「共生」でなく「ただ乗り」する花
玄関先に生えてきたキンリョウヘン(金稜辺)。植えた記憶もないが、どこからか種子が飛んできたのだろう。
シンピジュームの仲間でラン科らしいが、この植物にはニホンミツバチが群がるという特徴がある。なぜなら、ニホンミツバチを引き寄せるフェロモン物質を出すからだ。そして呼び集めたミツバチに受粉をさせる。とまあ、これだけなら普通の植物の営みなのだが……。
重要なのは、このキンリョウヘン、蜜は出さないことだ。ミツバチだけでなく、受粉を司る昆虫は、たいてい蜜目当て。つまり餌となる蜜を得る代わりに花粉を運んでくれる、というギブアンドテイクの関係なのだが……蜜をつくるのにも、それなりのエネルキーがいる。植物も消耗するのだろう。キンリョウヘンは、それを惜しんで、やらずぶったくりをめざして進化したらしい。言い換えると、ミツバチの労働に対価を与えないでただ乗りする。いわゆるフリーライダーだ(フリーライターではないよ)。
しかし、ミツバチ側からすると働き損のくたびれ儲けである。騙された、詐欺みたいなものだ。
ちなみに集まるのはトウヨウミツバチ(ニホンミツバチも含まれる)だけで、養蜂に飼育されるセイヨウミツバチには効き目がないこと。フェロモンの種類が違うのだろう。だから養蜂家はただ乗りされない。
動植物は、共依存というか共生というか、お互い得るものがあることを前提に進化してきたはずなのだけど、たまにフリーライダーが登場する。それでも通常なら、普段は働かなくても、いざというときに出撃する防衛能力を持っていたり、あるいは労働の交代要員だったりと、それなりに意味があるものだが、なかには完全ただ乗りもいる。人間社会なら、税金を払わないで公共サービスを受けるとか、給料もらっているのに働かないオジサンとか。もちろん泥棒、詐欺などの犯罪者もただ乗りである。
通常はただ乗り、フリーライダーには厳しい目が向けられがちだが、目先の利益優先になると、社会への義務・貢献を疎ましくなる者は少なくなく、わりと憧れる人もいる。
その典型が「なんとかファースト」を唱える人だ。トランプ現象ともいう(笑)。そこそこの自国民優先ぐらいで許容範囲に納まればよいが、自国民だけが豊かになればいい、他国・異民族は踏みつけにしてもいいという主張は、フリーライダー的思考だ。これは社会的コストを払わないで自らだけが恩恵を受けようとすることから、治安の悪化などを招く。結果的に、自身の生活環境を劣化させ結果的に報復を受ける。
私が「業界脳」と呼んでいる、業界利益だけを考えて社会全体を見ない連中も同様である。環境問題より業界の利益、自分の利益、となれば最終的には持続性を失い業界を崩壊させるだろう。
キンリョウヘンは、それほど繁栄していないところを見ると、実は生態系の狭間で細々と生きているのかもしれない。
庭に実ったプルーベリー。ちゃんと対価を払ってくれているよ。
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