史上、もっとも高価な杉樽
木樽の需要は少なくなった。かつては液体の輸送に欠かせないアイテムだったのに。
今は小さな贈答品用の樽があるだけだ。むしろ木桶の方が、最近は需要が生まれている。一部の日本酒や味噌、醤油メーカーがこだわりから木桶を使っている。樽は、洋酒メーカーなどが寝かせるための広葉樹材の樽が少しある程度。
その中で、とてつもない木樽、それも杉樽を見つけてしまった。
これは、貯水槽である。あるのは川上村のかわかみ源流学園。まだ開校して1年の新しい義務教育学校(9年生)なのだが……。ここに貯水槽として木樽を設置している。もちろん材料は吉野杉である。だが、それだけではない。
なんと使われたのは、400年生の杉なのだ。「歴史の証人」と名付けた人間が植栽して育てた木としては最古級の杉を伐採して、つくった樽なのである。そんな木を使うとは……見たところ、高さは3m程度だが、木目の細かいこと。どこにも節はない。日本一高くつく木樽だろう。
吉野林業は樽丸林業とも呼ばれていて、以前は樽桶部材の生産で知られたのだが、それを彷彿させる“作品”と呼べるような木樽だ。
ちなみに木の貯水槽でもっとも有名なのは、南極の昭和基地だろう。氷点下40度、50度まで下がる南極では、金属はおろか合成樹脂も持たない。極低温では破壊されてしまう。その点、木材は全然平気。だから南極の野外に置く容器は、木でなくてはいけないのである。
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コメント
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北米のビルのうえの貯水タンク木造があるのは低音対策なのかな。
水をうまくするためかと思っていました。
投稿: 岡本哲 | 2025/09/16 09:04
たしかに欧米の方が、木の貯水槽(正確には受水槽らしいですが)が多いそうです。
木でつくると温度変化が少ないので水が腐りにくい、などの理由のようですね。金属より長持ちすることもけあるのでしょう。木の香りがつくのは、喜ばれるか嫌われるか、どちらかな?
投稿: 田中淳夫 | 2025/09/18 09:21