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森と林業と動物の本

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2025年10月

2025/10/31

森林面積は減っている?増えている?

よく言われているのは、地球の森林面積は減っている、ということ。

たしかに各種統計によると減っていることになる。

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世界の森林面積が減っているって、本当? 

30年間で日本の面積の約4.7倍の森林が失われました。
国連食糧農業機関(FAO)によると、1990〜2020年の30年間に、世界中の森林は約178万平方km(約1億7800万ヘクタール)減少しました。
これは北アフリカ2位の面積を誇るリビアに匹敵する面積で、日本の約4.7倍の面積でもあります。

ただ、拙著『虚構の森』では、ネイチャー誌に「地球の森林は増えている」という論文が載っていることを紹介した。これは地球の衛星画像を解析した結果だった。

その後、同じネイチヤー誌に「いや減っている」という論文も載ったりしているから、必ずしも正しいとは言えないし、そもそも森林の中に果樹園やアブラヤシなどの樹木性の農作物は入っているのかどうか、という問題もある。

ただ一方で日本の森林面積に関すると、

日本の森林面積は減っていないって、本当?

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◆A/本当です。ほぼ横ばいで推移しています。
世界の森林面積が減少の一途をたどっている一方で、日本の森林面積はほぼ横ばいで推移しています。

この場合も、統計によるのだけど、実は私は疑問を持っている。なぜなら、毎年何万ヘクタールかの皆伐が行われているのに、それが統計にちゃんと反映していないからだ。

日本の統計では、伐採跡地も森林、なのである。なぜなら、その後再造林されて森林にもどるから。。。。

おい、再造林率3割なんだぞ。単に地目が林地としているだけで、本当に地上に森林があるかどうかは統計に関係ないのだ。

 

2025/10/30

木造ビルブーム?だけど……

先日の全国紙に掲載された1面広告。

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竹中工務店だが、木造の高層ビルを語っている。これだけではなく、最近は木造ビルを建てます!という宣伝広告が目立つように思える。ニュースでも、木造で建てば流れる。

そういや林野庁はCLTの推進で「木でビルが建てられる」と宣伝していた。CLTを使えば、木造の高層ビルが建てられるというのだ。そして木造は炭素を貯めるから、木材を大量に使うビルディングは炭素貯蔵効果が高い、とする。そしてカーボンニュートラルだから気候変動対策にもなる、というわけだ。

そこで、現在次々と建設計画がある木造ビルはCLTを使っているだろうか……と思いついたのである。そこで最初は、やはり竹中工務店から。

竹中工務店の木造建築・木質建築

これによると、「2時間耐火の燃エンウッド®」、木質耐震補強技術「T-FoRest®を使っているとか。だが、なかなかCLTという言葉が出てこない。そこで改めて検索すると、

CLTを天井面に使用し、温かみのある室内空間を実現するための3つの床工法を開発しました。いずれの工法も、CLTとコンクリートスラブ(床を構成する構造体)の組み合わせで構成されています。スラブが持つ構造性能(強度や耐久性)をCLTが高めることにより、梁の少ない開放感のある空間の実現や、施工性を向上させ工期が短縮される等のメリットが生まれます。
以下が3つの工法です。
「KiPLUS DECK」(特許出願済):CLTとデッキ合成スラブを組み合わせた工法。
「KiPLUS SPANCRETE」(特許出願済):CLTとプレキャストコンクリート「スパンクリート」を組み合わせた工法。
「KiPLUS SLAB」(特許出願済):CLTと現場打ちスラブを組み合わせた工法。

なお開発した準不燃材料は、スギCLTに透明度・耐久性に優れた難燃化塗料を塗布したもの、ともある。

なるほど。当初のCLTの宣伝ほど、「CLTを耐力壁にしてビルが建つ」というものではなく、何かほかの建材と組み合わせてCLTを使うものであった。

そうだろうねえ。私もCLTを構造材に使うという発想はイマイチに思っていた。ようするにCLT万能なのではなく、あまたある建材の一つとして、部分部分に組み合わせるのだ。

健全な使い方だと思います(^o^)。

そういや竹中の木造ビルも、何も国産材を使ってるとは書いていないけど……。

実は、私も各地で木造ビルを見かけたら見学するようにしているのだが、CLTはあまり登場しないのだ。高層ビルを建てるという目的からすると、鉄骨やコンクリートなどとのハイブリッドの方が適しているし、木造だとしてもほかの建材、工法で十分可能なのである。

折しも最近見たのは、奈良県五條市の体育館。

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広い空間を持つアリーナの大屋根部分を支えるのは、住宅用の中断面集成材。あえて大断面集成材を使わずに作ったのだという。格子状に立体的に組むことで長いスパンを支えている。CLTは使っていない。

CLTの工場を全国に建ててしまったけど、細々と使用量を増やしていく努力するしかないだろうなあ。

 

2025/10/29

Y!ニュース「自衛隊がクマの駆除に出動した日」を書いた裏事情

Yahoo!ニュースに「自衛隊がクマの駆除に出動した日」を執筆しました。

今月はYahoo!ニュースに記事を書いていないなあ……と思っていたところに「秋田県がクマ駆除を自衛隊に要請」のニュース。そりゃ、ありえんだろうと思っていたら、後方支援だという続報を見て、ようやく納得。

ただ、その時に防衛省は「トド退治の事例を利用して……ウンヌン」という説明をしていたことに気になって、自衛隊とトド退治を調べ始めた。すると派生して、何かとクマのために自衛隊が出動した、あるいは関わった事例が集まった。

これはまとめておくべきだろう、と考えて超特急で書き上げたのだった。資料的には価値があるのではないかな。意外と昔(といっても昭和)には、自衛隊を気楽に投入していたのであった。戦前の旧軍になると、もっと気軽に出動している。

ただし、これ、オンライン会議が二つに銀行詣でに各種連絡事項に……とてんやわんやの合間なのである。

実は我が家も非常事態。

まずキッチンの換気扇の交換。トイレの水漏れ対策。コピー機の故障、庭の柿収穫……全然仕事ではないのだが、忙しかったのだよ(泣)。

 

2025/10/28

日本林業の祖・和邇氏

奈良女のシンポジウムで私が話したキモ。

日本の林業の祖は、豪族・和邇氏ではなかったのか? 

ピンとこないかもしれない。そもそも和邇氏(ワニ氏)が、あまり知られていないだろう。が、ヤマト王権と深い繋がりを持っていて、大君(天皇家)に10人以上の妃を出し、後漢と貿易をしていて、そこで持ち帰った剣は現在国宝にもなっているほどの有力豪族だ。

だが、その経済基盤は……というと、木材生産だったのではないか、と思っている。

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現在の天理市あたりが和邇氏の根拠地なのだが、その裏山とも言える田原地区(大和高原)で木材生産をしていたらしい。

で、ここで重要なのは、その木材を天理へと山の斜面を下ろしたわけではないこと。なんと、遠く離れた木津川まで運んで川を流していたという。図の矢印がそのルートだ。つまり、丸太の流送技術を持っていたわけである。

しかも、木材取引をほかの豪族と行っていたことや、資源管理もしていて、伐採地を循環させる林業を行っていたらしい。

私は、和邇こそ、日本林業の祖! とぶち上げたわけである。

でも、まだ定説になりきれていないなあ。

 

2025/10/27

安藤栄作展と吉野林業展

奈良県立美術館で、木彫り作家の安藤栄作展が開かれていた。昨日は奈良女子大学のシンポジウムで、なかなか示唆に富んだ内容だったのだが、実はその開会前に訪れたのである。以前より狙っていたのだが、ようやく行けた。

安藤氏は東京生まれながら福島県いわき市で長く創作活動を続けていたが、東日本大震災の津波で自宅も作品も愛犬も流されしまう。加えて原発事故の発生で、奈良県に避難してきた作家だ。以後、ずっと奈良で活動を続けている。

2018年にも地元ギャラリーで作品展を開いているが、今回は美術館で大規模な展覧会。

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迫力満点であった。抽象的な木彫りかと思えば、具象の面もあり、私はニューギニアのセピック芸術かと思った。写真の「約束の船」という作品も、海を表す木片は、よく見ると人形であった。さらに弦を張った楽器、巨大な仮面、カヌー……。ところどころ諸星大二郎の絵を連想する造形も隠れている。プリミティブな魅力があふれていた。

ちなみに素材は多くがヒノキとクス。奈良県なら手に入りやすい材だ。クスは西日本に生えている木である。ほか、ナラなど雑木林の木も混ざる。

絵本「あくしゅだ」に描いた原画も展示されていたが、これは、やはり津波だろうか……。

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じっくり見て回り、さて、いよいよシンポジウムへ……と思った出口のところで、一室を使ったミニ展示コーナーがあった。それが「吉野林業の世界」。これは閉館中の奈良県立民俗博物館の飛び地展 であった。

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伐採道具など古き時代の林業道具から割箸づくりの過程まで。よく見ると、使われている写真は「吉野山林写真貼」であった。なんだ、私のシンポ用資料で紹介する写真と同じではないか。。。

2025/10/26

クズの栽培、イノシシの飼育

クズと言えば、今や大厄介な雑草扱いで、世界中で問題視されている。だが、日本文化からすると、葛は貴重な資源。根っこからデンプンをとった葛粉は食品としても漢方薬にしても、有用な植物だ。また蔓の繊維は、何かと細工物にされてきた。

ただ肝心の根っこの堀り子がいなくなってきた。吉野葛も、今や地元では掘る人がいなくなってきて、鹿児島から取り寄せているそうだが、鹿児島にだって堀り子がいつまでいるのかどうか。

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それを栽培しようという提案を、奈良県の五條市立西吉野農業高校の生徒たちが行っている。それが、高校生ビジネスプランコンテストで優秀賞・地域部門賞を獲得したというニュースを読んだ。

奈良の西吉野農業高校生がビジネスプランコンテストで地域部門賞

これって、想像以上に面白い。ちゃんと畑で育てる栽培モデルを確立しており、葛根を生薬業者に出荷すると、20アールで1350万円、営業利益は950万円稼げるというのだ。栽培したのだったら、場所は集中しているし、掘り出すのも簡単だ。

経たな農作物より稼げる可能性がある。農地だけでなく、人工林の林床で行うという手も考えられる。また製品も、葛粉ばかりでなく、繊維を利用した新製品もありえるし、その成長力を活かせば草食性の家畜の餌にもなりそうに思える。

そもそもクズを厄介者とした時点で、生産者はいなくなっている。いわば希少性を担えるのだ。こんな資源が山にはほかにもありそうな気がする。

厄介者も栽培すると、利益になる……それで思い出したのは、獣害を引き起こすイノシシも肉が高く売れるのだが、そうすると野生のイノシシを捕獲するのではなく、牧場をつくって飼育する動きが起きていること。その方が収穫が簡単で安定供給できて、しかも肉質もよくできる。

また野生のイノシシを夏に駆除せず数を増やそうとする猟師もいるらしい。農作物被害が出ても、数が多ければ、冬にたくさん仕留めて出荷できるから……。

ちなみにシカも牧場で飼育する実験は何度も行われている。ただ広い土地が必要なので意外と上手くいかないらしい。肉もそんなに売れない。

では、クマはどうかなあ。牧場で飼育して、よく慣らして人間の味方にしたら……(^^;)\(-_-メ;)。

2025/10/25

丸太は肩に担いで搬出~1500年同じ方法か

明日は、奈良女子大学でシンポジウムなのだが、私は林業の歴史を語る。

そこで資料づくりをしていて、見つけた写真。

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古代は、いかにして木材を山から運び出していたか……という説明を使用として手持ちの写真を探している中で発見したのだ。

これ、人間が肩で担いで運んでいたはずだ。それを説明できるイラストを使おうと探しているうちに写真を見つけたのだ。これはリアルでよい……って、、、写真がある?古代の?まさか!

これ、「吉野山林写真貼」という林業遺産にもなっている資料なのだが、そこに写っていた。言い換えると、この写真貼が作られた明治36年でも、まだ肩担ぎをしていたわけだ。

古代の、飛鳥時代、奈良時代の林業を紹介するつもりたったのに……(^^;)。

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ちなみにこちらは,平城宮跡資料館にあった図。こちらは正真正銘奈良時代の様子を描いているのだが、筏をつくって川を流している。こちらの方が進んでいるじゃないか。こんな平野でよいのか、と思わぬでもないが、山から出してきた木を丸太にして平城宮を建設した奈良盆地まで運んだことを示しているようだ。

肩で担いで山から下ろし、川を流して目的地へ……なんだ、飛鳥時代と明治期の技術は一緒じゃないか。

林業技術は、1500年ぐらい進歩せずに来たのかもしれない。

さて、明日はどのように説明するかな……。

 

2025/10/24

EUDR延期問題、決着

EUDR(EUの森林破壊防止規則)の延期問題が決着しそうである。

この「合法であろうと森林破壊をしていたらダメ」という画期的な規則、具体的にはEUは輸入しないぞ、という貿易規則は、すでに発効が1年延期になっていたが、今年12月にようやく……と思っていたら、またも延期論議が。

だが、巻き戻しもあって、ようやく決着しそうだ。(英文ページだが、ネットは自動翻訳してくれる。)

EUは中小企業のみを対象に森林伐採延期を計画

森林破壊防止規制は当初の計画通り2025年12月31日に発効するが、延期はココア、コーヒー、木材、パーム油、家畜、ゴムなどの製品を扱う中小零細事業者にのみ適用される。

これらの小規模事業者にとっては、規制の施行は2026年12月まで延期される可能性がある。

もともと森林破壊をしていないか調査確認する作業が難しすぎる、というのが延期の理由だが、大企業はできるでしょ、というわけで小規模事業者のみを延期するわけだ。ギリギリの攻防で、全面延期にならずに済んだ。ただし、まだ最終決着したわけではない。最後の欧州議会などの採決が必要だ。アメリカも反対しているから、また引っくり返される恐れもある。

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私は日本も含めて、違法伐採対策に絶望しかけているが、かろうじてEUDRだけがよい方向だと期待していた。それもひっくり返るのか……と憂慮していたが、土壇場で踏みとどまった。まあ、これだって、どこまで効果があるのかわからないのだが……。

 

 

2025/10/23

新月伐採再び~林野庁の愚

gooブログが来月には閉鎖されるという案内が来た。私の旧ブログはgooのため、先日Amebaブログに移設した。

shinrin-journalistのブログという名に変えたが。今は両方のブログが並立している。(本ブログも含めたら3つになる。)せっかくだから、昔、私は何を書いていたのか……とgooブログを遡ってみた。

すると……飛び込んできたのが、新月伐採の話題であった。エルヴィン・トーマの著作「木とつきあう智恵」という本で紹介されたものだ。新月の日に伐採した木は丈夫……とか。カビが生えない、反ったり縮んだりしない、あげくに火事に燃えない……。ちなみに新月の晩に伐採するのではない。新月の定義も結構いい加減。
肝心のトーマ氏は、その木を販売する木造建築会社を経営しているのだけど。セールストークかよ。

ブログを始めた当初の2005年6月の記事。

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当時、流行っていたので私も追いかけた。そして、トンデモな建材であるという結論に至った。2006年8月26日の記事。

新月伐採の危うさ gooブログ

新月伐採の危うさ Amebaブログ

何ら科学的ではなく、性能も何もかもデタラメである。コメント欄も読む価値あり。
含水率も落ちていない。デンプン量が落ちた? いったい検体はどれぐらい? え、1本だけ (゚o゚;) 。。。いずれにしろ辺材しか計っていない。木材は心材、つまり細胞が死んでいる部分が大半なのだよ。

どうせ、そのうち消えていくと思ったら、今もしぶとく広がっているようだ。

なんと、林野庁主催のシンポジウム「国際シンポジウム”Wood, Health and Sound”「木材、健康、響き」  」に、著者のエルヴィン・トーマをパネラーの一人として招いたらしい。9月17日だから、もう済んでいるけど。

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もちろん当人が何を話したのか知らない。まだ新月伐採を推進しているのかな? それとも、単なるオーストリア建材の売り込みか。(それがルーマニアの国有林の盗伐材でないことを祈る。)
どちらにしても、私はこの手のオカルト論者を招待すること自体に嫌悪感を抱いてしまう。(オカルトとして楽しむ人の集まりなら結構だ。木材の可能性を論じるシンポだから腹が立つ。)

林野庁もトーマ、じゃなくてトンマだねえ。。。

 

 

2025/10/22

首相指名投票の楽しみ方

マーフィーの法則ではないが、「予想した中でもっとも望まない結果が現実となる」。首相指名投票結果を見て、そう感じた(笑)。

ただ高市早苗氏が日本のトップになるのは世界の潮流から見れば必然だろう。右傾化と女性リーダーという流れから。私は右翼思想はそれなりに理解するのだが、ネトウヨには生理的嫌悪感を抱く。だが、世界はネトウヨ化を進行させている。さすが、マーフィー。

おかげでニュースも見たくなくなる。デジタルデトックスするか。

それでも、私が首相指名投票の中で注目したのは、二つのこと。

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まず参議院では「チームみらい」の安野貴博氏が2票だったこと。チームみらいの議員は一人しかいないのに……。どうやら無所属の泉房穂氏が安野氏に入れたようだ。なかなか面白い選択なので、ここだけ楽しめた。

もう一つは、同じ参議院の決選投票で、参政党が高市候補に入れなかったこと。日本保守党系は入れていた。高市側からは参政党に投票をお願いしたとの報道だったが、与しなかったということか。

参政党は高市氏の主張に近いと言われているが、私から見れば、若干肌合いが違う。むしろ維新の会の方が近い。だから両者が組んで連立与党となるのは、私には想定しやすかった。(アホウなのは、首相になるチャンスを自分で潰した国民民主党の玉木氏だ。)

私の見立ては、参政党とは、高校の部活動オカルト研究会のような存在。いわばオタクの集合体である。生真面目な文系生徒なのだ。一部の部員はカルト的にハマって「宇宙人はいる」「超能力は存在する」と叫んでいるが、全体としてはふんわりした夢想を楽しむ部員が多い。

日本維新の会は、逆に応援団のような脳味噌が筋肉でできているメンバーばかり。「推忍!」「気合だぁ~」「おらおらおら!」と叫ぶヤンキー気質の体育会系的イメージ。

そして高市氏を応援する一派は、体育会系なのだよ(笑)。

今回、参政党は体育会系ノリに同調することに警戒して「我々は、まだ勉強が足りないから」と自制したのだろう。

オマケとして、社民党の投票も楽しめた。もともと立憲民主党と歩調を合わせる予定で党首は野田氏に入れたのに、1票は福島氏に入っていた。ラサール石井氏のようだが、野田氏に入れるのをヨシとしなかったわけだ。

こうした点でしか、楽しめなかった首相指名なのであった。

「予想した中でもっとも望まない結果」と冒頭に記したが、ネガティブ・ケイパビリティを発揮するよい舞台が登場したと考えたい。消極的受容力と訳すが、より詳しく言えば「明確な答や解決策を求めるのではなく、不確実性を受け入れ、柔軟に対応する能力」である。

もともと心理学用語だが、具体的には、自分自身と向き合い深く考える時間を持つこと。好き、嫌い、ではなく、性急な解答を求めるのでもなく、今ある状態を俯瞰しつつ、答の出ない事態に対応すること。

実は、すべての政治家に備えておいてほしい能力かもしれない。

2025/10/21

日米の木材貿易とトランプ関税

トランプ関税が、いよいよ木製品にもかかることになった。

• 針葉樹の丸太及び製材品に10%、特定の布張り家具(椅子、ソファなど)に25% 、キッチンキャビネット及び洗面化粧台並びにその部品に25%の分野別関税を課し、10月14日東部夏時間午前0時1分以降の輸入に適用する。
• 2026年1月1日以降は、国家安全保障上の脅威を取り除く合意がされなければ、特定の布張り家具は30%、キッチンキャビネット及び洗面化粧台は50%に引き上げ。
• 上記にかかわらず、日本及びEUに対しては、本大統領令による分野別関税と通常の関税(MFN)の合計を上限で15%とする。
• 今回の措置である通商拡大法232条関税の対象とならない品目については、原則として相互関税の対象となる。

詳しくは、モクレポ10月号へ。7ページである。

そこで示される昨年のアメリカとの木材貿易の状況。

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輸出額は56億円にすぎないが、その約半分はスギ製材で主にフェンス材なのだ。これまでは無税で輸出できていたが、10月14日から10%が課税されるようになった。また、残りの木製品などにも、相互関税の対象として15%が課税される。

こんな少額、関税をかけて何を求めているのか。アメリカの木材自給率アップ?

一方で輸入額は1435億円である。木質ペレットは燃料、チップは製紙原料か。丸太が意外とまだあるのだな、という点と、樽が3%、42億円もある。木樽(洋酒の貯蔵用だろう)だけで、日本の輸出額に近い。

ちなみに輸出品目の中に、さねはぎ材とか木製食器が入っている。さねはぎは、板など製材を接合する凹凸の加工した材のことだろう。日本製の木製食器とは何かよくわからない。また木製家具も14%とそこそこ。

木製家具の輸出額は全体で約81億円(24年度)だから、1割がアメリカということになる。着実に伸びている。

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つまんないこと、やっているねえ。

 

2025/10/20

Wedgeに「日本の法律は穴だらけ」を執筆した裏事情

Wedge ONLINEに「日本の法律は穴だらけ!野放図に拡大する違法伐採、森林破壊を食い止める手立てはあるのか?」を執筆しました。

内容は、主にクリーンウッド法。その問題点や役立たず(笑)さを記した。

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別に意図したわけではないが、先週の弁護士会での盗伐問題の講演と重なっている。付け加えれば、『盗伐 林業現場からの警鐘』の書評が「林業経済」誌に今年6月だったかに掲載されたこともある。出版して1年以上経っての書評だったが、おかげで自分も忘れていた(オイオイ)ことを思い出した。それで改めてクリーンウッド法について復習したのである。

実は弁護士センセイとの懇談で、日本の裁判の現実についても話した。簡単に言えば、検察は面倒くさい案件は取り上げない。たいてい放置されて、デスクに積み上げておく。たまに新人が来たら、「これ、やらない?」と勧める程度。

そして裁判官は難しい訴状、証拠は読まない。原告などが難しい理数科学的な検証をして矛盾を突いても、読まない。面倒くさいから、いや理解できないから。さらに行政訴訟の場合は、行政の無謬性、つまり「行政は誤りを犯さない」という前提で考える。
たとえば原告が問題点を論理的に説明しても、「行政が許可出したんだから間違いない」という判決を出してしまう。

裁判官も公務員なので、同じ公務員の行政職員の味方をするわけだ。多分、自分の判決も「無謬」だと信じているのだろう。

脱線したが、クリーンウッド法が問題というより、運用が絶望的。この法律を使って盗伐を取り締まるつもりは毛頭なく、何をやっても合法と無理くりの解釈をする。だから絶望的なのである。

 

2025/10/19

グラント松、ブッシュ槙

東京へ講演に出かけたと記したが、その際に寄ったのは東京地裁だけではない。増上寺にも足を延ばした。

そこで見たのは……グランド松とブッシュ槙。

アメリカのグランド大統領が植えた「グランド松」。1879年7月に来日して記念植樹したのである。

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もっとも松とあるが、樹種はヒマラヤスギである。マツ科ではあるが……。現在は、もっぱら庭木や公園木なと園芸植物扱いだが……なぜ、この木を植えたのか。

そもそもヒマラヤスギが日本に入ってきたのは、1879年、つまり同年だというのだ。ただし、グラント大統領が持ち込んだわけではないようだ。

・ヒマラヤスギが日本に渡来したのは1879年(明治12年)頃のこと。横浜に住んでいた英国人ジャーナリスト、ヘンリー・ブルック氏がインドから種子を取り寄せたのを起源とし、横浜植木という会社が学校等に無償配布したことで普及したという(諸説あり)。

増上寺に植えたのが最初という説もある。ようするに、当時日本では全然知られていなかったこの木を、なぜ植樹したのだろうか。ブルック氏が推薦したのかもしれない。ちなみに記念植樹というのが持ち込まれたのも、この時代だ。

よく育って樹齢150年に達しようとしている。

一方のブッシュ槙。こちらは1982年に来日したアメリカの41代目のブッシュ大統領(父ブッシュ)が副大統領時代に来日した際に植樹したもの。それがコウヤマキなのである。なぜ?

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なぜコウヤマキを選んだのだろうか。コウヤマキは日本固有種である。高野山を持ちだすまでもなく、真言系の仏教宗派ではなじみがあるかもしれないが、増上寺は浄土宗なんだけど。こちらは、まだ樹齢50年程度。

植樹事情もさることながら、樹種選定の理由が知りたい。

ちなみに増上寺は、本堂などは鉄筋コンクリート製であってある。そろそろ、これらの木を伐って、木造に……(^^;)\(-_-メ;)

2025/10/18

弁護士に日本林業を説いた結果は

東京地裁に行ってきた。

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霞が関ど真ん中である。いや、別に出廷したわけではない。ちょっと時間が空いたので……(^^;)。

入るのは手荷物検査等もあってウルサイのだが、ロビーはわりと人は多くてみんな傍聴に来ている模様。
「薬物関係を見る?」
「交通事故でも裁判になるのかよ」
「性犯罪、おもしろくない?」
とかなんとか。おもろい裁判を物色中。中には法学の勉強のためぽい人もいたが、全体にマニアぽい。傍聴界?では有名な人の姿もある。

せっかくだから私も裁判を傍聴しようかと思った。下の写真で人が群がっているところにタッチパネルがあって、裁判予定などが表示される。私は知り合いの裁判官が担当する法廷でもあればと思って検索したが、わからなかった。そこで適当に法廷のある階に上がって入れそうな裁判を探したが、見つからない。開廷していない部屋が多かった。
大阪地裁では、ふらりと入れたのだが。

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さて、私が余裕のある時間内には傍聴できなかったので、地裁を出て、となりの弁護士会館へ。私が訪れたのは、ここで講演をするのが目的なのであった\(^o^)/。

テーマは盗伐なのだが、盗伐事案について話すのではなく、盗伐を誘発する日本の林業裏事情。弁護士会の中でも、環境問題、森林問題を勉強している部会だそうだ。話してみると、四国の自伐林家の橋本山にも行ったというし、岩手の清和研二さんも招いたとか、北海道の保持林業も見学に行った……と、結構熱心なことを知る。来月には、宮崎県の盗伐現場を視察旅行するそうだ。

みんな日本の林業を気にかけていて、よりよい林業のモデルを探している……。(これって法律家のやることか?)

で、私は話しましたよ。日本林業の現実を。

……終わってから、会場全体がどんより暗くなりました(笑)。暗澹たる気持ちに陥ったのでした。

何か“希望の林業”のネタはないの?」と聞かれてしまった(笑)。

終わってからの質疑や酒を交えた雑談も行ったのだが、結局、人が大切なのだろう、ということになって、林業の専門家、フォレスターの養成が必要だと方向に話が進む。私も「奈良県フォレスター」を紹介する。奈良県職として働け、異動のない職場、針広混交林づくりをめざす……何より吉野林業のプライド。すると、わりと食いつく。

それで、来年には奈良県の視察がしたい、ということになった。さて、実現するかな?

なお、来週26日に、奈良県でも講演する。以前も紹介したが、奈良女子大学共生科学センターのシンポジウムである。こちらの準備も進めないといけないのであった。参加希望者は、QRコードより申し込んでください。無料です。

第28回 共生科学センターシンポジウムのお知らせ

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2025/10/17

隣家越境の柿の木を伐る。その実を……

我が家の裏手の家から「植木の枝が越境している」と言われた。

ピンと来なかったが、仕方がない。確認のすつもりで雨上がりの朝に庭を確認すると、柿の木が実をいっぱいつけて隣家に伸びていた。その距離30センチくらいかな(^^;)。これぐらい……と言いたいところだが、ぐっと我慢。ほかにアカメガシワの枝も伸びていた。こちらは雑草みたいなものだ。

というわけで伐りました。高枝ハサミを駆使して濡れながら、チョキチョキと。結構、大変。切れにくい枝もある。

それでも落とした枝を回収すると、まだ熟していない柿が実をいっぱいつけている。それを収穫する。

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何個あるだろうか。30個、いや40個以上あるだろうな。小粒なので食べるのも面倒。だいたい、まだ十分に熟していないから美味くないたろう。

そういや夏前に青柿を取って柿渋づくりだ! とやったが、あれも苦労して壺に詰めて……そのまま物置に放置している。多分、カビも発生しているだろうが、あえて数年寝かせば柿渋になるかもしれない。が、今回は。

大量消費のために何ができるか。

これだけあるのだから生食はむり。というか、熟した柿を順次収穫していて、それを毎日2、3個食べている。さらに近所にも配っている。

となると、これは加工して日持ちするようにしよう。そこで思いついたのは柿ジャムと柿ようかん。

収穫したまま実をしばらく置いて熟すのを待とうかと思うが、まずは柿ジャムを試してみることにした。

実が硬いのはミキサーで砕けばいいし、甘味が足りないかもしれなくても砂糖を足すのだから問題ない。

というわけで10個ばかり皮をむいて、種を取り除いて……ああ、これが大変だった……ミキサーで砕く。そして火を加えてトロリとしてくるように熱し、そこに砂糖を少しずつ投入。レモン汁はないので、シークワーサァー汁を足らす。あとは覚まして出来上がり。

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味見してみたが、そこそこの出来だ。甘すぎず、コクがある。これ、なかなかの逸品じゃね?

庭の収穫物はなるべく無駄なくいただく。この原則を守れそうだ。

 

2025/10/16

「重伝建」地区どうする?どうなる?

奈良県には、重要伝統的建造物群保存地区、いわゆる重伝建地区が3つある。橿原市今井町、宇陀市松山、そして五條市の新町。

実は指定を受けていない古い街並みはほかにも数多くある。時代も江戸時代ばかりでなく、明治、大正、そして昭和30年代まで。ちなみに観光地となった「ならまち」は、奈良時代ではなく江戸時代の街並みだ。

そこで訪れたのは、五條市の五條新町通り。

以前は訪れてもすすけた町だったののが、近年になってレトロな観光地として整備するところが増えた。空き家に若者などが新たな店をオープンしている。歯科医の診療所がチョコレートの店だったり、ゲストハウスになったり、ちょっとお洒落な和食の店にバーだったり。

ただし、なんと水曜日は休日らしい。ほとんどの店が閉じている(> <;)。そりゃ休日は必要だろうが、よりによって訪ねた日とは。

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電柱が目立つが、和服姿の女性が歩くと様になる。

それでも木造の町家を見学するのは楽しい。路地も多くて、迷路のようになっているからカタッバシから歩いてみた。

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写真の餅屋も、看板が映えるので人気スポットだったが、閉店した。そこに入った人が開いた店は、プリンなどのカフェなのだが、驚いたことに無人。全部自分で金を払って飲み物やプリンを取り出して食べる。これでも食い逃げはそう出ないらしい。この手があったか。これなら人手は最低限だ。休日もあまりいらない。

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もしかしたら食い逃げ被害もあるかもしれないが、個人で開店していたら体が持たない。人を雇ったら、その人件費で破綻する。そうした損害も折り込み済みで無人カフェなのかもしれない。「食い逃げされてもバイトは雇うな」とかいうタイトルの本もあったな。

もっとも、私は、男一人で無人の店内でプリンを食べてもなあ、と遠慮してしまった。

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「まちや館」は、明治の政治家の実家を開放したもので見学できるが、そこに残された蔵がトイレに改造されていた。細心の便器と蔵だった名残の天井の太い梁がミスマッチ(^^;)。

今後、重伝建をどうするのか大変だろうな。奈良は重伝建が多すぎる(笑)。お洒落に変えて観光客が来るようになっても、それでやって行ける店は「ならまち」ぐらいではないか。むしろ副業、小商い気分で趣味の店増やすのがよいのかもしれない。

全国の重伝建がどうなっていくのか気になるところである。

2025/10/15

大屋根リング「週刊SPA!」にコメント

Yahoo!ニュースに「週刊SPA!」の万博・大屋根リングの記事が転載されていた。

大阪万博の象徴だった「大屋根リング」保存に問題山積。すでに腐食が始まっている部分も…財源すら「未定」

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実は、この記事に私はコメントを寄せているのだ。なんだか木材に詳しいジャーナリスト扱いされている……。

いろいろ(Zoomで)話したが、私は木材の専門家ではないので、「木造建築は必ず腐植する。それを残したければ残す価値をいつの時代も認識することだ」と法隆寺が1300年建っているわけも含めて強調したつもりであったが、そこは載らなかった(> <;)。

ま、いいんだけど。別に自分の意見を必ず掲載すべきだと思っていない。コメンテーターは材料の提供で、ライターや編集者が趣旨に合わせてテキトーに切り取って書くのが「記事」だよ。。。(と、自虐的かつ自身を振り返って達観している。)

ただ最初は「集成材のCLT」となっていたので、「いや、集成材とCLTは違うのですよ。これを同じ扱いにすると、怒る人が業界にいるのですよ」と説明して、「集成材やCLT」にしてもらった。正直、どっちも板を張り合わせた代物じゃねえか。この二つの差も世間的にはあまり意味はないと思っているが、まあ、業界さんに寄り添ったつもりだ(⌒ー⌒)。

接着剤の耐久性は、昔に比べて随分よくなったが、今のところ保証できるのは50年程度。野外の建築物なら、それよりもっと前に危険性が増す。とても未来に残せるモニュメントではない。

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それに私の予想では、今でこそ記憶に新しいから「ぜひ保存を」と騒いでいるが、数年経てば興味を失われると思う。仮設の期限は2年間だから、あと1年半リングのまま残し、無料公開して楽しめたらいいと思うんだけどね。
そして10年20年経てば、訪れる人も減少して、やがて維持費の負担がきつくなり、薄汚れて、不具合も出て、危険性が指摘されるようになり……取り壊しになるんじゃないかな。

でも、350億円かけて建設し、2万7000立米の木を(樹齢100年を超すものも多い)、たった半年でほとんど焼却処分かと思うともったいないよなあ。でも200mの部分的保存にしても100億円ぐらいかかるそうだしなあ。

 

2025/10/14

ダム湖底から現れた巨木の切り株

川上村に大滝ダムが築かれて早20有余年。ダム湖には、由緒ある川上神社上社は水没した。神社そのものは現在は高台に移転したのだが。

旧社は撤去されたわけだが、そこにはご神木として樹齢500年を超えるとされるスギが生えていた。

私はダム建設が始まる前に、この旧社を訪れており、ご神木を目にしている。どんなスギだったのかあまり記憶にないのだけど、まあ、大きかった(^^;)。

そして、ご神木も沈む前に伐採された。私はその後にも訪れており、残された切り株の大きさを実感しようと切り口の上に寝転がった記憶がある。なにしろ直径2メートルを超えるのだ。自身の身長が全部切り株の中に納まったはずである。どんな感慨を持ったのか、あまり記憶はないけど……(^^;)\(-_-メ;)。

そして水没して、もう見ることはあるまいとされた旧社跡と切り株。ところが今年はダム湖の水が近来ないほどに減ったとかで水位が下がった、おかげで旧社の当たりが地上に現れた、と聞いた。

そこでさっそく見に行ってくる。と言ってもダム湖内に入るのは禁止とかで遠くから見るしかない(> <;)。これは対岸から撮影。

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わかるだろうか。各所にわずかながら石垣や当時の橋などが見られる。そして境内跡には僅かに神社跡ぽい四角の土台が露出し、その横に3本の切り株がある。そのうち2本がご神木のはずだ。

望遠で拡大すると、こんな切り株になっていた。かなり朽ちているようにみえるが……。水中でシルトをかぶっていたようで泥に覆われている。

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あまり大きさが伝わらないか。

ちなみに伐ったご神木は、新しい社殿にいろいろ使われたとのことだが、断面も展示されていた。

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でも、これは直径2メートルあるように見えない。根元ではないからだろう。これは吉野林業的な人工植樹された木とは思えないから天然木だろうが、木目が非常に詰まっている。

なお、旧社のあったところの地下から縄文時代から代々続く遺跡が重なって発見されており、宮の平遺跡と呼ばれている。約1万年前とも云われる畿内最古の縄文遺跡だ。立石もあり、ストーンサークルが設けられていた。それは、立てたまま、森と水の源流館に移設展示されている。

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世界各国に立て石遺跡はあり、ヨーロッパの巨石のものはメガリスなどと呼ばれる。ストーンヘンジもその一つだ。日本なら秋田県の大湯環状列石が有名である。この遺跡も生のまま残っていたら、考古学上の名所になったのに。やはり大昔から聖地とされていた場所なのだ。

 

 

2025/10/13

「滋賀県山林会報」に見つけた文字

大阪天満宮で開かれた古本市に顔を出した。

その中の一店が、全品100円と謳っている。昨日まで200円だったのを100円に下げた、という。それにしても店内は山積み。文庫や新書もあれば大型写真集、それにパンフレット、雑誌のたぐいまでドカドカと広げてある。わりと最近の写真集もあれば、戦前の冊子までごった煮状態。これらが、何れも100円なら……。

思わず物色する。幾冊かそれなりに興味深い本を見つけた。通常なら買わない本でも、100円だと、ま、買っておくか、という気持ちになる(^o^)。その中の1冊に目が止まった。

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滋賀県山林会報。大正12年8月号だ。なんとも古いものが1冊だけ。表紙に「土山太郎殿」とあるが、裏にある名前の文字が読めない……。

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こうした古い林業雑誌は、当時の森林事情がわかって面白いかな……と思って手に取ったのだが、パラパラとめくって見た。

森林視察旅行に就いて」という記事があった。滋賀県の技師斉藤勝蔵クンの投稿のよう。滋賀県で開かれた大日本山林会の総会時に森林を案内したものであるようだが、私の目にいきなり飛び込んできた文字にびっくり。

わかるかな。下の段だが。「吉野の土倉庄三郎さんが一番に目を着けて居られたところでありまして」。

これが姉川の上流、高時川の山林らしい。ここの600部歩ほど造林した、とある。たしかに庄三郎が近江に造林した記録はあるのだが、そのことだろう。杉と偏柏とあるがスギ、ヒノキのことだろう。そうか、よほど地味がよくて造林向きの山だったのだろう。

しかし、私の目は「土倉目」になってる(^^;)。どこに庄三郎名があるのか発見できる?

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こんなところで発見するとはなあ。古本市には、こうした偶然の掘り出し物があるので面白い。

ちなみに5冊を選んで会計に出し、当然500円払ったのだが、「あと、2、3冊、持って行ってもいいよ」とのこと。えええ!

こんな売り方あるのか。少しでも本が捌けてほしいのか。そう言われたら、思わず探し直して、汚れているものの豪華本の、手塚治虫の漫画を買っか、いや、もらってしまったよ。

 

2025/10/12

丹田呼吸法、鳥の声、蜂の羽音……

近頃、丹田呼吸法について調べたり考えたりしている。

ご存じの方もいるだろうが、丹田と呼ぶ胃の下の方の位置に神経を集中して呼吸する、腹式呼吸の一種なんだが、これが精神修養に結びつくとされているもの。ときにスピリチュアルな方向にも走ってしまうが、ここではあくまで肉体と精神の修養。一時期、流行ったんだけど。たくさんの流派があるので、それぞれやり方が違ったりする。

西洋医学的には謎の理論であるが、坐禅や瞑想、気功、それにヨガなどでもよく似た呼吸法を取り入れている。

別に、私がこの呼吸法で精神を鍛えようというつもりはないのだが、いかなる境地に達するのか説明できるようになりたいと思っているのだ。
呼吸とは、息を吸って吐くという肉体的な動きである。その呼吸の仕方によって体全体に何らかの影響を及ぼし、精神を操れるという発想をどこまで理解できるか。

4b2de313d6a4c22b2d09d121ffe13f93図を発見。

ほかにもヨガなどでは、肉体を通常ではしないようなポーズに置くことによって、精神的にも変化をうながす。

丹田はともかく、腹式呼吸という行為は、肉体への酸素の供給に関わる。欠乏させたら意識が飛び幻覚を感じるのかもしれないし、酸素を行き渡らせることで心を安定させたり集中力を増したりする効果は見込めるのか?


想像以上に、肉体と精神は連結しているのかもしれない。たとえは森林セラピー(これは商標登録されているから、森林療法というべきか)も、森の中を歩くという肉体的行為から、精神的な効果を求めるものだ。
これまで森林を歩くと体調がよくなる……という理論を科学的に説明するのは難しかったが、こうした切り口から攻められるかもしれない。

そんなときに、こんな論文を読んだ。

森の動物の音が若い女性の生理的および主観的反応に与える影響

日本の若い女性を対象に、森林動物の音が生理学的および主観的な応答に及ぼす影響を調査した研究論文の抜粋です。研究者たちは、鳥のさえずり(4種の異なる鳥)とオオスズメバチの羽音に対する参加者の感情(快・覚醒)と生理的反応(皮膚血流量)を比較しました。結果として、鳥のさえずりはスズメバチの音よりも有意に快く、覚醒度が低いと評価され、スズメバチの音にさらされた際には、交感神経活動の上昇を示す皮膚血流量の低下が観察されましたが、鳥のさえずりでは変化が見られませんでした。この研究は、異なる種の鳥のさえずりが同様にポジティブな影響をもたらす一方で、危険な動物の音に対しては適応的な生理的防御反応が生じることを示唆しています。

この実験、結果だけを見ると全然フツー。想定通りだ。鳥のさえずりは心地よく、大スズメバチの羽音は不愉快、というか危険を察知して緊張が高まる。なんだか当たり前すぎる。
ただ肝心の女子大生は、スズメバチ羽音はあまり気にしなかったそうだ。まあ、実験室で行ったのだから、本当にスズメバチが襲ってくることはないだろうし。だが、心は平気なのに、生理的には変化があったのだという。

続いてこんな動画も見る。「体に眠る太古の秘密」。

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こちらは8分ほどあるが、見るのは4分くらいからでよい(笑)。だって「ここからが本番ですよ」とナレーションが入るんだもの。

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ここで内容を全部明かすような真似はしないが、ようするに頭で(心で)感じる反応と、肉体の反応は違うということ。そして、こんな提起を行う。

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私の執筆した森林セラピーの本でも、「木に触っても別になんとも感じないと言う人も、測定すると脈拍が落ち着いたり血圧が下がるなど、ストレス反応は減る」という実験結果を紹介したな。無意識に肉体から心へ影響を与えていることになる。

 

2025/10/11

高市ショック?の既視感

公明党が自民党との連立を離脱すると宣言して政界にはショックが走っている。が、私には、何とも言えない既視感がある。

私の住むのは、以前高市議員の選挙区だった(今は区割り変更された)。私も幾度か会っている。名刺も交換したはずだ。それに地元ゆえに、さまざまな噂も含めて情報が入ってくる。その行状からは、今回の事態は、さもありなん、であった。

既視の記憶の一つは、前回の奈良県知事選だ。当時の現職(前知事)は5選をめざすのか引退するのかが焦点だった。年齢的には70代後半であり、高齢多選批判がくすぶっていたからだ。

普通に考えれば、支持母体である自民党が引導を渡すのが筋である。が、その時に県連会長だった高市議員は、まったく話し合いの場を持たずに、いきなり別候補を立てた。それも自分の元秘書の官僚である。それに前知事は怒って、出馬を強行する。結果的に与党分裂選挙になったわけで、漁夫の利を占めたのか現知事。

あの時、膝突き合わせて引退を説得していたらどうだろう。出馬を断念する可能性は十分にあったし、仮に出馬しても世間の反応は違っただろう。いや、そのまま現職に自民党県連も乗るという選択肢だってあった。が、自分の元秘書を知事にしようと固執したわけだ。

この候補、選挙中の言動を追うと、見事に傀儡ぶりを発揮していた。支持者になるはずの市民団体との約束も破る。「だって上に言われたから」である。自分の意見よりも上の意向なのであった。ま、落ちたからいいけど。

それはともかく、高市氏の性格は、嫌いな人・苦手な相手とは会いたくない、話したくないタイプである。積極的に口説く覚悟はなく、騙し討ちしがち。さらに周囲への気遣いも欠けている。……この点は、石破さんに似ているのかもしれないけど(笑)。

それに上から目線。うちの娘が中学校だかの修学旅行で国会議事堂を訪問した際は、地元議員ということで高市議員の案内を受けたのだが、「あなたたちが国会に来ることはもうないでしょ」と言い放ったそうで、みんな怒っていた(笑)。

今回も口うるさい公明党は嫌い、どうせ下駄の雪、ほっといても着いてくる、と上から目線だったのだろうなあ。

「奈良のシカ」発言でも奈良の人を怒らせるし、下品だ。口汚い。右翼イデオロギーはともかく、ネトウヨはイデオロギーではないよ。私の見立ては、総理の器ではない。いや政治家としての資質も疑問だ。

さあて、これからどうなるか。過半数割れしているとはいえ第一党で、野党にまとまる気配がないから、とりあえず総理大臣には指名されるだろう。だが、来年の予算を通すまで保てるか? 多分、汗をかいて事態を収拾させようとする側近はいない。


私が懸念するのは、当人が積極財政論者で、野党もバラマキ要求が強いから、赤字国債発行で壮大な財政出動を始めるのではないか、という点だ。そうなると、マジで(イギリスのトラス首相が引き起こした)トラス・ショックが再来しかねない。国債金利が跳ね上がり円も大暴落する。

それもすぐに暴落したら止めようがある(イギリスがそうだった)が、もし実施後、半年~1年ぐらいかけてジリジリ下がった場合は、どうにもならない。すでに金をばらまいた後だったら、回収できずにハイパーインフレを招くかもしれない。(自民党の中に止め役の議員よ、いてくれ!)

追伸・高市早苗議員の名刺を探したけど、見つからなかった。代わりに辻元清美議員や菅直人議員……の名刺が出てきた。ほかにも各地の知事やら県会議員、市会議員やら……政治家の名刺が意外と多い。それこそ自民党から共産党、参政党もあった(^^;)。ああ公明党もある。でも、何の機会に会ったのかも覚えていないんだよ。名刺として役に立たないなあ。

 

2025/10/10

蔓に見たゴーヤの底力

なんで10月に入ったのに、連日気温が30度超えするんだ!!! 

と思いつつ、我が家のゴーヤの蔓を引き剥がして片づける。チョキチョキとハサミで蔓を切り刻む。すると……。

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残った幹とも言える蔓。なんと、根元は直径2センチ近くある。蔓でもここまで太ければ見事で、伐るのはちょっと先のばしにすることにした(^-^;。しばらく置いておく。鑑賞に堪えるか? と満月の夜に考えてしまった。

やはり2階まで、蔓の長さはざっと5メートルくらいになる。これほど伸びるためには、これぐらい太くなければ水分も栄養も送れないのだな。この蔓の下の根もどのぐらい深く、周辺に伸びているか。さすがにプランターでは無理だわ。

もう少し涼しくなってから掘り下げてみよう。

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中秋の名月

 

2025/10/09

生態系は「無駄」でできている?

近くの公園を通ったとき、足元でバシバシと、踏み割る音と感触がした。

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公園のコンクリートの部分に大量のドングリが落ちている。見たところ、シラカシやコナラのドングリのように思えた。小さいし、とにかく大量だ。

踏まないように……と思っても踏んでしまう。すると頭上から、バタパタと落ちてくる。踏んだな、と恨まれたような気持ちになる。

しかし、これらのドングリが芽吹くことはないだろう。コンクリートの上ではどうにもならない。ほとんどが踏まれて割れて粉々だ。雨風、あるいは清掃で土の上に運ばれることもあるだろうが、水分がなかったら無理だろう。そのうえ昆虫類やネズミなど小動物に食われてしまう公算大だ。そもそも公園の敷地にどんどん木々が生えることは許されない。もし芽吹いても、すぐに刈り取られるだろう。

つまり、無駄に終わるわけだ。ドングリをつくるにも樹木はエネルギーを使っただろうに。ドングリよりも草などは遥かに多い種子を生産して飛散させる。それもたいていは無駄に終わる。100万粒の種子がつくっても大木に育つのは1,2本ではないか。大量に次世代の種を生産して、ほとんど無駄にするのが生態系。
もっとも、無駄に終わった種子は、腐植して自然界の栄養素に還元される。

一方でドングリは、中に栄養分を貯めているから芽吹く確率は高い方かもしれない。飛ばすだけの種子より数は少ないが次世代を育てる確率を上げた繁殖方法なのだろう。
芽吹けず無駄に終わったドングリは、動物の食物になったり、遠くに運ばれたりして、分布を広げる可能性が増える。種としては無駄だが、生態系としては役立つ。

人類も、昔は多産だったのが少子化に移ってきている。たんさん子供を作っても成人前に死ぬから。むしろ少なく産んで、それを丁寧に育てた方が生存確率を高め、種の繁栄に役立つとしたのだろう。

この自然界の摂理からすると、ドングリもそのうち少子化?になるかもしれないよ。

 

 

2025/10/08

ノーベル賞よりクラフォード賞

ノーベル賞の発表が始まった。初っぱなに日本人の医学生理学賞受賞で出て盛り上がる。

もちろん結構なことなのだが、その内容はわかったようでわからない(^^;)。正確に言えば、私の興味の範疇から遠いということだろう。

物理、化学、医学……いずれも目に見えない世界だ。生物を扱っているとはいえ、実は分子レベルの物質の研究であり、マクロな生物界や地球界の壮大さ、ロマンなどを感じさせないのだ。

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ノルウェー・オスロのノーベル賞記念会館

だから注目していたのはイグ・ノーベル賞。こちらが好きだ。ノーベル賞より内容に興奮する。

今年も日本からは「シマウシ」を研究した農研機構=農業・食品産業技術総合研究機構の研究グループが受賞した。これは5~6年前に発表されて私も覚えているが、極めて真面目な研究ながら頬が緩む素敵な研究だ。シマウマにハエがたからないというのは面白く感じたのだけど、それをウシに応用するなんて。

イグ・ノーベル賞には、単に奇想天外な研究だからよいのではなく、真面目な研究成果がある。こちらに受賞者が出ているうちは、日本の科学研究現場もまだ持ちこたえているな、と思う。こんな発想でも研究させてくれる舞台があることが重要だろう。

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ただノーベル賞の分野は、「生理学医学賞」のほか、「物理学賞」、「化学賞」、「文学賞」、「平和賞」、「経済学賞」。これって、偏っていないか?

ノーベルが自分の興味ある分野で決めたのだろうけど、現代科学では抜け落ちている分野が多い。ちなみに経済学賞は後に追加されたものだけど、正式なノーベル賞とは言えないそうだ。

たとえば私が好きな生態学や動物行動学、さらに地球科学に宇宙なんてのは、ノーベル賞で受賞できない。

あえて言えば,2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士の「ネアンデルタール人のゲノム解読」が面白かった。現代人がネアンデルタール人のDNAを受け継いでいることを発見した点は話題を呼んだ。ただし,これも遺伝子解析という点から「医学」「生理学」に関係あるからかろうじて引っかかったのではなかろうか。

過去の受賞者を調べると、動物行動学のニコ・ティンバーゲン博士も、1973年にローレンツ、フリッシュと共にノーベル医学・生理学賞を受賞していた。かなり古い。ローレンツが受賞していたのか。

実は、私の興味のある分野の賞に、クラフォード賞がある。

ノーベル賞と同様に、「スウェーデン王立科学アカデミー」が受賞者を選考する委員会を持っているのだが、主な表彰分野は「天文学」、「数学」、「地球科学(古生物学を含む)」、「生物学(特に生態学)」なのだそうだ。

人工腎臓の発明者であるホルガー・クラフォードと、彼の妻アンナ=グレタ・クラフォードによって1980年に設立された賞である。そこではノーベル賞が扱わない分野を補完するように選んだとある。また特別に関節炎の研究者にも出るらしい。数学にはノーベル賞級のフィールズ賞があるけど、その他の分野は目立つ賞がないね。

受賞記録を見ると、うわっ、楽しそう。宇宙に地質学・地球物理学、そして恐竜を含む化石の世界。もちろん生態学も。

近年の受賞者を見ると、2023年はドルフ・シュルター。「フィンチとトゲウオの革新的な研究」。進化論の適応放散だ。

2022年は、アンドリュー・ハーバート・ノール。アメリカの古生物学者、古植物学者で、初期生命の微化石記録を発見。

2020年は、ユージン・ニューマン・パーカー。アメリカ合衆国の宇宙物理学者・太陽物理学者である。1958 年に太陽風の存在を理論的に予言した。他にも現在の太陽物理学の土台となる様々な理論的アイデアを創出した。

日本人を探してみると、遺伝学者の太田朋子は、進化の「ほぼ中立」説で2015年に受賞している。

日系アメリカ人の真鍋淑郎も、気候モデルの研究で2018年受賞していた。真鍋はその後ノーベル賞も受賞した。

……などなど。こちらをもっと紹介してくれないかなあ。全然知られていないじゃないか。


ちなみに賞金は、ノーベル賞は1000万スウェーデン・クローナ(約1億円)。クラフォード賞は50万米ドル。

そういや、私は以前「森のノーベル賞」を紹介した。

森のノーベル賞?

“森のノーベル賞”に日本人のセルロースナノファイバー研究が授賞!

いずれもスウェーデンなど北欧が選出している賞という点でも、面白い。

 

2025/10/07

愚痴・書店の棚とタイトル

定点観測的に覗いているジュンク堂書店難波店の森林棚。

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『山林王』とか『絶望の林業』、それに『フィンランド 虚像の森』も平積みしてくださっているので有り難いのだが……。その一角にある『樹盗』。この本のポップに「盗伐」という大きな字がある。だが、拙著の『盗伐 林業現場からの警鐘』は並んでいない? なせだ!

よく見ると、右隣の上の棚に一冊だけあった。しかし、目立たない……。内容は『絶望の林業』や『樹盗』と随分かぶっているのに、なぜ同じように扱われないのだ(泣)。とくに内容が劣るとは思わないし、そもそも内容を吟味して置いたわけではないはずだ。

書店子よ、いかなる基準で棚づくりをしているのか。

以前より感じているのだが、『盗伐』というタイトルがいけないのかも、と思う。実際、発売直後のネットの反応の中で「盗伐という言葉を知らなかった」というのがあった。樹を盗む、というタイトルなら言葉としては知らなくても意味は類推できる。しかし盗む・伐る、ではわからないのか。「林業現場からの警鐘」と付けているが、林業からは連想しないのか。

多少とも林業とか森林関係をかじっている人なら,盗伐という言葉はそんなに違和感なく知っているのだろうが、一般人にはピンとこないのかもしれない。

どうせなら、社会事件ネタの棚にならべてくれないか。強盗とか殺人事件のルポと同じ扱いをしてくれ。

タイトルは、私は短い言葉がいいと思うのだが、その短さが知らない言葉になってしまうとまずい。発売時には「森を盗む」とか「盗まれた森」というタイトル案もあったのだけど、より端的さを狙いすぎたか。

タイトルを見て、面白そうと感じて読んだら、まったくつまらなかった経験もある。途中で投げ出した。まるでラノベみたいな文章力、冗長なストーリー、主人公のキャラも平板……と思ったが、その本はよく売れたという。ウソ~!と思ったが、私と同じくタイトルに引き寄せられる人は多いのか。それとも読んで面白く感じたの?

書籍を売るに当たって、タイトルは重要だなあと思った次第。

次の本のタイトルは、よお~く考えよう。(今年は出版しないことにしたんだけどね。)

2025/10/06

プレジデントオンラインに「グルメ化するクマ」を書いた裏事情

プレジデントオンラインに、土中に埋まる「コスパ抜群栄養源」で肉の味を覚える…木の実で満足できない「グルメ化グマ」が大量発生するワケを執筆しました。

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最近は、数々のクマ出没の記事を書いているが、今回はクマの食性にクローズアップした。

これは私が持っているネタからではなく、編集部からの要望であった。そこで私もクマの食性に関する調査結果や研究について随分探して勉強した。なかには相反する記述もあって……。

そんな中で信頼のおけるネタを抽出して、さらに考察を加えつつ構築したのが、この記事だ。

最初は、シカやイノシシの食性についても触れようと集め(また過去の取材データを取り出し)たのだが、執筆しているうちに、やはりシカとかイノシシまで持ちだすと記事が散漫になる。そこで泣いてバッサリと削除(泣)。
さらに肉食が人類の頭脳を進化させたという理論もあって、これも魅力的だった。チンパンジーも肉食化しているという。よく肉を食べるクマは賢くなる! と書きたかったのだが、飛ばしすぎなので、これも泣く泣く削除(泣)。

本当のことをいうと、イノシシの方が実験結果や論文もあるし、草食性のシカが実は肉をよく食べる話もあって私的には面白いのだが。

 

 

2025/10/05

高校の圃場も自然共生サイト?

環境省の自然共生サイトを知っているだろうか。

ようするに世界的な公約であるネイチャーポジティブ、つまり生物多様性を増やす政策では、2030年までに陸地と海域の30%を保護区にしなければいけない。しかし国立公園などの保護地域は、まだ陸地は20%を超えた程度。間に合わない、と民間の土地手生物多様性の高いところを自然共生サイトとして定めようというわけだ。法律的な保護区ではないから規制はしづらいが、指定することで破壊されにくくする。

現在、全国に448か所が認定された。環境省は必死で増やそうとしている(^^;)。

その裏側を聞く機会があった。なんと磯城野高校の学校圃場を認定できないかと動いている。この高校には農業科があるので、水田、畑、果樹園と、かなり広い圃場を持っている。

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正確に言えば高校側で、生物部が圃場の自然を測る試みとして生物調査を行ったところ、786種の動植物を確認した。それを生物目録にまとめて高校生の生物部の大会などに発表したところ、環境省からお呼びがかかったという。

生物目録までつくったんなら自然共生サイトの認定に応募しませんか、というわけだ。自然共生サイトに認定されるためには、そこにどんな生物が生息しているかを示す資料が必要だ。だが、すでに生物目録があるなら、取得しやすじゃない? と声をかけている。
環境省側から、可能性のある地域にせっせとスカウトしている(^o^)。

もちろん、だから何でも認定しますよ、というわけではないだろう。かつての森林セラピー基地は、ほとんと金を払ったらは全部取れてしまったが、こちらは金が絡まないし。

そもそも786種が、奈良県で多いのか平均的なのかもわからない。奈良県全体の資料がないから。これが生物多様性の高い地域と言えるのか……。

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クビアカツヤカミキリ。外来種で強力な果実や桜などの害虫だ。こういう生物がいるのは多様性には入らない……。

でも、いいじゃないか\(^o^)/。

私は、もっと林業側から応募すべきだと思う。人工林だって、天然林部分を河畔林とか尾根筋など抱えているはずだ。部分的に草原があるかもしれない。そうしたところを調べたら、生物多様性が高いかもしれない。日本の自然は、実はちょっと放置するだけで様々な生物が進出してくる。なかなか強靱なのである。そうすると、関係者の誇りになるし、また破壊しづらくなる。もしかしたら、自然共生サイトのある林業地から産出した木というブランド化も可能かもしれない。

また今のところ特典はないが、将来的には減税措置が考えられている。広い林業地だったら、固定資産税もそれなりの額になるはずだ。
ようやく森林の炭素クレジットが注目を集めているが、もっとあの手この手で森林環境を金に換える方法を模索すべきだろう。

 

2025/10/04

巨木とヒガンバナと方杖工法

ふと思いつきで奈良県御所市の一言主神社をお参りした。一言だけお願いを叶えてくれる、という有り難い神社。
しかも境内には巨木が多い。イチョウにカヤ、ムクロジなど樹齢数百年以上の木がある。

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が、いきなり参道が渋滞。止めるところのない車が狭い道をふさいでいるし、何より人が多い。ひっきりなしではないか。別に今日はお祭りでも縁日でもないはずなのに……。見ていると、どうやら葛城古道を歩いて、広がる田園風景の中に咲くヒガンバナを愛でる……という趣向らしい。

何やってんだ、平日の昼間なのに。そんなにヒマか。ヒマを持て余したジジババか。

え、私? 私は……その……。

話は変わるが、私も御所市の伏見を訪ねた。ここは知る人ぞ知る棚田地帯である。

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私だってヒガンバナを愛でているのだ。まさに刈り取り寸前の稲穂が頭を垂れている水田の畦に並べ赤い列と、その奥に見える建築物。

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建物は、こんな不思議な構造をしている。方杖と呼ぶ庇や梁を支える斜めに接合した角材がデザインとなっている。ちょっと珍しい工法。方杖というより頰杖をつくような形。

この木はみんな吉野杉だそうだ。

2025/10/03

ゴーヤを被覆植物に?

我が家のゴーヤも、さすがにもう実らないし、そろそろ剥がし始めた。これは、なかなかの大ごとで、我が家の壁面に張りつき、二階ベランダまで伸びてびっしりと繁った蔓をコツコツ剥がさないといけない。一気にやるのは疲れるので、少しずつだ。

今朝も朝飯後に少し始めた。ヂョキチョキと蔓を切って少しずつ……。

すると、繁った葉の陰からゴーヤの実が次々と見つかる。また2階と1階の間のような獲りにくいところにも、結構ある。

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本日の収穫は、これだけ。わりとたくさんあったなあ。
もう、さすがに終わりだろう。実っていても大きくならない状態だ。どうして食べるか、また悩まないといけない。

が、一方で捨てたゴーヤの種子から新たな芽が出て育ち始めた。

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もちろん、今度は支柱を立てないから地面を這っている。これが、なかなかの被覆ぶりなのだ。雑草が生えるのを抑える効果があるかもしれない。花も咲いているから、また実をつけるかも?

来年はこの手で行くかなあ。ゴーヤは地面を這わせる。高さはほとんどないから、ほかの雑草を抑えるのだ。常に上へ這わせるため支柱を立てたりする必要はない。これで、もし実って収穫できるなら、非常に獲りやすいし。

もっとも油断すると、すぐに垂直方向に伸びようとする。蔓を伸ばして樹木や壁に絡みつき上に伸びたがる。そうはさせじ、と引き剥がす。

当面、我が家はゴーヤとの闘いを続けるのだ。

2025/10/02

掘っ立て柱は腐らない?

平城宮跡公園に出かけた。建設中の大極殿院南門東楼が完成したというから。

と記してもピンとこないだろうなあ(^^;)。

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ようするに平城京には大極殿という巨大木造建築物があり、それを復原したのだが、さらにその周辺を取り囲む築地塀も復原中。その中でも重要なのが、南門で、その左右に東楼と西楼が建つ。南門は完成し、今度は東楼も完成したわけだ。(次は西楼。写真の巨大屋根は西楼建設のため)

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この模型をみたら、想像できるかな。手前が南門と東西の楼。奥が大極殿。

ともあれ、東楼は復原したのだが、その際に発掘調査が行われている。すると、楼閣の柱は、礎石の上に立てるとともに掘っ立て柱もあったらしい。その複合構造になっている。掘っ立て柱とは、地面に穴を掘って、そこに木の柱を埋めることで立てるもの。

普通に考えたら、掘っ立て柱は腐りやすい。土に直に木部が触れているのだから。礎石はそれを防ぐためとも言える。

が、東楼現場の地下から、掘っ立て柱が腐らずに発見されたのである。

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これは発掘時の写真。なんと、この柱の太さは70数センチあるのだが、平城宮跡の遺跡から出土したものの中ではもっとも太いという。

この柱、なぜ腐らなかったのか。1300年も経っているのに……。その出土物はいざない館に展示されているというので、見に行った。

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上の部分は腐っているが、埋められていた部分は残ったのだね。むしろ埋まっていることで酸素に触れず、微生物の繁殖も防げたのかもしれない。土壌の性質や水分などの影響があるのだろう。掘っ立て柱は、必ず腐るというものではないわけだ。

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右から東楼、南門、そして工事が始まる西楼大屋根。

2025/10/01

奈良女子大で講演「林業のはじまり」

10月26日(日)、奈良女子大学で講演をすることになった。

奈良女子大学の第28回共生科学センターシンポジウムである。
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私以外の二人は、

人と木材劣化生物  -キノコとシロアリ- との共生」(近畿大学農学部応用生命化学科 板倉 修司 氏)と、
これからの木材利用 宇宙で木材は使えるか?」(京都大学大学院農学研究科 村田 功二 氏)である。

こうした理系研究者と私が並ぶのは、いかにも場違い(^^;)なので、テーマをお二人とガラリと変えることにした。

絶対に交わらない分野、歴史である。しかも奈良ならではの林業史。

日本林業事始 ~はじまりの奈良で林業のはじまりを考える~とタイトルを掲げた。

日本で林業が生まれたのは、いつとすべきか、という点を考察する。おそらく歴史研究者の間でも、「何を林業とするか」を確定した定義はないはずで、私の独壇場だ(笑)。思い切り推測や想像、妄想……を羽ばたかせる。

少しだけ説明すると、林業の定義には、単に人が木材を収穫する、利用する、だけではならない。それではホモ・エレクトゥス、北京原人やジャワ原人まで遡ってしまう。彼らも焚き火で木を燃料とし、木で住居をつくっていたのだから。やはり産業として林業が成立するのは、クニという組織と木を伐る技術、木を運ぶ技術、木を加工する技術……そしてそれらの専門職人がいなくてはならない。

では、日本でそうした産業としての林業が成立したのはいつだろうか。縄文時代、弥生時代、大和王権(古墳)時代、飛鳥時代……林業のはじまりを「はじまりの奈良」で論ずる。日本史における奈良は、常にすべてのはじまりなのである。

なお林業成立後に重要なのは、それが持続的な産業になり得たか、という視点でもある。つまり育成林業への転換がなければ、近代的林業とは言えない。収奪型、食いつぶし林業は、本来の林業として認めない。つまり、現代林業は林業ではない……というところまで行くかな?

まあ、講演内容は、これから詰めていくので、当日をお楽しみに。

一般参加者も大いに歓迎。ならまちの街並みの中にある奈良奉行所跡、そこに建つ近代伝統建築の講堂を見ることができるよ(シンポジウムは、この講堂で行うのではない)。キャンパス内にはシカもいるぞ。ついでに言えば、女子大学に男どもが入るチャンスだぞ。日曜日だけど(^^;)。

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