謎は解けた!大屋根リングの木材
以前から謎だ、わからん、と書き続けた万博の大屋根リングの木材の素性。
私が2年前に調べたところ柱部分がフィンランド製の集成材だった。国産材は福島や高知から調達して、CLTとして屋上部分に使うとされていた。ざっと7割が外材となる。ところが今春になると万博協会側が7割がスギ、ヒノキの国産材だと反論し始めた。
そうは言われても、現実のリングを見ると、そんなにスギやヒノキは見当たらない。とくに柱や梁は、どう見てもオウシュウアカマツ、スコッチパインではないかと思える木肌ばかり。柱部分に使っていなかったら、どこに国産材使ってるの?屋上部分の木材量がそんなに多いと思えないが。これで国産材7割と言われても……。
森林ジャーナリストの事件簿 だ。が。
謎はすべて解けた!(かどうかは分からんけど……)
じっちゃんの名に賭け……ないけど、きっかけはAIによる検索回答であった。次のような文句が出てきたのだ。
大阪・関西万博のシンボルである「大屋根リング」には、主に国産の木材が使用されています。具体的には、スギ、ヒノキ、そして一部に外国産の木材(主に欧州アカマツ)が使われています。山陽新聞によると, 約2万7千立方メートルもの木材が使われ、その3分の2が岡山県銘建工業の集成材やCLT(直交集成板)です。
その後、山陽新聞のHPでも確認。そうか銘建工業か。銘建工業は岡山県真庭市にある大手集成材メーカー。リングの3分の2の部材を製造したという。一部の報道では6割だと記されている。これに福島のメーカーの分などを足して7割というわけか。
銘建工業、頑張った。万博リング用の柱や梁となる集成材を生産したのだろう……。この記事だと、銘建工業が国産材を使って集成材やCLTをつくったように読めるが。
あれ? 銘建でつくる集成材に使用しているのは、だいたいオウシュウアカマツではなかったっけ。CLTは、国産材を使わないといけないのでスギやヒノキ(とトドマツ)で作っていると思うが……。
もしかして国産材ではなく、国内メーカーによる集成材が、7割なんじゃないの? そして3割が輸入のフィンランド製集成材(オウシュウアカマツ)としたら。同じ樹種の材料を使っているのだったら区別はつかない。
万博協会、国内メーカーはみんな国産材を使っていると勘違いしたのか? いや、わかっていても「国産だ」とわざと使った可能性もあるな。
設計した人も、国産材7割だと力説していたが、内訳把握してる? スギとマツの違いわかってる? 樹種の違いを見抜ける?
追記・その後の調査の結果をYahoo!ニュースの記事にした。
万博リングの木材の素性と、トレーサビリティを考える
「木製品・木造建築」カテゴリの記事
- ベトナムの林業はエネルギー産業か(2025.07.01)
- 杭はいつ、どこから腐る?(2025.06.30)
- 万博リングの行く末(2025.06.24)
- 「昔ながらの樽丸づくり」展(2025.06.21)
- 大阪万博の木質パビリオン(2025.06.16)
最後の一行は胸のすく思いでした。
https://www.asahi.com/sdgs/article/15710169
ここでも7割と言っていますね。
知っていて違ったことを言えば世間が許さないでしょうから、知らなかった、勘違いということになるのでしょうか。
あの方はおそらく「木」に詳しくないです。過去の設計例を見てそう思います。
ちなみに私も詳しくありません。
投稿: こば | 2025/06/05 21:05
以前にも言いましたが、見た目と大きく乖離した数字を謳うなら、きちんと根拠を説明すべきです。
やれ何割だとかいうだけでは説明になっていない。野球の打率じゃないんだから。まず、カウントは材積なのか、金額なのか、部品点数なのか。産地とは、伐採国なのか、それとも加工した場所なのか。材種は?使用箇所は?
銘建は地元ですが、銘建の製品が全部国産になるのなら、魚介類の産地偽装より酷い話です。著しく納得がいきません。
投稿: かたさん | 2025/06/05 23:48
写真でも明らかにスギやヒノキの見た目だけど……
ていうかオウシュウアカマツやスコッチパインみたいなアカマツ系統は国産でも見え掛かりには使わない
(参考URL: https://www.jawic.or.jp/woods/sch.php?nam0=ousyu)
筆者は表にスギやヒノキ使ってる集成材見すぎてそれがオウシュウアカマツだと勘違いしてるんじゃないだろうか?
そのくらい見た目悪いよアカマツ系統
投稿: | 2025/06/06 04:48
銘建工業は別に産地擬装していないでしょう。ちゃんとHPにも原材料について書いている。
もちろん材積か部品点数か……(金額ではなさそう)の問題はありますが、正確な情報公開していないのは万博協会でしょうね。
投稿: 田中淳夫 | 2025/06/06 09:03
産地偽装はダメ、絶対です。ただ、国産材の無理な生産が日本の森林環境を破壊している可能性を考えると、国産材の方がよいという前提にもならないですね。最初から正直に欧州材を使ってますと言えばよかっただけだと思います。むしろ、リングの木材をどれだけ再利用できるかが重要です。産地偽装と資源の廃棄は許せないとの思いです。
投稿: くま | 2025/06/06 15:56
国産材のスギやヒノキが何㎥使わて、それに伴う炭素固定量がどの位あるのか周知することが大切と思います。併せて外材も同様に森林認証された材なのか、クリーンウッド法により適切に輸入された木材であること等もPRすべきと思いました。
正確な情報開示と木材利用促進のために関係者は公開して頂きたい。
投稿: lemon | 2025/06/06 16:04
森林ジャーナリストを名乗っているのなら、直接銘建工業に取材して、納入した資材の樹種と生産地(産出国)を確認すればトレーサビリティ情報は開示されると思いますが。
投稿: コガネムシ | 2025/06/06 16:38
もちろん、取材はしていますよ。ブログでは明かさないだけ。ここに書くのは仕事じゃない。重要なことはブログに書かない。
別に私は銘建を責めているわけではなく、むしろ短期間によく頑張って生産したなあ、と思っています。
ただ、万博協会の情報開示がいいかげんなので、いったいどうなっているの?と調べているだけです。
投稿: 田中淳夫 | 2025/06/06 17:05
いやいや、銘建さんが偽装したと言いたかったわけではないです。仮に万博協会が国内の工場から出た物を国産と見なすトリックを使っていたとしたら、悪質かなと。
僕も銘建さんにきいてみましたが、きちんとお返事をいただけました。お仕事の邪魔をしたくないので、触れずにおきます。
投稿: かたさん | 2025/06/06 21:16
良い記事です。実務と政治は目的が違うから色々な都合の良い嘘でない数字を探してきますね。国産、の言葉が加工生産地なのか出材生産地なのか書いてないから。田中さんは業界ジャーナリストとして業界人の疑問を整理しているし、記事の主旨もそこだと感じました。
投稿: ながさか | 2025/06/07 08:21
ありがとうございます。ただ、、これはブログであって思いつきで書いたものです。ちゃんと調べて記事にするための前段のつもりなんですね。
かたさんも、銘建さんに聞き取りをしたというので、その内容に期待したいですね(^_^) 。
私は業界よりも森林という生態系をメインに置いて人間社会を眺めていこうというスタンスです。
投稿: 田中淳夫 | 2025/06/07 10:13
現在、万博リングには非難ばかり、それも専門家による「嘆き」と「非難」。
ならば、少しは頭をひねり、これで儲けることを考えろと言いたい。
素人の私でも、建築費344億円を上回るアイディアをひねり出した。
万博リングで400億円稼ぐアィディア
「落書き代1口1万円で400億円回収-バンクシーはタダ」
「万博リング344億円廃材の使い道」
「5本・人道橋/淀川・鴨川・日本橋川・隅田川」&「108階・多目的高層建築」
https://note.com/toshinaga1945/n/nb721353020d6」
投稿: 占部聰長 | 2025/06/07 10:49
最初は全て国産材でそれも西日本産で進めようとしたが、すぐに行き詰まって、こうなりました。
工法的にも強度的にも優位性のない「貫工法」ってのも、なんなの?
今どきの建築家って、「こんなんいいよね!」的な浅い提案が多い
投稿: ぴー | 2025/06/07 22:52
私が聞いた最初の計画は、無垢の国産材でつくりたい、でした。次にNLT(釘で板を止めた集成材ぽいもの)を使おうと言い出しました。その方が小規模工場でつくれますからね。
結果的に集成材とCLTになりましたね。大規模工場でしか生産できない。
貫工法も、そのままでは建築基準法を通らないから金属板とボルトで止めるとなったし……。
ある意味、万博会場は、建築家と工法の実験場です(^_^) 。
投稿: 田中淳夫 | 2025/06/08 11:18