シカ・シンポがっかりの理由
このところ2週続けて京都のセミナー、シンポジウムに行っている。
7月4日は森林総研関西支所の公開講演会「動く山、動く土」で、12日は「日本の山はシカの楽園? 山、森、水が危ない?!」である。
前者は、想定以上に面白かった。考えるところ大だったのだが、考えている最中なので、紹介はまた改めて(^_^) 。そして後者の方に期待していたのだが、残念ながら私の望んでいる内容ではなかった。私がテーマを読み違えたか。
私は、野生のシカが増えていることに関する疑問や対応策に期待していたのだが、ここで語られたのは「シカの被害」であった。つまり植生破壊や土壌浸食、そして災害である。その実態の研究は示されたのだが、シカの生態についてはほとんど語られず。
また増えたシカをどうするか、という点については、「駆除する」としか言われない。ハンター不足、猟友会の問題などが登場するかと思ったが、ほとんど触れられず。ただ浸食された土地の植栽や、崩れないようにする小土木技術などが紹介される。
う~ん、それも大切なんだろうけど、私の論点と違う。
かろうじて最後(全体は6時間半の長丁場だった)の15分、会場からの声として、なぜシカが増えたのか、駆除を担当する猟友会の立場とその裏事情……などが出た程度であった。
ただ印象に残ったのは、一人の演者が口に出した「タイミングを逃した。手遅れかもしれない」点だ。レジームシフト、別の言い方ならティッピングポイントを越えてしまって止まらなくなった、つまりシカは増え続け、対策は追いつかない、という指摘だ。
一方で「なんとか流域全体、町も巻き込んで合意形成を」という声もあるが、町の人が参加したら「シカを殺すなんてかわいそう」というシカモリ協会(> <;)なんぞができるに違いない。もっとステークホルダーを絞るべきだと思う。そのうえで冷徹な専門家と実行部隊が必要だ。
なお、私が以前より考えていて、だから本シンポにも興味を持ったのは、本当に「異常なほどシカは増えた」のか、という疑問だ。
奈良公園には、奈良のシカ~神鹿がいる。1000年以上前から保護されており、頭数は現在約1300頭とするが、歴史的に見ても500~1000頭はずっといたはずだ。(戦国時代に訪問したポルトガル人は3000頭くらいいると記録しているが、これは調査した数字ではないだろう。)
ただ明治維新と戦中戦争直後は、保護から外れて数を著しく減らした(数十頭レベル)。おそらく密猟されたのだろう。

そして奈良公園の一部である春日山原始林の植生は、シカのために荒れている。それを問題とする声も強い。天然記念物(奈良のシカ)が特別天然記念物(春日山原始林)を食べている、と言われている。
ここで問題になるのは、いつから荒れているのか、という点だ。どうも江戸時代から荒れていたらしい。そりゃ1000頭からのシカがいて、それを駆除どころか保護をしていて、荒れないわけがない。
そう考えると、シカがいる山は、常に荒れた自然になる、のではないか? 自然は常に豊かと思い込まず、人為関係なく荒れた自然はある。植生は貧弱になり、土砂崩れを起こし、地形が変わる。山は動く、土は動く、のだ。
むしろ明治と昭和初期は、シカが密猟されて数が減った異常な時期だった。だから植生が短期間だけ豊富になった……と考えられる。その時期を過ぎて、再びシカの数がもどった今を比べるから「荒れた、困った」となる。
とはいえ、シカが永遠に増え続けるわけがない。どこかの時期に激減させるような環境要素があるはずだ。まさにレジームシフト。それをもたらすのは何か。気象?病気?狩猟?餌不足?天敵? それを探りたい。
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