ノーベル賞の発表が始まった。初っぱなに日本人の医学生理学賞受賞で出て盛り上がる。
もちろん結構なことなのだが、その内容はわかったようでわからない(^^;)。正確に言えば、私の興味の範疇から遠いということだろう。
物理、化学、医学……いずれも目に見えない世界だ。生物を扱っているとはいえ、実は分子レベルの物質の研究であり、マクロな生物界や地球界の壮大さ、ロマンなどを感じさせないのだ。

ノルウェー・オスロのノーベル賞記念会館
だから注目していたのはイグ・ノーベル賞。こちらが好きだ。ノーベル賞より内容に興奮する。
今年も日本からは「シマウシ」を研究した農研機構=農業・食品産業技術総合研究機構の研究グループが受賞した。これは5~6年前に発表されて私も覚えているが、極めて真面目な研究ながら頬が緩む素敵な研究だ。シマウマにハエがたからないというのは面白く感じたのだけど、それをウシに応用するなんて。
イグ・ノーベル賞には、単に奇想天外な研究だからよいのではなく、真面目な研究成果がある。こちらに受賞者が出ているうちは、日本の科学研究現場もまだ持ちこたえているな、と思う。こんな発想でも研究させてくれる舞台があることが重要だろう。
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ただノーベル賞の分野は、「生理学医学賞」のほか、「物理学賞」、「化学賞」、「文学賞」、「平和賞」、「経済学賞」。これって、偏っていないか?
ノーベルが自分の興味ある分野で決めたのだろうけど、現代科学では抜け落ちている分野が多い。ちなみに経済学賞は後に追加されたものだけど、正式なノーベル賞とは言えないそうだ。
たとえば私が好きな生態学や動物行動学、さらに地球科学に宇宙なんてのは、ノーベル賞で受賞できない。
あえて言えば,2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士の「ネアンデルタール人のゲノム解読」が面白かった。現代人がネアンデルタール人のDNAを受け継いでいることを発見した点は話題を呼んだ。ただし,これも遺伝子解析という点から「医学」「生理学」に関係あるからかろうじて引っかかったのではなかろうか。
過去の受賞者を調べると、動物行動学のニコ・ティンバーゲン博士も、1973年にローレンツ、フリッシュと共にノーベル医学・生理学賞を受賞していた。かなり古い。ローレンツが受賞していたのか。
実は、私の興味のある分野の賞に、クラフォード賞がある。
ノーベル賞と同様に、「スウェーデン王立科学アカデミー」が受賞者を選考する委員会を持っているのだが、主な表彰分野は「天文学」、「数学」、「地球科学(古生物学を含む)」、「生物学(特に生態学)」なのだそうだ。
人工腎臓の発明者であるホルガー・クラフォードと、彼の妻アンナ=グレタ・クラフォードによって1980年に設立された賞である。そこではノーベル賞が扱わない分野を補完するように選んだとある。また特別に関節炎の研究者にも出るらしい。数学にはノーベル賞級のフィールズ賞があるけど、その他の分野は目立つ賞がないね。
受賞記録を見ると、うわっ、楽しそう。宇宙に地質学・地球物理学、そして恐竜を含む化石の世界。もちろん生態学も。
近年の受賞者を見ると、2023年はドルフ・シュルター。「フィンチとトゲウオの革新的な研究」。進化論の適応放散だ。
2022年は、アンドリュー・ハーバート・ノール。アメリカの古生物学者、古植物学者で、初期生命の微化石記録を発見。
2020年は、ユージン・ニューマン・パーカー。アメリカ合衆国の宇宙物理学者・太陽物理学者である。1958 年に太陽風の存在を理論的に予言した。他にも現在の太陽物理学の土台となる様々な理論的アイデアを創出した。
日本人を探してみると、遺伝学者の太田朋子は、進化の「ほぼ中立」説で2015年に受賞している。
日系アメリカ人の真鍋淑郎も、気候モデルの研究で2018年受賞していた。真鍋はその後ノーベル賞も受賞した。
……などなど。こちらをもっと紹介してくれないかなあ。全然知られていないじゃないか。
ちなみに賞金は、ノーベル賞は1000万スウェーデン・クローナ(約1億円)。クラフォード賞は50万米ドル。
そういや、私は以前「森のノーベル賞」を紹介した。
森のノーベル賞?
“森のノーベル賞”に日本人のセルロースナノファイバー研究が授賞!
いずれもスウェーデンなど北欧が選出している賞という点でも、面白い。
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