05/30 07:56
稲垣さんですか。一度会ったことがあります。
彼の本も面白いですね。一つの植物、あるいは生態系にストーリーを持って語ってくれるから、スルスルと頭に入る。
雑草学は、生物多様性や人間社会との関わりを考える上で非常に重要な切り口になると思っています。
投稿: 田中淳夫 | 2025/05/30 08:58