「気候変動と戦う太平洋島嶼国の学生たち」を知った
今年年7月23日、国際司法裁判所(ICJ)は、気候変動に関する勧告的意見を公表した。これは国連総会の要請を受けて行われたもので、気候変動と国際法に関して初めての判断である。日本の報道は地味すぎたが、もっと注目すべきだ。
これは、国際法的に、世界各国が気候変動への対策に取り組まなくてはならないということ。それを“世界共通の基準”だとしたのだ。だから対策をとらないことは「法的な問題」として示したことになる。
ICJは、気候変動を「人類にとっての緊急かつ存亡に関わる脅威」としている。すべての国家に温室効果ガス排出の抑制と適応策の実施という「法的義務」があると結論づけた。しかも、この義務は「条約に署名した国だけでなく、すべての国に及ぶ」としたことだ。つまり「気候変動に取り組まないことは人権侵害であり、倫理に反する」というのが国際基準だとした。
Obligations of States in respect of Climate Change
The Court gives its Advisory Opinion and responds to the questions posed by the General Assembly
詳しくは……読むのが辛い。一部を機械翻訳してみる。
(a) 不法行為または不作為が継続している場合、その停止。
(b) 状況に応じて、不法行為または不作為の再発防止の確約および保証を提供すること。
(c) 国家責任法の一般条件が満たされていることを条件として、賠償、補償および弁済の形で被害国に完全な賠償を行うこと。ただし、不法行為と損害との間に十分に直接かつ確実な因果関係が証明できることを含む、国家責任に関する法律の一般条件が満たされていることを条件とする。
裁判所の判断
裁判所はまず、要請された意見を表明する管轄権を有することを確認し、要請された意見を表明することを拒否する正当な理由はないと結論付ける(37~49項)。次に、裁判所は、決議77/276が採択された一般的な文脈と関連する科学的背景(72~87項)を検討した上で、提起された問題の意味と範囲を検討する。
問題(a)に関して、裁判所は、「国際法上の」義務への無条件の言及は、総会が国際法全体に基づき国家に課せられる義務について裁判所の意見を求める意図を示すものであり、裁判所の回答を特定の国際法源泉または分野に限定するものではないことに留意する。
問題(b)の範囲に関して、裁判所は、法的結果について一般的な観点から論じることが求められており、特定の国家または国家集団の法的責任を特定することは求められていないと考える。かかる責任の決定には、個々の事案ごとに行われるべき具体的な評価が必要である。問題(b)に関して、裁判所は、第一に、気候システムを保護する義務に違反した国家に対する国家責任の適用可能な法的枠組みを確立すること、そして第二に、そこから生じる法的結果を一般的な言葉で概説することのみが求められていると判断する(94~108項)。
「特に影響を受ける」または「特に脆弱な」特定のカテゴリーの国家に関する法的結果については、裁判所は、慣習国際法における国家責任に関する規則の適用は、被害を受けた国のカテゴリーまたは地位によって異なるものではないことに留意する。したがって、「特に影響を受ける」国または「特に脆弱な」国は、原則として、他の被害国と同じ救済を受ける権利を有する。特定の国が、その地理的状況および発展段階により直面する課題は、関連する国際法の基本的規則によって規律される。
裁判所は、問題(b)の後半部分は、気候変動の悪影響を受ける現在および将来の世代の人々および個人に関する法的結果について問うものであると指摘する。裁判所は、個人が国家の法的責任を主張する権利、または気候変動に起因する損害または危害を含む特定の状況において請求を行う権利を有するかどうかは、国家の関連する基本的義務に依存すると考える(109~111項)。
総会が提起した問題の範囲と意味を定義した上で、裁判所は次に問題(a)を検討し、最も直接的に関連する適用法を決定することから始める。裁判所は、以下のものをそのように特定している。
国際連合憲章、気候変動に関する3つの条約、すなわち、国連気候変動枠組条約、京都議定書、パリ協定、国連海洋法条約、オゾン層保護のためのウィーン条約、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書、生物多様性条約、特にアフリカにおける深刻な干ばつ及び/又は砂漠化を経験している国における砂漠化の防止に関する国際連合条約、慣習国際法、特に環境への重大な危害を防止する義務及び環境保護のために協力する義務、中核的人権条約、そして慣習国際法の下で認められる人権。さらに、持続可能な開発、共通だが差異のある責任とそれぞれの能力、公平性、世代間の公平性、そして予防的アプローチまたは原則の原則は、最も直接的に関連する法的規則の解釈と適用のための指導原則として適用可能であると決定している(113~161項)。
私が驚いたのは、この勧告的意見を出すに至ったのは、どこかの国の政府が頑張ったからではないこと。太平洋島嶼国出身の南太平洋大学法学部27人の学生たちの運動によるものだったのだ。彼らは「気候変動と戦う太平洋島嶼国の学生たち(PISFCC)」というグループを2019年につくり、国連総会に働きかけ続け、とうとう国際司法機関を動かしたのである。
気候変動で怖いのは、単なる温暖化などではない。海水が膨張することで海面上昇すれば、多くの陸地が沈むことだ。とくに島嶼国は深刻である。だから、その国の若者は動いたのである。付け加えれば、意見を取りまとめたICJの所長は、日本人の岩澤雄司氏。
学生たちが属している国名は全部わからないが、バヌアツ、ツバル、ナウル、トンガ、フィジー……などのよう。(若干不思議なのは、メラネシア諸国が多いことだ。メラネシアは、火山が多くて山がちなので、海面上昇でも島全体が沈む心配はあまりないと思うのだが、危機感は共有しているらしい。)
国産裁判所の意見は、実際の各国の政策を動かせるだろうか。意見に法的な拘束力はない。しかし明確に法律違反と言われれば、政府の政策に加えて企業活動にも影響を及ぼすだろう。ならば政府も無視できないはず。
若者が世界を動かす。そんな動きも知っておきたい。
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